牧 久美子
企業勤務を経て、公認心理師・臨床心理士の道へ。龍谷大学文学研究科臨床心理学専攻※1 博士後期課程修了。2017年龍谷大学文学部臨床心理学科※2非常勤講師、2024年より龍谷大学心理学部講師。専門は臨床心理学、システムズアプローチ、ウェルビーイング。現在もスクールカウンセリングに携わるなど臨床経験豊富。
※1 2025年度より心理学研究科
※2 2023年度より心理学部
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心理学部
牧 久美子講師
心理学には、人の弱さや心の不調の原因を探り、その回復をめざす側面がある一方で、人が本来持つ強みや可能性に着目し、それらを伸ばすことをめざす領域もある。その一つが、牧久美子講師が担当する授業「ポジティブ心理学」。より幸せに、より良く生きる状態を表す「ウェルビーイング」の維持・向上を科学的かつ実践的に探究することを特長としている。
「コロナ禍をはじめ先行き不透明な時代背景もあり、多くの人たちが持続可能な社会には一人ひとりの心身の健康や豊かな人生が欠かせないことに気づき始めました。そのためウェルビーイングが一段と重視されるようになり、研究も発展しています」
心理カウンセラーや心理学の研究者の道に進む前は、外資系企業の人材開発部に所属していた牧講師。一人ひとりの強みに目を向けることが、個人だけでなく組織全体の成長にも繋がるという現場での経験も授業の内容や指導に活かしている。
授業は前半の数回にかけて「ポジティブ心理学」の成り立ちやウェルビーイングの定義などを講義で学習。その後、グループディスカッションやロールプレイを通じてウェルビーイングの維持・向上のための実践を積み重ねていく。「前向きになろうという精神論ではなく、多くの研究者や専門家による実験・調査によって効果が検証された、科学的根拠に基づく方法を学生たちは修得していきます。この方法はいくつもありますが、共通しているのは日常の行動にほんの少し変化を加える、物事や人に対する見方や考え方を工夫することが軸になります」と牧講師は語る。
学生たちはまずウェルビーイングを測定するツールを使って自らの幸福度を診断したり、挑戦や希望、親しい関係といったウェルビーイングに繋がるとされる様々な要因が書かれたカードを選び、なぜそれに価値や幸福を感じるのかをグループでディスカッションすることで自身の価値観を見つめ直していく。また、一日の終わりにその日にあった良い出来事を3つ書き出すスリーグッドシングス、困難から立ち直る力を育むレジリエンス、自分自身を思いやるセルフ・コンパッションといった方法も実践。当初は「3つも良いことが思い浮かばない」「何事もネガティブに考えてしまう」といった声も聞かれたが、実践を重ねるうちに「小さな喜びに気づけるようになった」「自分に優しくなれた」と日々の行動や物事の捉え方に変化が表れていったという。
後半から終盤の授業では「アサーション」が取り上げられた。これは自身も他者も尊重しながら考えや思いを適切に伝える、人権にも基づいた自己表現の方法である。「日本では、自らの思いを率直に言葉にすることを控える傾向にあります。しかし、自らの思いを伝えられないことで困難や葛藤を抱える人も少なくありません。より良い自己表現のための知識・技術があると、自分の考えをしっかりと伝え、相手の思いも理解できる適切な対話が成立し、関係性もより良くなっていきます」
より良い伝え方や対話について、この日は共働き夫婦を想定したロールプレイで練習。家事を分担してほしい妻役と、仕事が忙しく家事を妻任せにしている夫役に分かれて、対話を始める学生たち。相手を尊重しつつ、自分が無理や我慢をしないためにはどのように伝えればいいのか。話が上手くまとまるペアもあれば、平行線をたどるペアもあった。そこで妻役と夫役を交代すると相手の思いや事情に気づき、互いを大切にする対話が進んだ。
こうした学びは「龍谷大学基本構想400」に示される、他者とともに生きていく姿勢とも重なっている。 「アサーションで大切にしている自他尊重もそうですが、ウェルビーイングは自分だけでなく、周りの人の幸せによっても高まっていきます」
心理学を学ぶ学生の進路は臨床心理の専門職に限らない。多くは企業をはじめ様々な分野へと進む。一般社会に出れば、価値観や立場の異なる多様な人たちと関わっていくため、自己表現や相互理解などに悩む場面にも直面するだろう。「そんなとき、相手を大切にしながら、自分らしさも見失わないように、授業で学んだ方法を活用してほしいと思います。自分の態度やふるまいのスイッチは常に自分が持っています。そんな“人生のリモコン”を自分で操作できる力がウェルビーイングにも、共生にも繋がっていきます」と牧講師。未来を担う学生にとって「ポジティブ心理学」が自他ともにより幸せに、より良く生きるための土台となっていく。

お互いの思いや価値観をディスカッションする学生たち
牧 久美子
企業勤務を経て、公認心理師・臨床心理士の道へ。龍谷大学文学研究科臨床心理学専攻※1 博士後期課程修了。2017年龍谷大学文学部臨床心理学科※2非常勤講師、2024年より龍谷大学心理学部講師。専門は臨床心理学、システムズアプローチ、ウェルビーイング。現在もスクールカウンセリングに携わるなど臨床経験豊富。
※1 2025年度より心理学研究科
※2 2023年度より心理学部