学生生活支援エッセー

学生部の役割

年間を通じて、何名の学生が学生部を訪れるでしょう。講義と講義の間の休憩時間には長蛇の列ができることもあります。奨学金についての質問や手続き、学友会活動・課外活動に関する相談、紛失物(落とし物)の確認など様々です。

学生が学生部に訪れる目的は、同時に学生部に求められている役割でもあります。

奨学金については、大学独自のものや公のもの、給付型・貸与型など種々ございます。課外活動も、宗教局・体育局・学術文化局・放送局や、一般同好会など多数の団体があります。学生生活全般に関する「なんでも相談室」も、学生部内にあります。

大学とは、学問・勉学をする場であり、真理探究の場であることはいうまでもありません。しかし、大学生活は勉学・学問だけでないこともまた、いうまでもないことであろうと思います。様々な活動を通して、成熟した人間へと成長していく大切な生活の場であるということです。学生の自主的・主体的な活動をサポートすることが学生部に求められている役割でしょう。


学生部長
玉木 興慈
(短期大学部 教授)

多様な学生のすがた

三学舎をあわせると現在、一万八千人ほどの学生がいます。大勢の仲間と共に、賑やかに過ごすことが好きな学生。二、三人の友人と落ち着いて過ごすことが好きな学生。一人で静かに過ごすことが好きな学生。一人として同じ人間はいないのですから、当然ですが、ホントに多様な学生がいます。

大教室での講義の時には一人で座っている学生が、大声で笑いながら大勢の友人とキャンパス内を歩いている姿を見かけることがあります。日ごろは物静かな学生が、サークルの試合や発表会の時に、活き活きとした表情を見せてくれることもあります。ゼミではあまり発言しない学生が、論文の個人指導の時には驚くほど明瞭に自己表現のできる学生もいます。

快活活発な学生も、沈思黙考タイプの学生も、それぞれにそれぞれの良さがあります。と同時に、それぞれの学生には皆、悩みがあることも事実でしょう。自分と違ったタイプへの憧れもあります。時には自分に自信をなくすこともあります。

悩みがある時に、人はどうするでしょう。小さな子どもであれば、親や周囲の大人に甘えることができます。また成熟した大人であれば、本音を包み隠さずに相談できる相手に悩みを打ち明けるでしょう。

身近に学生を見ていると、殻にとじこもる学生が、意外と多いように感じます。それは子どもでもなく、成熟した大人でもない、現在の大学生の置かれた状況なのかも知れません。

悩みながら生きる


学生部の様子

大学で学び、大学生として生きるということは、高校時代までに培った自己を基礎として、大きく飛躍成長するということです。また、これまでの基礎が崩れ、新たな方向転換を図る時でもあります。

様々な活動を通じて、予想外の壁にぶち当たり、それを周囲の先輩や後輩、教職員との交流のなかで、壁を越えることのできた学生の成長を見ることは嬉しいことです。

様々な可能性を秘めた学生が、壁にぶち当たり、自分で悩み答えを出すことも大切です。人に頼らずに一人で生きる生き方もあります。しかし、人に頼りながら、人との交流を通じて、互いに切磋琢磨するなかで成長し、人に感謝しつつ生きる生き方もあります。人任せではいけませんが、人に頼る生き方は、決して恥ずかしい生き方ではないでしょう。

最後に、ある宗教哲学者の言葉を紹介しましょう。

「誰でも本当に自己自身であることはそう容易にできることではなく、それができない間は、他の人が自分自身よりも自分に近いということはあり得ることである。若い時にそういう、自分自身よりも自分に近いような人に出会い得るということは、人生における最も大きな恵みであり幸福である」

学問・研究に励むことも大切です。将来を見据えたキャリア形成も大切なことです。悩みながら生きることも、大学生活の一つの過ごし方だと思います。

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