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小説を読むことの醍醐味を味わい、「知のトレーニング」を楽しもう

文学部 日本語日本文学科 越前谷 宏(えちぜんや・ひろし)教授---文学を研究することは、文学作品を素材とした「知のトレーニング」に取り組むこと。高校までの「国語」の授業とは違って、あなたの生き方そのものを揺るがすような刺激的な体験です。文学部日本語日本文学科で「近代文学」のゼミを担当しておられる越前谷先生に、文学研究の醍醐味について伺いました。

読むことで自分の生き方を問い直す

文学の魅力は、批評性があることです。小説を「読む」という行為を通して、自分を外側から批評する。自分の生き方や考え方の俗っぽさに気づいたり、他人の気持ちを分かったように思い込むことの傲慢さを痛感したりする。現実の自分に、自分で異議申し立てをしていく、刺激的な体験です。

ところが、経済学や法学とは違って、文学は実学ではない、と思われがち。しかし、文学も法学も研究するうえでの素材の扱い方は同じです。客観的な材料を集めて論理的に組み立て、プレゼンして相手を説得する。将来どの分野でも役立つ「知のトレーニング」を、文学作品で実践しているのです。

【『津軽』の文庫本を持った越前谷先生】
太宰治生誕百年にちなみ、2009年のゼミでは太宰の『津軽』を取り上げました。太宰といえば『人間失格』を連想する人が多いと思いますが、『津軽』はユーモラスな面もある自伝的小説。あえてこれを選んだのは、みんなが思い描く「太宰らしさ」を打ち壊そうという狙いもあります。

作者の意図を正確に読みとる難しさ

トレーニングの第一歩は、作品を「正確に読む」こと。ゼミでは「巨視的に読む」「微視的に読む」という二つの読み方に取り組みます。

「巨視的に読む」とは、作品の全体像を把握することです。小説を読むことは一つの町の中を歩くようなもので、そこには人・時間・空間の三要素があります。まず、登場人物と空間を一枚の紙に配置したマップを作る。さらに、そこで起こった出来事を時系列で整理して年表にまとめる。あわせて、作品が執筆された当時の社会の動きも押さえます。小説の中の出来事を、歴史という大きな文脈の中に置く。

「微視的に読む」とは、作者が選んだ言葉を一つひとつ検証すること。小説の中に登場するモノやコトは、今では執筆当時のイメージからかけ離れてしまっているものがあります。例えば、太宰治の『津軽』に登場する「運動会」。今の私たちにとっては楽しいイベントも、太宰の時代には軍事教練です。しかし、太宰はそれを「悲しいほど美しく賑やかな祭礼」と表現している。そこで、当時の読者に違和感を覚えさせるために、あえてこうした表現を選んだのではないか、という説も成り立つ。このように、全ての言葉が当時の人々にはどう受けとめられていたかを探っていきます。ふつうの辞書や百科事典だけではそこまで分かりませんから、同時代に書かれた他の小説の用例も調べる。一つの言葉を調べるだけで、膨大な時間がかかります。

突破口を作るか、脱出ルートを見つけるか

作品を読み込んだら、次は「論文を読む」。太宰治の『津軽』でいえば、百本もの先行論文がある。本当はこれを前部読まないと研究できないのですが、そうすると大学8年生になってもゼミが終わらないので(笑)、新しいところを5〜6本選びます。 論文を読むという行為は、ある種の対話です。その論文を書いた研究者と、同じテーマについて対話しているつもりで読む。そして、「なんでやろ?」と突っ込みたくなる部分を見つける。ところが、まだ3年生の学生にとっては、それが難しい。研究者の主張にすっかり納得させられてしまって、新しい問題を発見できない。でも、3年生の間はそれでいいと思います。

4年生になって一人で卒業論文に取り組んだとき、先行論文の包囲網からどうやって逃れるか。突破口を作るのか、新たな脱出ルートを見つけるのか。いわゆる、社会人に求められる「問題発見・解決能力」を身につけるための「知のトレーニング」の始まりです。

どうや、そろそろ吐きそうか?(笑)

膨大なデータと格闘した学生は「せっかく集めてきたのにもったいない」と、何でもかんでも放り込んでまとめようとする。でも僕は、思いきって削れ、といいます。

文学を研究する醍醐味は、その作品が持つ新しい顔を発見することです。文学作品は立体的な構造を持っています。縦・横・斜め、いろんな角度から切れる。斜めに切った断面から、意外な模様が現れたりする。その展望がひらけた瞬間、ムダなデータは自然にそぎ落とされる。もちろん、そのためには、膨大なデータの中でひたすら考えるというプロセスが必要です。僕も今でも、論文の締切の前は吐きそうになるほど考えます。だから卒業論文を書いている学生にはいつも聞くんですよ。「どうや、そろそろ吐きそうになったか?」って(笑)。

プロフィール

文学部 日本語日本文学科  越前谷 宏教授 (えちぜんや・ひろし)

専門分野は日本近代文学。井伏鱒二・太宰治・川端康成ら昭和文学の研究に取り組む。
主な担当科目は「近代文学演習」。

→龍谷大学文学部サイト
→日本語日本文学科サイト
→WHO’S who

歴史を自分に投影すれば
現代を考える力も育ちます。

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文学部 日本語日本文学科
越前谷 宏 (えちぜんや ひろし)教授

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