大学懇談会講演会 𠮷岡 貴司 氏

1964(昭和39)年生まれ。龍谷大学経済学部を卒業後、サンスター株式会社に入社。その後一貫して営業畑を歩み、2011年6月に、代表取締役社長に就任。

サンスターの起源と事業展開について

サンスターは、創業者の金田邦夫が、自転車のギヤ・クランク、パンク修理用ゴムのりなどの製造を、1932年に大阪の地で開業したことに始まります。そのなかでパンク修理用のゴムのりが入ったチューブのなかに何か別のものを入れられないかということから練り歯磨き剤を商品化し、これがその後、オーラルケア事業に発展しました。もう一方、自転車用品を出発点として、高層ビルや住宅の外壁の目地を埋めるシーリング材、自動車組立て用の接着剤、オートバイのディスクブレーキや歯車部品の事業を展開しています。加えて現在大きく事業拡大しているのが、「健康道場」ブランドでの青汁や玄米などの健康食品や、「EQUI-TANCE」ブランドによる美白やアンチエイジングの化粧品で、主に通信販売で売上げを伸ばしています。

こうした事業モデルの変革とともに、サンスターは、2009年からグローバル本社機能をスイスにおき、日本、米州、欧州、アジアで事業を展開し、海外売上げ比率は5割近くに上がってきています。私も先日スイスに行き、今後の事業展開を議論してきましたが、今後は、オーラルケア事業の東南アジア展開、健康食品、化粧品事業の欧米展開により、更なるグローバル化を推進していきます。

「お口の健康と全身の健康」をテーマとした今後の事業展開

サンスターの売上げの5割を占めるのがオーラルケア事業ですが、我が社が取り組んでいるのが、「お口の健康から全身の健康を考える」というテーマです。サンスターは、1979年に、歯科医療で名高いニューヨーク州立大学バッファロー校に研究員を送り込み、その研究チームが世界で初めて歯周病は細菌感染症であることを発見しました。それまで歯槽膿漏として歯ぐきの腫れを抑える対処療法に頼っていた時代に、業界に先駆けて歯周病の原因菌を殺菌して歯周病を予防するG・U・M(ガム)ブランドの商品群を開発、1989年に発売しました。世界各地でシンポジウムを開くなどして歯周病予防の啓発に取り組みながら市場拡大を牽引し、G・U・Mシリーズは発売25周年を迎え、ワンブランドとしては日本でNo.1のブランドになっています。

さらに、歯周病の研究・啓発は、糖尿病と歯周病、がんと歯周病など、歯周病や歯周病菌が全身疾患に及ぼす影響の研究へと発展し、現在は、全身の健康に寄与する顧客満足度の高い商品サービスの開発に注力しています。健康食品や美容の分野も含め、お口の健康と全身の健康増進を追求していきます。

龍谷大学卒業からの歩み、経験について

龍谷大学を卒業後サンスターに入社して、一貫して営業畑を歩んできて気付いたのですが、お客様の視点に立った営業活動、つまり消費者のことを考えた営業活動ができたことが、自分の大きな強みになったと思っております。また、仕事を通じて得た様々な人間関係も財産になりました。営業の仕事は多岐にわたり、当初は、なんでこんなことまでやるのかと無意味に思える事も多々ありましたが、経験を積み、自分が変わっていくにつれて過去の経験が生きていると感じられるようになりました。皆さんのご子息・ご息女も入社3年くらいまでは「やっぱりこの会社は自分自身が考えた会社と違うのではないか」と思われることがあると思いますが、それでも一所懸命現在の仕事をやり遂げた人は、間違いなく次のステップに進めます。そして、それらの経験が後になって、点と点を結ぶように「One and Only」の大きな強みとなっていくと思います。

代表取締役社長に就任して

営業畑をずっと歩んできて、3年前、経営トップから代表取締役社長に指名を受けました。そのときに言われたことは「お客様を見据えた経営を実践してほしい。お客様の視点に立てる強みを活かして、研究、生産、人事、総務を動かしてほしい。全社一体となって消費者志向に徹するように」というものでした。

企業活動においては、同業他社との競争、供給業者との交渉、販売先との交渉、新規参入の脅威、代替品の脅威、これらを様々な形で指標にしながら経営を進めているのですが、やはり日々競争、日々勉強です。企業でも個人でも、社会では否が応でも競争に晒されます。皆さんのご子息・ご息女も今まで勉強の面で勝ち残って、龍谷大学において勉学に励んでおられることと思いますが、卒業後社会に出ると、それ以上の競争社会であり、時代の変化、会社での自分の役割の変化もあり、卒業後も日々勉強が必要です。だからこそ、これから就職されるご子息・ご息女には、自身の能力を活かし、勝てるフィールドを探して、夢を実現できる職場をめざしていただきたいと思っております。

サンスターが求める人物像

サンスターはグローバル展開を進めるなかで、世界のどこのフィールドでも戦う意欲を持ち、前人未踏のフィールドを自ら開拓し、世界の仲間と夢を実現する人物を求めています。なかでも、自分はどういう夢を持って、何を成し遂げたいのかという考えをしっかり持ちながら、組織を引っ張り纏め上げる能力を持った方を求めています。わが社も採用面接を進めていますが、「この学生と一緒に戦いたい、一緒になって会社を大きくしたい」と思える人物と出会いたいと思っています。

最後に

龍谷大生の皆様には、企業の大小で選ぶのではなく、社会にどう貢献していきたいかを念頭に企業選びをしてほしいと思っています。保護者の皆様には、ご子息・ご息女の夢を実現できるような企業選びを話し合っていただき、社会人となって何がしたいのかをしっかり考えてもらって、その後で企業研究をして、自分の夢、やりたいこと、能力を発揮できる職場に出会えるよう、努力していただきたいと思います。

そして、世界中の生活者、消費者の生活レベルを向上できるような学生さんが多数出てきていただいて、「龍谷大学の卒業生は優秀だ」「龍谷大学は素晴らしい大学だ」と言われるように世界に羽ばたいていただきたいと願っています。

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