広報誌「龍谷」2026 No.101

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Feature Article

コクヨ株式会社
CSV 本部サステ
ナビリティ推進
室室長

横手 綾美

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龍谷大学学長

安藤 徹

「ワクワクするサステナビリティ」を共創

今回、安藤学長が対談したのはコクヨ株式会社の横手綾美サステナビリティ推進室長である。「龍谷大学基本構想400」のもと持続可能な社会に繋がる教育・研究・実践を推進し、2027年4月「環境サステナビリティ学部(仮称)」を開設予定の本学と、自律協働社会の実現に向けてサステナブル経営を加速させている同社は、その理念において深く響き合う。今後の連携も視野に双方の取り組みを語り合った。

安藤:コクヨといえば「キャンパスノート」をはじめ学生や教職員の学ぶ・働くに欠かせない身近な存在であり、未来を見据えたサステナブルな取り組みに注力されていることにご縁を感じていました。

横手:木質材料を活用して事業展開している私たちは、長年、環境影響の最小化に取り組んできました。時代がエコからサーキュラーへ変化したことから、「捨てる」概念をなくして循環型社会に貢献する「SUTENAI CIRCLE(捨てないサークル)」を2023年から事業横断の取り組みとして推進しています。この“循環の輪”はモノを作る・使う・回収する・再利用することですが、私たちだけでは成立しません。お客様にも輪に入っていただき、捨てない社会をともにめざすものです。

安藤:生産から消費へという「動脈」だけでなく、消費から再生へという「静脈」も融合して循環させていくということですね。

横手:取り組み開始当初「日本国民の16%の行動を変える」という目標を掲げました。キャズム理論では、市場の16%を超えれば新たな商品や仕組みは社会に浸透するといわれています。キャンパスノートは累計販売数38億冊(2025年時点)に達しており、世代を超えて使用されてきました。だからこそ、私たちにできる役割があるのではないかと考えました。この一環で、使い終わったノートを子どもたち自身に回収してもらい、私たちがノートとして再生し再び使ってもらう「つなげるーぱ!」という環境学習プログラムを全国の小学校でおこなっています。文房具は子どもが初めて自ら所有し、消費するものです。これを捨てるのではなく、資源として再び使うことが定着すれば、循環型社会の実現の力になると思います。

安藤:本学では、「基本構想400 第2期中期計画」に「サステナビリティへの『旅』―変革の加速へ―」を掲げ、教育・研究・社会貢献における体験×共創×挑戦を通じて、環境変化への対応と変革の促進に取り組んでいます。貴社では「共感共創」という強みを活かして社内外に循環の輪を広げる活動を推進されています。小学生とのプロジェクトもそうですが、やはり「共創」が大切な鍵になりますね。

横手:社内では社員が重要課題を自分事とし、自律的な行動を促進する学びの場「サステナブル・アカデミア」を定期的に開催しており、「ワクワク」する発見がある事を大事にしています。昨年は自社の社会価値・環境価値・経営価値をめぐる謎解きゲームを企画しました。現在、社員の約80%が「社会価値を生み出すことに貢献できている」と思うなど成果が表れています。私たちは挑戦することを評価する文化を大切にしているので、この項目でも100%を目標に設定しています。

安藤:野心的なストレッチゴールは個々のモチベーション向上や組織のポテンシャル開拓に効果的です。「エンジョイ・サステナビリティ」というのでしょうか、楽しくワクワクとした気持ちが取り組みの継続に不可欠です。

横手:コクヨでは 2006年から高知県に流れる四万十川のほとりで「結の森プロジェクト」に取り組んでいます。日本の森の約4割は木材を原材料として使うために育てられてきた人工の森です。そのため、間伐やその間伐材の利用、植林といった人の手による手入れをおこなわなければ森は荒廃してしまいます。

安藤:本学の瀬田キャンパスに隣接する「龍谷の森」という里山でも、実習や研究などを通じて人の手を加えながら保全と新たな価値創出に取り組んでいます。サステナビリティをめぐっては「人間中心主義」が自然破壊を招いたとの意見もありますが、「結の森」や「龍谷の森」のように人間を自然から切り離して考えるのではなく、いかに共存し、統合的に課題を解決していくかが求められます。

横手:同感です。私は人間は自然の一部だと思っています。自然に影響を与え課題を生み出してきた一方で、人間は課題を解決する知恵も持っているのではないでしょうか。

安藤:文学を研究する身として、「言葉の力」も信じています。水筒を「マイボトル」と言い換えたことが、自然に負荷をかけない行動変容を促したのはよい例です。

横手:確かにそうです。ゴミや廃棄物を「捨てるもの」から「資源」と捉え直し、循環の必要性を言葉で伝えていくことは非常に重要であり、人を動かし、社会を変えることに繋がると考えます。

安藤:本学は2027年4月に「環境サステナビリティ学部(仮称)」を開設予定※です。都市環境工学×生物多様性科学×経済・経営学という文理複眼的で実践的な学びによって、環境問題はもちろん、社会課題や経済活動を解決するグリーン人材を育成・輩出していきます。

横手:日本の大学にもついにサステナビリティを専門的に学べる学部が誕生することには期待しかありません。教育は未来を変える力になります。企業や社会は専門的な知識と実践力を備えた人材を求めているので、環境サステナビリティ学部(仮称)で専門性を養った学生のみなさんが環境課題の解決をリードしてくれることをうれしく思います。

安藤:ありがとうございます。多様なグリーン人材という文脈から、コクヨが掲げる「森林経営モデル」にも着目しています。

横手:文房具事業はもちろん、多様な事業が成り立ち、数多くの価値を生み出す森林のような経営モデルをめざしています。このモデル図を示すと「森に種を蒔く鳥のような役割が必要」「土を耕す虫のような人も大切」と社員の発想が広がっていったことには驚きました。

安藤:総合大学である本学も同じです。全学部が横断的に繋がり、多様な専門性が混ざり合うことで、複雑な社会課題の解決に貢献する教育や研究、地域社会との協働・共創を成し得るのだと思います。

横手:コクヨは2007年から琵琶湖の葦(ヨシ)を刈り、紙製品にする活動を続けています。こうした活動についても、今後、龍谷大学の知見や人材と関わりながら進めていける可能性があるのではないかと感じています。

安藤:研究の社会実装は大学の重要な使命です。サステナビリティの実現に向けて、協働・共創・挑戦を続けていきましょう。


横手 綾美

コクヨ株式会社CSV本部サステナビリティ推進室室長。2004年コクヨ株式会社入社。ワークスタイルコンサルタント、ワークプレイス設計者としてオフィス構築案件を多数担当。2021年よりCSV本部サステナビリティ推進室へ。循環型社会の実現に向けたコンセプト立案や、プロジェクト推進をする他、コクヨグループの社会価値創出ロジックモデルの整理、サステナブル経営企画を担当。2026年室長に就任。

安藤 徹

1968年岐阜県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程修了。専門は日本古典文学、特に『源氏物語』をはじめとする平安朝文学。著書に『源氏物語と物語社会』(森話社)など。2000年に龍谷大学文学部に着任。2017年より4年間文学部長を務める。その後、副学長・龍谷ミュージアム館長を経て、2025年4月に第20代学長に就任。

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