親和会だより

2004年度龍谷大学 親和会海外研修奨学生(春期)報告(体験研修コース) 日本文化の源流と照葉樹林文化 ―中国雲南省に日本の原風景を探す― 国際文化学部国際文化学科4年生 久原 陽子

写真1 雲南民族村(昆明)
写真1 雲南民族村(昆明)
 「日本文化のふるさと」と呼ばれる照葉樹林文化のセンター、雲南高原。私はこの地で、自分がこれまで日本独自の文化だと信じてきたものが、いかに大陸の大きな流れの影響を受け、またその一部であるかということを再発見することができた。同時に文化というものを、国境を超えた大きな流れとしてみる新しい眼を、この研修を通して私は得ることが出来た。日本文化の源流を考える上で、照葉樹林文化という考え方は現時点では一説に過ぎないようであるが、この雲南の地には日本文化ばかりでなく、アジア文化のセンターと思わせるものが多く存在するという事は確かである。伝統的な民族衣装から食生活、建築物、音楽、宗教、顔立ちまで、私がこれまで個々の文化と捉えてきた中国、韓国、日本的なものばかりでなく、チベットやタイ、東南アジア的なものまで、所々に見られるのである。文化を学んできた私にとって、これほど興味深く、そして不思議な地はない。
写真2 崇聖寺三塔と白ペー族の人々(大理)
写真2
崇聖寺三塔と白ペー族の人々(大理)
 
写真3 ナシ族の伝統衣装(麗江)
写真3
ナシ族の伝統衣装(麗江)
 まず今回の研修の中心的な研修先となる昆明の雲南民族村(写真1参照)と雲南民族博物館では、雲南省に住む数多くの少数民族の文化を深く学ぶことができた。特に民族村には、少数民族の伝統家屋が忠実に再現されており、建物の中に入って写真や様々な生活道具、民族衣装等の展示を見学することができる。ここで目にした一枚の写真には、少数民族が実際に暮らす農村を写したものがあり、山裾に広がる水田の風景が、まるで日本の農村を見ているような懐かしく不思議な感覚をおぼえた。また、大理ペー族自治州にある大理市では、三基の仏塔が印象的な崇聖寺三塔 (写真2)を訪れた。ここではペー族の人々が、民族衣装を身に着け観光客向けに踊りを披露し、観光ガイドとして働いていた。塔の向こうには菜の花畑が広がっており、ここに訪れた日本人なら、誰もがこの風景に不思議な懐かしさを感じるに違いない。さらに、標高2400mに位置し、ナシ族を中心とする麗江には、町全体が世界文化遺産に指定されている麗江古城地区があり、瓦屋根の伝統家屋と石畳がすばらしく、日本の古都にタイムスリップしたかのような懐かしい場所に思えた。ここでは普段着として伝統衣装を来た人を多く見かけ、観光客も体験することができる。写真3の衣装は麗江で一番見かけるナシ族のもの、写真4は銀細工で有名な苗(ミャオ)族のもので、銀の装飾と鮮やかな刺繍がとても美しかった。
写真4 苗ミャオ族の伝統衣装(麗江)
写真4
苗ミャオ族の伝統衣装(麗江)
 この研修を通じて、この雲南省に日本との類似点を多く発見することができ、また自分の暮らしている文化圏にない目新しいものを見る楽しさよりも、ほんの小さなことでも、日本と同じ文化が育まれているのかと発見する喜びを知ることが出来た。遥か昔から、日本の文化は生活の中という最も身近なところで、世界と繋がっていたのだ。この貴重な経験が、これからの私自身にとって大きな意味があったことは間違いない。このすばらしい機会を与えてくださった龍谷大学親和会に、改めて感謝したい。


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