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龍谷大学

HOPE!~龍大生なう。~ vol.38 高林昌司さん

Introduction

600年の伝統としてそれぞれの流儀の中で進化してきた能楽。「日頃普通の人では関わることのできない能に触れられている、日本文化に直接関わることができる」そんな高林昌司さん(文学部・3年生)にお話を伺いました!

―何歳から舞台に立ったんですか?

2歳で初めて舞台に立ちました。初めて能のシテ(主役)を務めたのが小学校3,4年生ぐらいでしたね。初めて能面をつけて舞ったのが中3です。
京都の高林家主催の能の会で初めて能面をつけてシテを務めた経験が印象に残っています。小狐丸という刀を題材にした『小鍛冶』という曲をやりました。

―お稽古は何時間くらいですか?

次に舞わなくてはいけない曲にもよりますがだいたい1時間から2時間ですね。
専門分業制になっていて、能楽師と言っても舞ったり謳ったりするのがシテ方、舞台の奥にいる囃子方。そしてその中のそれぞれ笛方、鼓方、大鼓方、太鼓方があり、それぞれ別の、流儀があってやっているという感じです。専門分業制で、どれか一つをやったらいいというわけではないんです。僕も鼓の先生のところへ行って鼓を習ったり、太鼓の先生のところへ行って太鼓を習ったりしています。全部が連鎖しているのでどれか一つだけを勝手にやって、ついてきてもらうというわけにはいかないので日々稽古しています。

―能面について教えてください

同じ能面でも種類や形によって大きさも違いますし、裏側も平であったり奥が深かったりしています。稽古で本番の面は使ってはいけないので稽古と本番で見え方も全く違うこともあります。能面の目のところ、鼻の穴を通して見ていますが、全然見えません。目のところに穴があいていても、能面の目と僕の目が平行になるようにつけません。面を顔に合わせるのではなく、顔を面に合わせろと教えられてきました。決まっている位置につけなくちゃいけないので実際はこの目の部分はだいぶ上にきてしまい上しか見えないこともあります。でも見えないという言い訳はできません。僕らの世界では、どんな理不尽なことでもだいたい玄人ならできて当たり前なんです。
場所を把握するために、長年使って削れてしまった床の部分を利用します。それを足裏の感覚で感じ取って、今どこにいるかをわかるようにしています。あとは、実際の能舞台だったら隅々に柱が立っているので自分がどっちを向いているかがわかる仕組みになっています。

―辞めたくなることはありませんでしたか?

毎日稽古をやっていて、正直、小学生のころは嫌でした。もっと違うことをしたかった時もありますが、稽古を続けました。そして中学生のころには能楽師の道に進もうと決心をしました。よく祖父たちに“好きでやっていちゃできない”と言われます。やっぱり好きでやるというのは趣味になってしまうんです。

僕らは「600年間続いているものを受け継がなくちゃいけないからやる」という考えで、それだけの責任があるものなんだと思います。

―演じる難しさとは?

能は約200曲ありそれぞれ異なるので、静かな曲をやるには細部にこだわらないと怒られますし、竜神の役のような役をするなら力強く迫力を出さないといけません。竜神の役を終わった後、次に舞う曲が静かな曲だったら切り替えも難しいです。
能面に表情をつけるのも難しいですね。単に付けているだけだとただのお面になってしまいます。でもちょっと下げると悲しめの顔、ちょっと上げると嬉しい顔になるんです。

本当に上手な能楽師はいかに無表情な能面に表情をつけることができるかにかかっています。僕はまだ使い方が下手だと怒られてばかりなんですが、教えてもらえるから稽古になります。自分でできていると思っていても他の人から見たらできてないこともありますしね。基本的には自分は独立するまでは師匠(父)に教えてもらいながら常々だめなところを指摘してもらうつもりです。

―これからの目標はなんですか?

まだまだ技量もなく一人前ではないですが、これからどんどん大学とのバランスを考えながら、稽古を積み重ねていって少しでも多くの方に見に来ていただき、よかったと思っていただける舞をしたいです。
また、技術面だけじゃなくて精神面ももっと鍛えて能楽師として恥ずかしくない能を舞いたいです。舞だけに必死になるのではなくてその役になりきるという境地にもっていけるようにしたいと思います。
せっかく日本に生まれたんですから、日本が600年間大事にしてきた“能”をまず一度見に来ていただきたら嬉しいです。
それは能だけに限りません。茶道や華道など伝統あるものに何か一つでも触れていただければと思います。
そういった日本の伝統に触れていただくための手助けを僕ができたらいいですね。


【取材】
山本孝美(文学部3年)、井之上愛理(経済学部3年)、中原千智(社会学部3年)、石川紗希(社会学部2年)
【記事】
中原千智(社会学部3年)

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