龍谷 2007 No.64


ホットアングル 370年の歴史と研究の成果、龍谷コレクションを全国の博物館・美術館にて公開。

「旅順博物館展 西域仏教文化の精華」青森県立美術館

青森県立美術館 青森県立美術館
青森県立美術館 これまでの旅順博物館との共同研究に携わってきた上山大峻元本学学長が、レセプションに臨席した。
中国大連市の旅順博物館が誇る6万点以上の収蔵品から、西域仏教にかかわる新疆(しんきょう)文物を中心に(日本の国宝にあたる国家一級文物15点を含む)100点を展示。海外で開催された展示会としては、過去最大規模の展覧会である。
 龍谷大学は、旅順博物館と10数年にわたる交流の歴史があり、今回の展覧会でも本学仏教文化研究所・西域研究会が全面的に協力し、監修という立場で準備に携わった。
 また、本学所蔵の西域文化資料から厳選して9点を出展。古典籍デジタルアーカイブ研究センターによる、デジタル復元した壁画の画像投影や研究成果も展示した。
 本展覧会に出展された西域出土文物は、浄土真宗本願寺派第22世宗主の大谷光瑞師のもとで進められた調査によってもたらされたもの(大谷探検隊将来文物)であり、歴史的にも、学術的にも貴重なコレクションである。
 所蔵を大別すると、本学のほか、旅順博物館(中国)、ソウルの国立中央博物館(韓国)、東京国立博物館(日本)の4機関に分散しており、この展覧会では、2機関の収蔵品が一堂に会する貴重な機会となった。

会期:2007年7月14日(土)〜8月26日(日) (終了)


「ガンダーラ美術とバーミヤン遺跡展」静岡県立美術館

「日本国内でガンダーラ至宝を初めて集大成し、バーミヤン遺跡の謎に迫る」をコンセプトに、国内より多数の西域仏教美術が出展されるなか、龍谷大学からは大谷コレクションが出展される。

会期: 2007年12月28日(金)〜2008年3月30日(日)


「重寶聚英(じゅうほうしゅうえい) 本願寺展 - 親鸞と仏教伝来の道 - 」
九州国立博物館 (福岡県)


 2011年の親鸞聖人750回大遠忌をひかえた西本願寺の記念事業の一環であり、九州地方における本願寺の至宝の大規模な展覧会は今回が初となる。
 今回の展覧会では国宝4点、重要文化財24点を含む約130点もの作品を展示し、「親鸞聖人の事蹟と進行」「本願寺歴代の肖像と聖教」「ゆかりの至宝|名筆・茶の湯・障壁画」「大谷探検隊と仏教伝来の道」の全四章にわけて出品される。
 龍谷大学からは「大谷探検隊と仏教伝来の道」において、大谷光瑞師による大谷探検隊の成果として、「菩薩頭部」のほか重要文化財である「伏羲女 図」を出展する。

会期:2007年9月22日(土)〜11月18日(日)


襖絵 建物・文化財など、
本願寺のすべてを
デジタルアーカイブに!
今、よみがえる桃山の美

センター長 岡田至弘
古典籍デジタルアーカイブ研究センター
センター長 岡田至弘(おかもと よしひろ)
理工学部情報メディア学科教授
障壁画
肉眼では確認できない障壁画
障壁画
赤外線撮影で浮かび上った虎やヒョウの画
 龍谷大学古典籍デジタルアーカイブ研究センターは今年4月から、浄土真宗本願寺派(西本願寺)の依頼を受け、西本願寺の国宝の書院や飛雲閣などの襖絵や障壁画をはじめ、すべての建物と文化財をデジタルアーカイブ化する事業を開始した。

 これは2011年の「親鸞聖人750回大遠忌法要」に向けた事業の一つで、現時点の西本願寺のすべてを、電子データで記録・データベース化しようとする試み。「平成の大修復」も今年で御影堂の大屋根の修復がほぼ完了。その修復の結果を後世に記録として残すと同時に、文化財劣化の原因を究明し、保存・修復のためのデータを提供するのも目的だ。

 このほど、第1陣として書院の東に隣接した重要文化財「虎乃間」の障壁画「竹林群虎図」の解明に成功、新聞各紙でも大きく取り上げられた。以前から参拝者の接待をする「虎の間」には立派な虎の絵があると伝えられていたが、劣化で肉眼では確認できなかった。そこで赤外線撮影してみると、北側の障壁画の一部から虎四頭の姿が浮かび上がったが、そのうちの一頭はヒョウであることが分かった。

 威力を発揮したのは、この事業のために開発された超高精細デジタルカメラ。今までのスタンド型スキャナーと違い、壁のたわみや建物のゆがみにうまく対応でき、ソフトウェア的に補正する手法を取り入れた。カメラの画素数は5億、色深度は48ビットと極めて幅広い色彩が記録できるほか、天井や壁の角なども記録できるのが特徴だ。大きな物体の記録も可能。国宝の対面所(鴻の間)の203畳敷きの大広間の奥にある巨大な壁面(幅4m、高さ2.5m)でさえ、1mmあたり12本の分解能(300dpiの高解像度)で、継ぎ目なしに撮影できる。

 今回の事業は、赤外線を用いて復元模写をすることが課題であり、使われた顔料の元素分析や塗られた順番、劣化の原因なども解明していく予定。その上、顔料は「採取して調べる破壊検査」ではなく、現場で直接調べる非破壊検査で行う。
 今後2年半の時間をかけ、文化財はもちろん、全建物の壁や天井、壁面まで残さず記録し、最新科学と先端計測技術の適用によってデジタルアーカイブ化をすすめていく。




龍谷ミュージアム設置決定!
2009年秋、龍谷ミュージアムが本願寺会館敷地に設置!
 龍谷大学では、現在、21世紀の大学像を「共生(ともいき)をめざすグローカル大学」とし、「人間・科学・宗教」をキーワードに、新たな教育・研究・社会貢献活動の創造を図るべく、全学的に第4次長期計画(2000年〜2009年)に取り組んでいる。
 今般、その一環として、京都市下京区の西本願寺近隣地に、2009年11月の開設を目標に、「龍谷ミュージアム(仮称)」を設置することが決定した。
 本施設では、仏教文化研究資料としての「冩字臺文庫(しゃじだいぶんこ)」、シルクロード研究資料としての「大谷探検隊将来品・西域資料」、そして、国宝「類聚古集(国宝)」や「竹取物語(奈良絵本)」、「平家物語(覚一本)」、「往生要集」など、17万冊を超える古典籍を始め、長尾文庫(社史・引札)、「解体新書」や中央公論の前身となる「反省会雑誌」など、本学がこれまでに蓄積してきた様々な貴重資料を公開する予定である。この他にも、これまで本学が取り組んできたアフガニスタン新発見仏教遺跡の学術調査研究や、歴史的文化財や研究成果を社会に発信する機能を持つ古典籍デジタルアーカイブ研究など、本学の特色を生かした研究成果についても、本施設に集約して公開することを予定している。

龍谷ミュージアムの概要


 また、合わせて本学の設置者である浄土真宗本願寺派(西本願寺)が所蔵する様々な文化財や貴重資料についても、これを調査研究し、保存していくための取り組みを行なう。
 このように、本施設では、本学が有する仏教を中心とした歴史的文化財と、西本願寺が所蔵する多くの国宝・法宝物を対象として、これらの「収集・整理・保存」、「調査・研究」、「展示・公開」など、博物館の本来的機能を果たしていくとともに、本学が総合大学としてこれまで展開してきた「教育・研究・社会貢献」に係る諸機能を融合させることで、「知のコミュニティ」を形成し、世界的な仏教研究を推進する拠点として展開していく予定である。
 なお、詳しくは、次号(65号)にて掲載予定。


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