あらゆる生活用品に電子機器が組み込まれている現在、「科学技術」の存在はあたり前で、その進歩も一般的になりつつある。「科学技術」の進歩のなかには、現代企業の発展にとって重要な「イノベーション」も含まれている。現代人や現代企業に欠かせない「科学技術」はどのような歴史を経ていまの姿になったのだろうか。
「科学技術」を構成している「科学」と「技術」は全く異なる歴史を経てきた。おおまかに言えば、「科学」は知識人の手で、「技術」は職人の手によって発展をとげてきた。これらを結びつける契機は17世紀前後の「科学革命」、18−19世紀の「産業革命」であった。「科学」界は、社会を直接変え得る「技術」を必要とし、他方、「技術」界は、社会を理性的にとらえる「科学」を必要としたのである。「科学」と「技術」のオーバーラップが進み、19世紀後半には「科学技術」なる融合体がその姿を現し始めた。「技術」を導入した「科学」、「科学」を導入した「技術」は、国家や企業にとって「使える科学技術」となって現れたのだった。
本講座では、科学史を語りながら、「技術」を導入した「科学」という立場から「使える科学技術」の生まれてきた経緯を紹介する。加えて、「科学」ないし「科学技術」が時代の変革にどのように作用し、現代の企業社会においてどのような役割を果たしているのかを改めて考えてみたい。
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