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東洋の倫理観が育むグリーンケミストリー 龍谷大学理工学部物質化学科 林 久夫 教授

 「グリーンケミストリー」をテーマに、JABEE(日本技術者教育認定機構)認定の教育プログラムが受けられる龍谷大学理工学部。その魅力について、「環境科学」等を担当する林久夫教授に伺った。

もののライフサイクルを見すえるグリーンケミストリー

地球環境を考えるうえで大切なことは、一時の風潮や流行にとらわれることなく、科学的根拠に基づき自分自身で考え、ことの本質を見極める努力をし続けることです。

例えば、電気自動車はなぜ省エネなのでしょうか。そこで使う電気は、原子力や火力発電によってつくられているとも考えられます。自動車で石油(ガソリン)を燃やして直接動力に変えるのと、発電所で電気に変えてから動力にするのとどちらが効率的か。それでも省エネになるのならば、その理由は…。論理的に考えていくと、この問題が一筋縄ではいかないことに気付きます。こうした問いかけを通して、自分で考える姿勢を養う。それが「環境科学」という授業です。

これからの技術者は、もののライフサイクル全体を見すえて環境負荷を軽減しなければなりません。研究開発から製品化、製造・販売、使用、修理、廃棄に至るまで、化学の側面からそれを実現する。これを、本学では「グリーンケミストリー」と呼んでいます。

東洋の倫理観に根ざした国際的技術者をめざす

グリーンケミストリーの考え方は、ものづくりにとどまりません。例えば、自社の工場周辺で排出される汚染物質を測定したら、基準値をオーバーしていた。排出元は隣の工場。上司に報告すると「隣とは付き合いもあるから放っておけ」と言われた…。あなたならどうしますか?

ここで問われているのは「技術者の倫理」です。大学院では、実際に社会に出たときに起こり得るこうした事態についてディスカッションする授業を行います。その際により所となるのが仏教に根ざした「東洋の倫理観」。私たち人間も自然の一部であると考え、共に支え合って存在すると考えます。本学は「共生(ともいき)を目指すグローカル大学」として、“僧籍を持った科学者”がこうした倫理観の指導にあたっています。

さらに、本学の海外拠点や提携大学でのプログラムを通して、国際的なコミュニケーション力も養います。これらは「東洋の倫理観に根ざした国際的技術者養成プログラム」として大学院GP(大学院教育改革支援プログラム)に採択されました。

JABEE認定カリキュラムで感動のある学びを

このように、大学と大学院が「グリーンケミストリー」をめざす取り組みは、JABEE(日本技術者教育認定機構)の認定を受けており、社会が要求する技術者の水準を満たしていると評価されています。大学・大学院が一貫して認定を受けているのは本邦初のことです。

近年は若者の理系離れが叫ばれていますが、誰もが子どもの頃は星や虫を眺めて感動したことがあるはずです。龍谷大学理工学部物質化学科では、そうした「感動する心」を持ちつつ世界の地球環境に貢献できる技術者の育成をめざしています。私たちと一緒に、新しい化学の扉を開いてみませんか。

林 久夫 教授 profile
専門分野は高分子化学。研究分野は材料科学、高分子・繊維材料。
→龍谷大学理工学部 物質化学科
→理工学部の入試情報

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自然と人間の関わりを探るフィールドワーク 龍谷大学理工学部環境ソリューション工学科 レイ・トーマス・ティン教授

環境ソリューション工学科では、「生態学」と「工学」を関連づけて学び、社会全体を見すえた視点から環境問題の解決をめざしている。その実践的な学びについて、「環境実習B」を担当するレイ・トーマス・ティン教授に伺った。

長期的な視点から自然の変化をとらえる

環境問題の原因の多くは、私たち人間の活動が自然に影響を及ぼした結果であるといえます。その解決(ソリューション)のためには、自然と人間活動の実態を客観的に知ることが大切です。この学科では、4年間を通して実習やフィールドワークを多く体験します。生態学分野では山林や河川へ、工学分野ではゴミ処理場などの現場へ出かけて調査を行うものです。

私の専門は生態学ですので、今年は北海道知床へ1週間のフィールドワークに行きました。知床を選んだのは、世界遺産にも選定された貴重な自然を学生に体験してほしかったから。羅臼岳に登って標高1200mの植生を調査したり、班ごとに独自のテーマを決めて調査に取り組んだりしました。その結果は分析して発表し、原因や対策についてのディスカッションも行いました。

しかし、自然の変化というものは長い時間をかけて起こるもの。1週間や1年間では正確な調査はできません。それと同様に、悪化した自然を修復するのにも長い時間がかかります。ですから、実習で体験したことは、あくまでも卒業論文の予行演習。とはいえ、日頃はテレビでしか見ることのない大自然の中で暮らしたことで、学生の意識も大きく変わったと思います。

環境問題の解決策は「昔に戻る」ことではない

植物の光合成速度を測定する機器。植物はふつう冬に落葉しますが、夏に落葉するものもあります。そのフェノロジー(生物の季節変化)の環境適応の意義を調べています。

しかし、ここで注意してほしいのは、生態系は山や森の中にだけあるものではないということ。大学キャンパスや高速道路の植栽にも生態系は存在します。例えば、私のゼミにいたある学生は、「都市の壁面緑化」を研究テーマに選びました。これは、都市のヒートアイランド現象を解決するための一手法として注目されています。こうした研究に取り組めるのも、生態学と工学の両方が学べるこの学科ならではだと思います。 また、何でも「昔に戻す」ことで解決できるとは限りません。根拠もなく「人間のせい」「昔はよかった」と決めてかかると、不適切な対策を実行してしまうかもしれない。何が悪影響を及ぼして、何がそれほどわるくないのか。客観的に判断したうえで、解決(ソリューション)方法を導き出すことが大切です。

もちろん、その原点は自然を愛し、大切に思う気持ちです。だからこそ、客観的な視点から適切な技術を学んでほしい。そして、社会に出たらその技術を活かしつつ、自然への愛を持ってきめ細やかな解決策を実践してほしい。この学科ではそんな人材を育成していますし、そうした人こそがこれから環境問題に貢献できると信じています。

レイ・トーマス・ティン教授 profile
専門分野は植物生理生態学。研究分野は生物学、基礎生物学、生態・環境。
→龍谷大学理工学部 環境ソリューション学科
→理工学部の入試情報

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