第43回親和会総会の終了後、「人・街・夢〜親子のコミュニケーション〜」のテーマで、おなじみの浜村淳さんによる親和会講演会が、約1000人という多数の参加者が集まる中で開催された。

 「寛永16年、今から365年前、徳川三代将軍家光の頃、西本願寺の学寮が出来たのが、龍谷大学の発祥で・・・」浜村さんの講演は、日本の大学としては一番古い伝統を持つ龍谷大学の歴史の話から始まった。「ああ、龍谷へ行きたかった。今日、来ましてつくづくそう思いました。」と他大学出身の浜村さんは語った。
 
TV・ラジオでおなじみの
浜村淳さんによるご講演

 講演テーマ、「親子のコミュニケーション」について、「つながりの一番最初は、言葉での触れ合い。ここから、コミュニケーション、つながりというのが始まる。」と語りかけた。
 その後、今年話題を呼ぶであろう映画「パッション」を紹介。
 映画はイエス・キリストの物語だが、親鸞、蓮如も同じように、人々にわかりやすい言葉で教えを伝えた宗教者であった。特に蓮如については弾圧を受けながらも命がけで“言葉”による伝道活動を行ない、『御文章(ごぶんしょう)(お文)』に当時の民衆の言葉でわかりやすくお念仏の教えを説かれたことを熱く語った。


熱弁される浜村淳さん

  「“武器”は言葉です。決して暴力ではありません。相手の立場に立ち心のこもった言葉です。」人と人、親と子のコミュニケーションもそうした言葉でとっていただきたいと浜村さんは願う。
 また『万葉集』の研究で知られる犬養孝(いぬかい・たかし)先生の解釈を挙げ、言葉には“言魂(ことだま)(言霊)”というものがやどっており、「人様に向かってその人が幸せや喜びを感じる言葉をかけた時、その人が感じた喜び、幸せはいつかその言葉を発した人の身の上に戻ってくる。」心のこもった言葉、“言魂”のはたらきについて語った。

 ほか『万葉集』のうたを取り上げるなど、豊富な知識とユーモア、笑いをまじえる巧みな話術で会場をわかせ、約70分の講演を終えた。浜村さんの退場後も、参加者からのひときわ大きな拍手が絶えなかった。

講演会の様子
 
役員の井川さんより浜村淳さんへ
花束が贈呈された。






 今から17年前に亡くなった母は、晩年父に「私は子どもを育ててきましたが、自分を育てることをしてこなかった」と述懐したそうです。私はその母の言葉を借りて、「私は他人(ひと)の子は育てたが、自分の子は他人(ひと)に育ててもらった」とよく話しています。
 長年中学校で教職に就いていましたので、数多くの子どもたちを教えてきました。そこで知らされたのは、いかに子どもから多くのことを学ばせてもらっているかということです。その学びが、自分の「子育て」に直結したらどんなにいいかと、思ったことも度々です。

 今、子どもに関わる事件や事故が頻繁に報道されています。痛ましい事故や、事件の報道に接する度に、たとえ子どもが加害者であっても「子どもは犠牲者である」と思わざるを得ません。
 親子ともに追いつめて、追いつめられて生活をしていると「ムカついたり、キレたり」して暴走し、あげくの果て虐待行動に走ってしまうのではないでしょうか。もっとゆとりを持って子どもと向かい合いたいものです。
 子育て真っ只中の最近、つくづく思い知らされるのは、やはり自分の親と同じことをしているということです。子どもを叱っているとき、ハッとさせられる場面に出くわすことがあります。それは、私の父も同じ叱りかたをしていたなということです。
 私は比較的厳格な父に育てられたこともあり、また、昔のようなこわい父親では、子どもはついてこないという、世の中の価値観の変化もあって、子どもにはやさしく接してきたつもりです。そのことが、どのような結果に繋がるかは、今後を見守っていくしかありません。
 私は子どもの前では、いつも毅然としていたいのですが、ついついだらしなく振る舞ってしまっていることが多いようです。そのことに対して、子どもから鋭い指摘を受けます。でも、「それでいい、それがいい」と自分に言い聞かせてきました。子どもは他の親や理想の親像との表面的な比較を、常にしますし、私がそんなに立派な人間でないことを、自分自身が一番解っているはずだからです。

 「子育ては親(自分)育て」ではなかろうかと思っています。子どもの成長に一々喜怒哀楽し、よかれと思って子育てをしているつもりですが、それは実は「自分育て」をしているのだなと思い知らされます。
 私の子どもは、お寺の子どもとして、また、学校の教員の子どもとしての軋轢(あつれき)を感じながら育ってきているはずです。だから、萎縮した子どもになったらどうしようかと思っていましたが、幸い快活に育ってくれました。
 勉強をしろと、強くは言ってきませんでした。しかし、勉強をしなかったら後悔するぞとは言ってきました。
 長男は大学を今春卒業し、本人が長年追い求めていた待望の職業に就きました。就職難の時代にあって、希望の職種に就職できることは贅沢であると、周囲から言われているようです。
 ことさら厳しくもなく、甘くもなく、平々凡々とした子育てしかできなかった私ですので、子どもたちの元気な笑顔と接するたびに、ほっとしているような昨今です。






 
ポーランドにて。
矯正局の方から説明を聞く桑山さん。


 このたび2003年度春期の親和会海外研修奨学金をいただき、イギリス、スイス、ポーランドの3カ国への実態調査に赴くことができました。数多くの経験と出会いがありましたが、ここではその一端をご報告したいと思います。


1 研修の目的と概要

 私は、大学院での研究活動として、受刑者の社会復帰および人権保障にとって必要な法的措置・社会的枠組み等のあり方を検討しています。特に地域社会など刑務所の「外側」の人たちが、どのように関与することができるのかという点に関心があり、その海外での実態を知りたいというのが、今回イギリスを訪問したいと思ったきっかけの一つでした。今回は、その一環として、特に受刑者やその家族を支援する団体を中心に訪問しました。
 また、スイスには、拘禁施設における国際人権法の実施に力を入れているNGOがあり、訪問することができました。加えて、私の研修時期と時を同じくして、日本弁護士連合会の調査団がポーランドの刑事施設を訪問するため、これに同行させていただきました。最終的に、ちょうど3週間(2004年3月15日〜4月4日)にわたる研修で訪問した主な団体は以下のとおりです。このほかにも、大学付属図書館などで資料収集も行いました。
〔イギリス・ロンドン〕Center for Crime and Justice Studies/ADFAM/Prisoners' Families and Friends Service/HMP Wormwood Scrubs Prison/Prison Service Headquarters/Action for Prisoners Families/Prison Reform Trust
〔スイス・ジュネーブ〕Association for the Prevention of Torture
〔ポーランド・ワルシャワと周辺都市〕ポーランド矯正局ほか、ワルシャワとカリシュの拘置所や刑務所、職員の研修施設(以上、訪問順)


2 研修の成果

 今回のインタビュー調査などにより、イギリスにおける受刑者の人権保障策について、NGOが積極的に関与してきた実態と背景の一端を知ることができました。そのNGOの役割というのは、人権保障を実効化するための政策提言と、その必要性を導く自らの活動を通じた実証の積み重ねの2つだと考えられます。今後は、理論・判例や政策に関して収集・分析を併せて行いながら、NGOが関与したことの意義をもっと掘り下げていく予定です。また、私の研究活動は、海外の現状を分析することによって、日本にどのようにこれを応用できるか、を考えることが最終的な目的となります。海外で得られた視点、資料、そして人的なつながりを生かして、私なりの考え方をまとめていきたいと思います。
 さらに、私は、現在、龍谷大学の研究機関の一つである「矯正・保護研究センター」において複数の研究プロジェクトに参加をさせていただいています。
その中には、国際人権法の実施に関するプロジェクトや海外の実情との比較調査などのプロジェクトもあり、今回の成果をこうした研究活動のなかで生かしていくことを考えています。
 
イギリスにて。プリズン・サービスからの帰り道。ウエストミンスター付近。

3 海外研修全般を通じての反省点など

 訪問先は、それぞれに忙しい時期と重なっていたという事情もあり、お約束をしていた方と会えなかったり、十分な時間をかけてお話ができなかったりということもありました。いまやインターネットを通して多くの情報や資料が得られるようになっており、事前準備を十分にすることによってインタビューや訪問調査をもっと効率的にすることができるのではないかと考えます。
 また、スケジュールは、結果的に予想以上にハードでした。日々さまざまな異なるシステム(例えば、交通の便、住所の見方、業務時間など)の中で生活するので、一つの事を行うのに日本でのそれ以上に時間がかかりました。生活部分へのエネルギー配分も考慮し、もっと一箇所にじっくりと滞在する形でスケジュールを組むべきだったように考えています。


4 最後に

 今回の調査におきましては、親和会海外研修奨学金をいただいたことにより、特に、移動や宿舎の点で、少し余裕をもった研修を行うことができました。さまざまな媒体を通じて、大学へ還元していきたいと考えております。このたびは、奨学生のご採用をいただき、ありがとうございました。


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