高原 まどか
同志社大学理工学部情報システムデザイン学科卒業。同志社大学大学院理工学研究科 情報工学専攻博士前期・後期課程修了。修士・博士(工学)。2018年同志社大学 研究開発推進機構及び理工学部特別任用助手、2019年米スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNLab)客員研究員などを経て、2022年より龍谷大学先端理工学部助教。2026年より龍谷大学農学部講師。
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2027年4月情報学部着任予定
高原 まどか講師
日本では、睡眠時間を削って働くことや勉強することが「がんばっている証」と受け止められがちである。事実、日本の平均睡眠時間はOECD(経済協力開発機構)加盟の33カ国中、最下位という結果を長年脱していない。しかし、睡眠不足が慢性的に続くと、心身に大きな影響を及ぼし、生産性も低下。経済損失は18兆円以上ともいわれている。高原まどか講師はこういった睡眠の問題を解決し、心身の健康を向上させる研究に取り組んでいる。研究の出発点は自身や家族の心身の不調だった。「根本的な治癒や解決には、自身の心身の状態を知り、対策していくことが必要であり、私の専門である情報工学の知見を活かしていくことができるのではないかと考えました」と高原講師は語る。
まずは、生体情報を取得できるウェアラブルデバイスを使って一人ひとりの睡眠を可視化し、自発的な改善を促進する仕組みの構築に取り組むが、その過程で、個人に働きかけるだけでは日本の睡眠問題の解決には繋がらないことに気づいた。「個々の睡眠状態の改善に加えて、睡眠に対する正しい情報の普及や次世代への早期教育など、睡眠リテラシーの向上を図る何重ものアプローチが必要でした」と高原講師。
そこで着手したのが「睡眠教育」アプリケーションの研究開発である。親子を対象とし、アプリ内のAI猫を育てるゲームとして設計。プレイヤーの睡眠データを入力すると、エサをはじめ世話に使えるアイテムが増え、AI猫の機能も高まっていく。子ども一人でも遊べるが、保護者もプレイヤーになると特別なアイテムが付与されることで「一緒に遊ぼう」と思える仕掛けも施した。「年齢にかかわらず、睡眠は個人の活動ですが、親子の共同作業としたのは、両者が睡眠について学び支え合うことで、ともにより良く眠ることを根づかせたいと考えたからです」設計側の評価基準を設定すると生活スタイルや体質に合わない場合があるので、親子で定めた目標を達成できたかを重視。AI猫が先生となって親子が学ぶ教育機能も搭載したいと考えているが、このAI猫、質問に答えないこともあるらしい。「『お母さんが知っているかもしれないから聞いてみて』といった助言によって、親子のコミュニケーションを促します。何でも初めから答えや正解を示すのではなく、人間自身が考えることへと導く、そんなAIの新たな役割も追究しています」
睡眠教育アプリの研究開発では、ウェアラブルデバイスで取得した生体データの解析やAIモデルの高度化を進める一方、高原講師は技術一つひとつの意味も問い続けるという。
「私が専門とする人間情報学と社会情報学は、理系の情報工学のなかでも文系的な側面を持つ分野です。人間情報学では人にとって情報とは何かを考察していき、社会情報学では社会が情報をどう扱い、情報が社会にどのような影響を与えるのかを見出していくことが軸になります」
この考えは、高原講師が過去に高齢者施設でおこなった睡眠アプリの研究にも表れている。高齢者の睡眠状態を花の数や色、咲き方で表現したところ「今日は綺麗な色の花がよく咲いているね」と、職員や面会に訪れた家族との会話が弾んだという。さらに、蓄積した睡眠データは適切なケアに活用。一つの情報が多方面に役立つことを示した。また、睡眠は光や温度、音といった環境要因だけでなく、日々の出来事やストレスによっても時間や質が左右されることから、心の安定を図り、睡眠改善を促す機能の開発も見据えている。

睡眠中の呼吸や心拍数などのデータもアプリ開発に不可欠
2027年4月、龍谷大学には情報学部が誕生する。理系・文系を超え、人々の生活や豊かな社会を支える基盤となる情報技術を切り拓いていく。「学部が掲げる『情報×健康』、『情報×教育』といった領域は、まさに私が追い求めてきたことです」と意気込む高原講師。睡眠教育アプリはまだ検証段階だが、複数の親子によるテストでは「子どもが睡眠に関心を示すようになった」「親子の会話が増えた」と好評。そのなかで、情報やデバイスとの適切な距離感も検証する必要性を感じたという。「SNSやICT機器の普及によって、私たちは四六時中、膨大な情報にさらされています。だからこそ、それらに流されるのではなく、自分や周囲の人々の健康や幸福のために必要な情報を選び取る力が不可欠であり、学生に身につけてほしい力でもあります。情報は人が動くことで生まれるもの。『より良い、人と人、人と社会との関わりを』を私の哲学として、これからも研究に取り組んでいきます」
高原 まどか
同志社大学理工学部情報システムデザイン学科卒業。同志社大学大学院理工学研究科 情報工学専攻博士前期・後期課程修了。修士・博士(工学)。2018年同志社大学 研究開発推進機構及び理工学部特別任用助手、2019年米スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNLab)客員研究員などを経て、2022年より龍谷大学先端理工学部助教。2026年より龍谷大学農学部講師。