親和会だより

親和会総会での講演会をご紹介します!「生きる意味って何だろう?」

小菅 正夫 氏

講師 旭山動物園前園長 
こすげ
 まさお
小菅 正夫 氏

1973年旭山動物園に獣医師として就職。その後、飼育係長、副園長を経て1995年園長に就任。2009年名誉園長となり、2010年3月退任。 動物それぞれの“種”が持っている行動を引き出した「行動展示」を打ち出し、日本一の入場者数を誇る動物園へと育て上げた。
 

 5月15日(土)に開催された親和会総会では、映画・ドラマでも取り上げられているあの有名な動物園、旭山動物園の園長を務めておられた小菅氏にお越しいただき、ご講演いただきました。
 動物園での経験を通じ学んだ「生きる意味」について力強くご講演いただき、お聴きになった保護者の方々にしっかりと伝わったのではないかと思います。
 


ー「生きる意味って何だろう?」ー

 「生きる意味って何だろう?」皆さん、いつか考えましたよね。どこかの時点で「自分は何のために生きているのだろう?」と考えたかと思います。その答えをずっと出せずに生きてきましたが、動物を通して考えてみて、今私として、これが生きる意味だと思っている話をしたいと思います。
 今生きている皆さん、周りの人達、動物達、今ちょうどきれいな宇治のお寺のツツジ、木々の緑、そういう生き物達がたくさん自分達の身の回りにいます。みんな生きています。生きているということは、何らかの形でいのちをつないでいるわけです。千年の木も千年前は種でした。その種は同じ形をした、同じ生き方をする木から生まれてきます。生き物はみんな、親から生まれてきます。しかも親と同じ形をして、同じような暮らしをして生きています。そうして私達は今の時代をともにしています。いのちをつなぐことは非常に大きな意味があります。いのちをつなぐといっても一様ではありません、様々です。人間も地域によって違いますが、様々な生き物によっていのちのつなぎ方はみんな違っています。

ー動物達の「いのちをつなぐ」ということー

 ホッキョクグマの赤ちゃんは、旭山動物園が日本で初めて繁殖に成功しました。それまで、明治15年に日本で初めてできた上野動物園の時代から日本中のどこででも、京都の動物園でももちろんホッキョクグマを飼っていました。赤ちゃんを産んで、必死になって育てようとしますが、産んで3日ぐらいで親が食べてしまいます。これは母親が安心できていないからです。動物園にいる動物は、外敵はいないし、エサは必ず食べさせてもらえるし、絶対安全です。しかし交尾と出産の瞬間、いのちに根源するこの二つの瞬間はどんな生き物でも野生に戻ります。動物は自分の子どもをむやみやたらに育てるのではなく、いのちをかけて育てます。自分のいのちをかけて育てた子どもが間違いなく成長して巣立って一人前の親になるという保証がない限り、そんな努力はできません。そこでホッキョクグマの野生の状態を調べて、安心感を与えられるような産室を作りました。昭和49年、ホッキョクグマの赤ちゃんが生まれて、その後半年経って外の世界に出てきました。ホッキョクグマは自分が育てられたのと同じ方法でいのちをつないでいます。
  オオカミは怖そうだとみんな思っていますが、オオカミほど私が尊敬している生き物はいません。オオカミは夫婦の絆、家族の絆がものすごく強いです。そればかりでなく人、自分の世話をしてくれている飼育係と心の絆も結べる生き物です。オオカミは家族の群れで暮らし、家族みんなで子どもを育てます。家族をしっかり守って彼らはいのちをつないでいるのです。

ー私達が「いのちをつなぐ」ー

 いのちをつないだ子どもも、そう簡単に次にいのちがつなげるものではありません。人の場合はものすごく難しいです。サルは赤ちゃんの方がしがみつきますが、人はお母さんが赤ちゃんを抱きしめないと絶対に育てることができません。
 ずっといのちをつなぎ続けてきたから、皆さんがいます。どんな生き物でもいのちをつなぎ続けてきたからこそ、今この地球上でともに生きています。いのちを無駄にすることは絶対にできません。自分のいのちは自分だけのものではない、自分のためにずっと生き物がいて、自分がいて、さらに自分の先にもいろんな生き物がいるはずだから。そのためにも自分が生きていのちをバトンタッチしなければなりません。これが生きる最大の意味であると私は考えています。

映像を交えてのわかりやすいご講演でした  
映像を交えてのわかりやすいご講演でした  





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