龍谷大学

370周年記念事業

人間・科学・宗教シンポジウム第一回「非暴力と共生の世界を願って」開催報告

2009年12月8日(火)、人間・科学・宗教シンポジウム第一回「非暴力と共生の世界を願って」が、約250名の来場者を集めて、京都ホテルオークラ暁雲の間を会場として開催されました。


第一部では、はじめに、龍谷大学若原道昭学長より、本学創立370周年の歴史的意義と、研究部門において文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に8つの研究センターが採択され、本学の共生の理念を具現化し、先進的な研究成果を社会に還元していることを紹介いただきました。


次に、ご来賓として、浄土真宗第二十四代ご門主 大谷光真氏にご臨席賜り、ご挨拶をいただきました。非暴力の姿勢は仏教の根本的立場であり、縁起思想に依拠しながら、我がものという固定的な考え方を反省し、世界全体がつながっているからこそ、一人ひとりが責任を持って生きていく重要性を提言されました。


続いて、平野武研究部長がコーディネーターとなり、5つの研究センターより、研究目的と成果概要の発表がありました。平野研究部長からは、これらの研究センターの実績と取り組みが、あらゆるいのちの共生と安穏をもたらすものであり、これからも見守っていきたいというエールを送られました。

岡田至弘 古典籍デジタルアーカイブ研究センター長

宮下豊勝 情報通信システム研究センター長


村井敏邦 矯正・保護研究センター長

石塚伸一 矯正・保護研究センター副センター長


ポーリン・ケント アフラシア平和開発研究センター長

鍋島直樹 人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター長


第二部では、文化人類学者の上田紀行氏(東京工業大学准教授)と、龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター研究フェローの長崎暢子氏(龍谷大学名誉教授)のお二人に、特別講演をいただき、聴衆に深い感動と気づきを与えました。

上田紀行氏は、物質的価値やお金を追い求めてきた現代日本の私たちが使い捨ての物のように自分を捉え、不安や息苦しさを感じていることを見据え、「生きる意味」を再構築し、仏教ルネッサンスの道を切り開きたいことを述べられました。特に、インド・ダラムサラにおいて、ダライ・ラマ14世と上田紀行氏とが2日間にわたって21世紀社会の展望と宗教の役割について対話を行った内容には、仏教の可能性が示されています。講演では、ダライ・ラマとの対談の模様を、DVDを上映しながら紹介いただき、ダライ・ラマの表情や思想が聴衆に臨場感をもって伝わりました。


長崎暢子氏は、インド近代史、現代インド学や南アジア地域研究、マハトマ・ガーンディーの研究を進められ、世界の歴史と現実を踏まえて、非暴力による平和構築の道を示し、また、本学アフラシア平和開発研究センターの研究者としてご尽力いただいています。 長崎氏は、20世紀は、第二次世界大戦、核兵器開発と大量虐殺に象徴されるように、「暴力」が際限もなく拡大していった時代であったと反省し、その上で、どうすれば強大な暴力を使わせないか、非暴力の実践によって平和を構築するにはどうすればよいかについて明らかにするために、マハトマ・ガーンディーの非暴力運動に注目されました。 ガーンディーは、真実(サーティヤ)を追求(アーグラハ)し、真実を堅固に守り、不殺生(アヒンサー)の生き方を貫きました。非暴力の実践にあたっては、コミュニケーションの重視、指導者と被指導者という関係を認めず、同じ会員として奉仕すること、双方が敗北しないようにし、妥協の美しさを尊重することなどがあるとされました。最後に、長崎氏は、ガーンディーが妻から非暴力の姿勢を学んだと語っていることを紹介し、弱い人たちこそが非暴力を実践していることに気づかせてくれました。


最後に、龍谷大学河嶋壽一副学長より、閉会の辞をいただきました。河嶋副学長は、発表者や講演者、また来場者や関係各位すべての方々に対する深い感謝を述べるとともに、本学らしい特色のある教育研究をこれからも推進していきたいと語りました。何よりもシンポジウムに参加して、縁起の世界を知り、私たち一人ひとりがこの世界のためにできることをそれぞれ果たしていくことが、ついには真の非暴力と共生の世界を築いていくことになるだろうと呼びかけました。


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