親和会だより

 

「龍谷大学 in KUMAMOTO」を開催!

  昨年10月24日(日)、大学・親和会・校友会の三者共催事業として、「龍谷大学 in KUMAMOTO」を熊本県の熊本テルサホールで開催しました。
  今回は薬師寺管主の山田法胤師を講師にお迎えし、「こころを耕す」と題した貴重な講演をしていただきました。当日はあいにくの天気ではありましたが、参加した聴講客はすばらしい講演に熱心に聞き入っていました。

開場 開場直後の様子
開場直後の様子
   
テーマ  『こころを耕す』
  自分の心を変えると世の中が変わる

山田 法胤 師

薬師寺管主
やまだ ほういん
山田 法胤 師

昭和15年生まれ。
龍谷大学文学部仏教学科卒業後、 薬師寺執事に就任。
平成10年の薬師寺執事長就任を経て、
平成21年薬師寺管主に就任。
主な著書に「こころを耕す」「薬師寺」 「心やわらかに」ほか多数。

 


ー必要な寛容の精神

 今年は日本が国家という形を整えた710(和銅3)年の平城遷都から1300年目を迎え、今春には平城京の中心にあたる大極殿が約190億円かけて復興されました。1300年前の国づくりで、わたしたちのご先祖さまは、どんな考え方で日本という国を打ち立て、どんなふうに国民が幸せになってもらいたかったのでしょうか。平成の今、わたしたちはこれから先の日本をどんなふうに生きていけばいいのかということを一度立ち止まって振り返る。それが国民にとって大事な時かなと、しみじみ思います。

  地球の人口は69億人になろうとしていますが、69億人は、多いと思いますか?少ないと思いますか? 30年前の人口は30億人だから、30年間で39億人増えています。倍以上になっています。このまま2〜3年たつと、70億人になります。みんなが豊かでぜいたくで、そして公害をまき散らすような生き方をすると、地球がどうなっていくのか。それを考えると人口問題は決して忘れてはならないものです。

  また「地球は一家、人類は兄弟」とありたいと思いますが、なかなかそうはいきません。でも広い心を持ったら、そうなれるんです。でも「心を狭くすれば、すなわち針をも通さず」、皆さん方の心を狭くしますと、隣近所のちょっとした諍(いさか)いや、ちょっとした心のすれ違いで、隣の人ともう口もきかない。心というものはそういうものですから、できるだけ心を大きく持つという寛容の精神が必要です。あと人生には運命という定めと、自らを切り開いていこうという2つの生き方があります。運命を自分たちの意思で切り開いていくことが大切です。


ー宝物とは「田からもの」ー


 皆さん方は、何を宝物と思って生きてきていますか?
  分かっているようで分かりませんね。宝石も宝物の一部かどうか分かりませんが、宝物のすべてではありません。いろんな字引をずっと調べたら書いてありました。それが「田からもの」。毎年、田んぼを耕し、肥やしをやって、種をまいて、草を抜いて、耕してやると米が取れます。ニンジンとかホウレンソウとかだったら、同じ所で毎年作るという連作ができないのです。ところが米は、同じ田んぼで作れば作るほど、たくさん取れるんですよ。だから更新性がある。稲作によって日本の勤勉さと素晴らしい民族性が生まれてきたんです。今のように株などをやってインターネットで稼ぐとか、そんなことの繰り返しをやっても、一つもいいことはありません。「もつ人の 心によりて 宝とも 仇ともなるは 黄金なりけり」です。持つ人の心が悪かったらお金は罪をつくってしまいます。

  「田からもの」とは、私たちの「こころを耕す」っていうことなんです。心を耕していくと、世の中を変えていく。皆さんは周りを変えたら日本が変わると思いますか? 政治を変えれば日本が変わると思いますか? 相手を変えることは難しい。でも自分の心を変えることはできます。努力することなんです。


ー「他楽(はたらく)」ということー


 今は定年がだいたい65歳。定年までは会社が生き方の目標を作ってくれます。だから会社に入ればこういうことをやろう、こういうことをやったらいいと目的を与えてくれた上に給料までくれます。ところが定年になったら「勝手にしなはれ」です。でも人間は何かしら目的がなかったらいけません。「朝は粥 昼一菜に 夕茶漬け 後生大事に 身のほどを知れ」という歌がありますけど、人間は能(よ)く生きなければいけない。能く生きるとはどういうことかと言うと、働くことなんです。「働」っていう字は「他(はた)楽」ということ。ちょっとでも自分以外の人が楽しくなるように、他人が喜んでくれるように生きなさい。これを「他楽」って言うんです。何でもいいんです。ものがあればものを出しなさい、力があれば力を、知識があれば知識を。知恵でもいいんです。お年寄りの知恵は賢いのだから。なければ自分の中に育てて与えなさい。これから育てて、与えてもいいですから。

  この国を1000年後に残しておいてあげるような生き方をするために今、私たちは何をするべきか。この熊本が今と同じように住み良い場所として残していきたいと、一人ひとりが心掛けたら、1000年後にこの九州の豊かな都市が残るじゃありませんか。どうぞ、そんなことをお考えになっていただいて、生きていただければ、素晴らしい生き方ができるのかなあと思っています。どうぞ、これからの人生の中に「能く生きる」、そして「ありという 人に地獄は なかりけり なしと思える 人にこそあり」「他楽」ということをお考えになりながら、日々の生活を楽しんでいただければありがたいと思います。






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