広報誌「龍谷」2026 No.101

05

Research, Unlimited

先端理工学部知能情報メディア課程
曽我 麻佐子准教授

VRで無限の創作、新たな表現を実現
芸術と技術が融合した「ダンス&テクノロジー」

仮想空間がダンスの創作空間に

身体表現によって人々を魅了するダンス。中でも現代舞踊と呼ばれるコンテンポラリーダンスは常に新しい動きや表現が求められるため、振付家やダンサーは身体と想像力を駆使して創作に情熱を注いでいる。知能情報メディア課程の曽我麻佐子准教授は、人や物体の動きをセンサーやカメラで捉え、三次元データ化するモーションキャプチャが世の中に普及し始めた頃からダンスの創作活動と最新技術を融合させた「ダンス&テクノロジー」という独自の研究に取り組んでいる。その成果の一つがモーションキャプチャで取得したダンサーのアバターをアプリ上で操作するダンスの学習・創作支援システムである。ステップやジャンプなどの短い動きに腕や頭の動きを組み合わせて振付を検討する仕組みで、使用した振付家やダンサーからは「新しい動きの発掘に繋がる」と好評。実際の舞台公演の振付にも活用されている。

近年、曽我准教授はコンピュータによって作り出された仮想空間をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのデバイスを装着して疑似体験するVRに着目。これを使った新たなシステムの開発を進めている。

研究室ではHMDを装着した学生が仮想空間の中で自分の分身となるアバターを両手のコントローラーで操作していた。腕を上げたり、体の向きを変えたりすると、その動きがリアルタイムでアバターへ反映される。

「アバターは自分の可動域を超えた動きも、生身の人間では不可能な動きも可能とします。外見や身体構造を変更したり、アーカイブから動きを選択して部分的に結合したりと自在に扱えます。例えば、手は脚に比べると細やかに動くので、手の動きで脚を操作すれば今までになかった動きの表現に繋がると思います」とVRシステムの機能や効果を語る曽我准教授。さらにVRの中のアバターを自分の分身ではなく、自分とは異なる振付家やダンサーとして捉えることで動きの客観的な分析にも活用。視点も360度見渡せるだけでなく、上から俯瞰したり下から覗き込んだりできるので、現実では見ることのできない角度から動きをチェックできる。またダンサーのアバターを複数配置して動かすこともできるので、モニターに映し出された仮想空間はまさにダンスの稽古場。こうした仮想空間と疑似体験を共有することで、振付家が動きを伝えるコミュニケーションツールとしての可能性も検証しているという。

アバターに限界なし。ダンスの継続も支援

学生時代から学業とダンスを両立し、今でもクラシックバレエを続けているという曽我准教授。美しい動きを身につけて舞台で表現するためのレッスンに打ち込む中で、この動きはどのように生み出されているのか、関節や筋肉などの身体の構造や動作の特性を人間工学の視点から分析することに関心を持ち、研究者の道を志したという。しかし、現在取り組む「ダンス&テクノロジー」の研究とシステム開発では、自身もダンサーだったからこそ理解している表現者としての思いを何よりも大切にしている。その証がシステムの目的に共通する「支援」という言葉である。

「自らの身体表現や創造活動をアバターやAIに託したいと考えるダンサーや振付家はいないといっても過言ではないでしょう。プロはむしろアバターやAIを超えることをめざすと思うので、その時の手助けをしたいと考えています」と語る曽我准教授。VRの活用も、システムの進化や創作の幅を広げるだけでなく、振付家やダンサーへの配慮も踏まえてのこと。創作の過程では新しい動きを何度も試すことから振付家やダンサーの身体に掛かる負荷は大きく、時にはケガに繋がる恐れもある。その点、アバターは疲れたり、ケガをしたりすることはない。コントローラーの操作だけで動きや回数、時間を問わず、無制限の試行錯誤がかなうのだ。

広報誌「龍谷」2026 No.101

ダンスの学習・創作支援システムのアプリを検証する曽我准教授と学生たち

研究活動の一環として渡米した際、病気の影響で以前のように踊れなくなったダンサーにVRシステムを体験してもらったところ「really helpful」と喜ばれた。「体力や年齢などの限界を超えて創作活動を可能とする、そしてダンスを楽しむことも続けられる、このシステムはそんな支援にも役立つと実感しました」と曽我准教授。目標はいつでもどこでも簡単に活用できるダンスの学習・創作支援システム。「最近、続々と登場するゴーグルやサングラスのような手軽なVRデバイスの活用も考えています。2027年4月に開設予定※の情報学部(仮称)によって環境や設備がさらに充実するので研究に一層注力し、1日も早い社会実装を実現したいと思います」


曽我 麻佐子

曽我 麻佐子

名古屋大学大学院人間情報学研究科修了。博士(学術)。専門はCGアニメーションと身体動作情報処理。2004年龍谷大学に着任。2007年度EPFL(ローザンヌ工科大学)VRLab客員研究員、2024年度UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)HAX Lab客員研究員。龍谷大学古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター(DARC)副センター長を務め、龍谷ミュージアムにおいて「バーチャル聖護院」「3D仮想試着」「AR舎利容器」などの展観技法も披露。

Download

広報誌「龍谷」2026 No.101

広報誌「龍谷」2026 No.101

Download PDF Digital Library