広報誌「龍谷」

かつては自然を愛で、自然とともに生きることに長けていた日本人。しかし、いつのまにか街にはビルが建ち並び、スーパーで野菜を買う生活に慣れ、土から離れた暮らしが当たり前になった。しかし物質的にどんなに豊かになっても、このままの価値観では本当に豊かな生活を送ることはできないということに、多くの人が気づきはじめている。そんななか、若い世代を中心に注目を集めているのが、イギリス人女性のベニシア・スタンリー・スミスさんだ。

京都・大原の古民家に住まい、地域の人々と交流しながらハーブや野菜を育て、自然の声を聞いて暮らすスタイル。そして環境にやさしく誰もが気軽に実践できる手づくりの生活は、NHKの番組で4年間にわたって放映され、今の時代にあった豊かな生き方の一つの手本として、多くの人々に支持されている。

一方、いのちの尊さや大切さを学び、地域連携を重視した教育に注力してきた龍谷大学は、2015年に新たに農学部を設置(予定)し、「食の循環」にかかる教学展開を通して、「食の安心・安全」及び「持続可能な社会」の実現を図る教育をスタートさせる。〝暮らしを見直し、持続可能な社会の実現を図る〟という全人類に課せられたテーマを、身近なところから実践しようとする大学の試みと、ベニシアさんのライフスタイルが共鳴する部分は多い。

イギリスと日本という二つの文化を通して、より良い生き方を見据えるベニシアさんが赤松学長と語る、日本の未来とは。

若い世代は生活を見直しはじめている

ベニシア 最近は大原に来て畑を借りて生活する若者が増えています。とくに25〜35歳くらいの人は農業に興味がある人が多いですね。日本中でこういう動きが出てくると、この国の食料自給もあがってくるんじゃないでしょうか。

赤松 その世代は、大都市圏での就職状況がかなり難しくなったことなどから、価値観が変わりつつあるようですね。自分達の衣食住など生活の原点への関心が高まっているように感じられます。

ベニシア エコなライフスタイルや食の安全に興味を持つのはとてもいいことですね。ただ、欧米では関心の高い問題が、日本ではあまり認知されていないことが気になります。例えば除草剤。環境や健康への影響が懸念されるとして一部の除草剤を使用禁止にしている国もあります。アメリカ人の友人に聞いたら「そんなことはみんな知っているよ」と言っていたけれど、日本では知っている人は少ないです。私は殺虫剤の代わりに除虫菊とヨモギと芥子を混ぜて防虫剤にして、草花や野菜などにスプレーしています。そうすると虫は来ないんですよ。危険性があるものは使わないという選択ですね。

赤松 インターネットなどで独自に情報収集している人もいますが、一般的には無関心な人が多いですよね。日本は同調社会と言われたりしますが、物事を決断する時に自分で決めず、周りの流れでなんとなく決めてしまう傾向があるように思います。

ベニシア 私の祖父はいつも「貴族は高潔でなくてはいけない」と言っていました。毎日の選択のなかで自分自身を偽らず、心を清らかに保つこと。今の日本はそういうことを忘れてしまっている気がします。

「いのち」を支える「食」

赤松 日本は〝寸分違わず正確なものを作る〟という工業製品の理念や管理方法を、農産物にまで適用してしまったんですよね。ここ20〜30年の間にそんな風潮が広まったように思います。それまでは曲がったキュウリが普通だった気がしますよ。

ベニシア でも外国から野菜が入ってくるようになって、みんな産地なんか気をつけて見るようになりましたよね。安過ぎるのは何かがおかしいんじゃないかってね。民間レベルでは流れは変わってきていますよね。

赤松 そうですね。消費者の食や環境に関する安全・安心志向の高まりを受けて、地域で生産されたものを、その地域で消費する「地産地消」という動きが注目されています。「健康的な食生活の実現」や「地域の活性化」など多くのメリットが「地産地消」にはあるのです。2015年に開設予定の農学部では、学生に田植え体験や収穫体験をさせ、自身の目で見つめ、見極め、未来への責任を持って選んでゆく消費活動ができるように、教育内容を検討しています。「いのち」を支える「食」のあり方を捉え、建学の精神に基づいた人間教育を通じて、本学独自の人間育成を図りたいと考えています。

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互いを知り、深く理解する大切さ

知識を経験へとつなぐ教育をめざす国際文化学部では、留学をその実践の機会として位置付けている。

留学前には異文化ギャップへの対応方法を学ぶ事前学習、帰国後には留学先での体験を振り返る事後学習を実施する。これら留学前後の学びを充実させることで日本と海外との違いや、世界の多様な視点について総合的な理解を得ることができる。

「人間が生きていくなかで、もっとも大切なのはコミュニケーション能力。そのなかで語学力以上に大切なことは相手の文化や習慣を知り、互いの違いを深く理解することです」と話すのは清水耕介教授。

学生自身が目的に応じて留学期間を選択できる龍谷大学独自の留学プログラムのほか、夏期や春期の休暇期間を利用する国際文化学部独自の短期留学制度などもあり、海外留学を希望する学生を積極的に支援している。また、留学中の学生が、日本の留学経験のある専門アドバイザーに相談できる「語学・留学サポートデスク」も設置。これらの支援制度が充実したことによって留学は学びの一部となり、「遠い夢」から「身近な現実」へと変わった。

また、学部内にも国際交流の機会は多い。「国際文化学部には各学年に40〜50名程度の留学生が在籍しています。彼らとの交流や授業での文化比較などを通じて、日常的に国際感覚を養うことができます。知識と経験をともに身につけることが『真の国際人』を育むと考えています」

国際文化学という幅広い学問領域を学ぶうえで、2年次から学生自身の関心や目的に応じて七つのコースから主専攻、副専攻を選択することができるのも国際文化学部の特色だ。コースには文化理解分野から「国際共生コース」「芸術・メディアコース」「地域文化コース」、言語分野から「英語教育コース」「フランス語研究コース」「中国語研究コース」「コリア語研究コース」が用意され、これらを組み合わせることでより明確な目標を持って学ぶことができる。

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“MBSが3年ぶりに採用した、期待の新人アナウンサー!” そんなフレッシュな謳い文句に若干の違和感を感じる、七三分けにメガネのどこか懐かしい“お父さん”的風貌。落ち着きはらった語りは25歳とは思えぬ貫禄があり、しかも趣味は落語に昭和歌謡ときたもんだ。そんな福島アナウンサー、今やお茶の間では人気急上昇。1年目からMBSの人気番組『ちちんぷいぷい』や『知っとこ』を担当、その活躍ぶりも新人とは思えない福島さんだが、当初は全くアナウンサーになるつもりがなかったという。しかし話を聞くうちにわかってきたのは、“この人がアナウンサーにならずして誰がなるのか”というくらい、アナウンサー魂に溢れた人だということである。

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広報誌「龍谷」2013 No.75

巻頭特集 学長対談
ベニシア・スタンリー・スミスさん×赤松 徹眞 学長
自然とともに、美しく生きていくために

広報誌「龍谷」2013 No.75目次

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