龍谷 2007 No.64

トピックス

「ひかりと色の不思議」

 日本学術振興会による「ひらめき☆ときめきサイエンス」に、龍谷大学から2件の事業が採択された。同プログラムは、現在活躍している研究者と大学の最先端の研究成果の一端を、小学5・6年生、中学生、高校生が見る、聞く、触れることで、学術と日常生活との関わりや、科学(学術)がもつ意味を理解してもらおうというもの。
 同プログラムへの本学研究事業の採択は、「龍谷大学の研究が世界に誇れるものである」と、日本学術振興会に認められた証といえる。


※日本学術振興会:
学術研究の助成、研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進、学術の応用に関する研究等を行うことにより、学術の振興を図ることを目的として設立された文部科学省所管の独立行政法人。

最先端の科学の世界で、心躍る体験を

光を当てると色が変わる液体
光を当てると色が変わる液体
 8月4日、「ひかりと色の不思議」をテーマにした「ひらめき☆ときめきサイエンス」を開催した。瀬田キャンパス近隣の中学校から参加者を募り、当日の受講生は27名。瀬田キャンパスREC小ホール、実験棟を会場に、光によって形や色を変える物質に焦点をあて、実験を通して科学と物質の不思議を体感してもらった。
 実験内容がプロジェクターを使用して説明されると、受講生の未知なる世界への期待感が、いやが上にも盛りあがる。内田教授と4名の協力スタッフによって執り行なわれた実験は3つ。受講生は3班に分かれ、実験室を移動しながら、異なる実験を全て体験した。
 実験1は、内田教授と辻本敬助教が行なう「色の混合と形を記憶する高分子を体験してみよう!」。光を当てると色が変わる液体を見学し、色とは何かという疑問を投げかけたあと、実験を開始。ペーパークロマトグラフィーを使って、市販のカラーペンの色分けを行ない、様々な色は赤・青・黄の3原色でできていることを理解してもらった。そのあと、3原色を混ぜ合わせて、オリジナルカラーのスライム作り。さらに、形状を記憶した高分子(プラスチック)の記憶を、お湯につけて再現した。
 実験2は、中野裕美実験講師による「電子顕微鏡を使ってミクロの世界を見てみよう」。電子顕微鏡で1万倍の世界を観察した。例えば、モルフォ蝶の羽や玉虫などの美しい色は、粒子そのものに色がついているのではなく、粒子の形状によって光が回折、干渉して見えているのだということを確認。また、髪の毛、消しゴムなど、身近なものも拡大して表面の粒子の違いを観察した。
 実験3は、宮武智弘講師と糟野潤助教による「光と色と光合成」。葉のなかの葉緑体は太陽光のエネルギーを吸収しているが、植物の葉はなぜ緑色をしているのか。その答えを導き出すために、光合成するときの光と色の関係を、植物試料を使って実験しながら探った。
 中学校では体験できない本格的な実験に、受講生は歓声を上げたり、驚いたりしながら満足した様子。最後に、内田教授が「未来博士号」を授与して無事終了した。
 「この貴重な機会を通して、中学生たちに少しでもサイエンスに興味を持ってもらいたい」と内田教授。子ども達の理科ばなれが叫ばれる昨今、その思いが通じ、将来、一人でも多くの科学者が生まれることを願ってやまない。

赤・青・黄色を使いオリジナルカラーのスライムを作る
赤・青・黄色を使いオリジナルカラーのスライムを作る
糟野助教とともに光合成の実験を行なう
糟野助教とともに光合成の実験を行なう

内田教授より参加者に「未来博士号」が授与された
内田教授より参加者に「未来博士号」が授与された
内田 欣吾(うちだ きんご) 教授

理工学部・物質化学科
内田 欣吾
(うちだ きんご) 教授


「アフガニスタンの不思議な世界」

高校生に、視点を変えることで視界が広がる学ぶ醍醐味を伝えたい

入澤 崇(いりざわ たかし) 教授

経営学部・仏教学専攻
入澤 崇(いりざわ たかし) 教授
 12月16日に行なわれる、ひらめき☆ときめきサイエンス「アフガニスタンの不思議な世界」。講師の入澤教授は現在、龍谷大学が行なっているアフガニスタン遺跡学術調査隊の責任者。昨年もアフガニスタン中部に位置するバーミヤン遺跡の西方に新たな仏教遺跡群を発見するなど大きな成果を挙げている。
 このテーマで高校生に講義をするきっかけになったのは、昨年いくつかの高校でシルクロードに関連する講演をしたことだったという。
 「高校生たちの関心が意外に高かったんです。以前、高校で必須科目にもかかわらず、世界史が教えられていなかったという問題がありましたよね。いま、奥行きのあるものの見方を養う歴史教育がないがしろにされようとしています。今の高校生にとって歴史は『記憶するもの』ですが、本来、歴史は年号ではなく『人間の営み』。今の時代に欠けているもの、自分のありようを見つめ直すことが歴史を学ぶ意義です。仏教時代のアフガニスタンには今の時代を考え直す重要なヒントがたくさんあります。高校生に歴史文物を通じて、異なる文化を結びつけた仏教の魅力、さらには視点を変えることで視界が広がる学ぶ醍醐味を伝えたいですね」
 当日は講演のあと、現地で撮影した貴重な遺跡の映像を実際に見ながらの説明、質疑応答やグループディスカッションなども行なわれる予定。
 「アフガニスタンは、東西交易の中継点として様々な文化と宗教が混ざり合い、実に刺激にとんだ地域でした。同じ地域でイスラムと仏教が共存していたという驚くべき事実も発見されました。アフガニスタンというと大仏破壊や自爆テロなどで、危険な国という印象がありますが、どうして現在のアフガニスタンに至ったのでしょう。高校生には一面的なものの見方ではなく『異なる文化、異なる価値観がある』ということを訴えたいですね。世界史の教科書では学べないことを、わかりやすく伝えたいと考えています」



理工学部「研究室公開」と「夏休み理科工作・実験講座」

理工学部では、「龍谷大学理工学部を身近に感じてもらおう」という目的のもと、日頃の教育・研究成果や教育施設・設備等を多数の方に様々な形で公開している。

「研究室公開」
 瀬田学舎にて夏のオープンキャンパスが開催された7月22日(日)、8月25日(土)、受験生を対象に研究室公開が行なわれた。両日ともに、理工学部6学科の約50もの研究室が1号館・7号館・HRC棟に分かれ、実験のデモンストレーションやコンピュータ上でのデモンストレーション、展示などとともに研究成果の分かりやすい紹介を行なった。
 7月22日の研究室公開では研究室公開のほか、ミニ講義を行ない、参加した受験生は一足先に、キャンパスライフを体験した。
 8月25日は夕刻より夕照コンサートが開催され、本学吹奏楽部のほか、地域の各小・中・高校生など幅広い年代のグループが演奏を行ない、会場は一層の賑わいをみせた。

学内者も関係者以外は入室が許されない電波暗室を公開
学内者も関係者以外は入室が許されない電波暗室を公開
【秋の研究室公開】
10月27日(土)、28日(日)、
瀬田龍谷祭に合わせて開催
多数のご参加をお待ちしております
(詳細は理工学部HPにて http:// www.rikou.ryukoku.ac.jp/

「夏休み理科工作・実験講座」
 去る8月8日(水)、9日(木)の2日間にわたって県版特区人材育成事業「夏休み子ども理科工作・実験講座」が開講された。この講座は、大津商工会議所・大津市との産学官連携により、将来のものづくりを担う子どもたちに対し、科学技術や「ものづくり」に対する理解を深めてもらうもの。
 当日は、夏休みを迎えた大津市内の小学生、約100名が瀬田学舎に集まり、4班に分かれ、講師の先生方や補助の学生の説明に熱心に聞き入り、手作りの作品作りに取り組んだ。
 また、全員が体験できる「スライムの作成」「竜巻をつくろう」「果物電池の実験」「空気砲をつくろう」などのプログラムもあわせて開講し、盛り沢山の内容となった。

熱心にペットボトルカーの工作に取り組む小学生たち
熱心にペットボトルカーの工作に取り組む小学生たち
主催:龍谷大学Ryukoku Extension Center・大津商工会議所
後援:大津市


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