みらいの環境を支える龍谷プロジェクト みらプロ|龍谷大学 創立370周年記念


活動について

2015年度活動

稲荷学~部(まな~ぶ)

今年度のみらプロは、大学の近くにある伏見稲荷大社に着目!伏見稲荷大社は、日本で最も外国人観光客が訪れたい場所2014で1位に選ばれました(トリップアドバイザー調べ)。日々数多くの外国人観光客が訪れているため、伏見稲荷参道商店街は地域の賑わいについては歓迎する一方、安全面や衛生面において多くの問題が生じています。今後、外国人旅行者が増加することが予想されているが、地域の受け入れ態勢が十分に整っているとはまだ言えない状況です。そこで、人気観光地ランキング1位となった京都で学生目線から外国人旅行者に関する問題について検討・解決しようと考えました。テーマとしては、「単に外国人のマナーアップだけでなく、観光客を迎える側にも観光に対する理解を深めること、おもてなしの心を学ぶことなどが必要であることから、ホストとゲストの相互理解」です!

(1)留学生とのワークショップ(2015年7月9日)

まずは身近にいる外国人と交流するために、龍谷大学の留学生とワークショップを行いました。スペインやウクライナ、韓国など様々な国の人たちが参加してくれました。私たちも英語はあまり話せませんが、英単語を並べてコミュニケーションを図りました!このワークショップでは、留学生自身が日本へ来て、生活や観光をする中で困っていることや、自国と日本の違いについて話し合いました。日本ではゴミの分別が複雑で難しいことや、ごみを捨てる場所が少ないなどの意見が出ました。私たち自身、このワークショップを通して、日本の文化やマナーを教えるだけでなく、相手の国の文化やマナーを知ることが大切であると感じることができました。


(2)京都市MICE推進室へのヒアリング(2015年9月9日)

京都市の観光政策を学ぶため、京都市産業観光局観光MICE推進室へヒアリングを行い、京都の観光の実態や観光と経済の関係についてお話をお聞きすることができました。年々観光客が増える中で、マナーや宿泊施設不足など、新たな課題の解決に向けての取り組みについて議論することもできました。


(3)嵐山へのヒアリング(2015年10月14日)

地域での外国人旅行者への対応を学ぶため、嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会へヒアリングを行いました。この協議会では、外国人旅行者たちの文化や考えを理解した上で、おもてなしをされておられます。日本のマナーを一方的に教えるのではなく、相互理解を深めることが一番大切なことだと学びました。


(4)コミュニケーションカード作成

ここまでの活動を通して、マナーの啓発も大切ではあるが、なによりもコミュニケーションをとることが重要ではないかと考え、コミュニケーションカードを作ることに決ました。日本では英語教育が行われていますが、英語で話しかけられることに抵抗を持っている人も少なからずいます。このカードは、英語と日本語の簡単な文が例示してあり、必要な個所に簡単なローマ字を書くことでコミュニケーションをとるものです。これにより、多少英語が話すことができなくても、カードを見せたり筆談をすることで、ファーストコンタクトがとれ、コミュニケーションのきっかけを作ることができます。なんてアナログ!!

(5)伏見稲荷大社でのアンケート調査

まず、外国人旅行者と日本人の両方の意見を知るためにアンケートを行いました。外国人旅行者には伏見稲荷大社の参道で、日本で観光をする中で困っていること、驚いたこと、素晴らしいところを聞きました。困っていることに書いた人の半分は「英語がなかなか通じないため、コミュニケーションがとりにくい」でした。日本人へのアンケートは地元の商店街の方々に行い、外国人観光客が増えたことでの変化についてお聞きしました。
また、外国人旅行者には、作成したコミュニケーションカードを見せて、より使いやすいカードとなるように意見をいただきました。


(6)留学生とのワークショップ(2015年11月26日)

コミュニケーションカードにどのような会話や情報が必要なのかについて、様々な国の意見を聞くために留学生とワークショップを行いました。日本に来てよく使う会話や情報を教えてもらいました。また、カードのデザインについても「富士山や和柄など日本らしいものがいい」という意見が出ました。単にコミュニケーションに使うだけでなく、日本の旅行の思い出の品となれば私たちもうれしいです!


(7)モニタリング調査(2016年2月3日)

コミュニケーションカードがほぼ完成に近づきました。実際に外国人がこのカードを持って日本人に尋ねコミュニケーションを図ることができるのか、モニタリング調査をしました。私たちみらプロメンバーが外国人になりきり、伏見稲荷大社や京都駅、四条で日本人に「SUMIMASEN」と話しかけ、場所や電車の乗り方などの質問をしました。カードに書いてある図を指さしたり、筆談をしてみなさん答えてくれました。この調査で、カードの改良点も見つかりました。

2014年度活動

東京研修~明治神宮外苑・国立市・小平市~(2014年3月4~6日)

みらプロでは、2009年から東京の景観に関する訴訟やまちづくりに関して調査を行ってから早くも、5年が経過。先輩たちが景観について学ばれ、みらプロの原点ともいえる国立市を訪れ、もう一度、景観について考えることにした。また、経済的・政治的世情も変化した今、東京という地域が当時と比べどのような変貌をとげているか、また景観についてどのような方向性・世論の中にいるのかということ学ぶため、新たな問題が起きている、神宮外苑と小平市を訪問することに決めた。

東京研修1日目。みらプロ初参加者とともに新鮮な気持ちで東京へ。午前から、大橋智子さんはじめ『神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会』の皆様の案内のもと、神宮外苑と国立競技場周辺を歩いた。ザハ・ハディド氏の案で、新国立競技場が建設されることによって変わる景観や周辺の影響について学んだ。建築案のあまりの大きさに驚き!建設費用の問題はもちろん、デザインと周辺の景観、周辺に生活されている方へ交通面での危険が増すなど、様々な課題があると感じまいた。そして、国立競技場周辺を歩いていると、桜の木を伐採するなど、少しずつ工事が着工されていました。


2日目。午前は国立市へ。元原告の大西信也さん、元原告川合智子さんに国立市大学通り周辺を雨が降る中ご案内して頂きました。大学通りの周辺の歴史や、訴訟のお話などを聞かせていただきました。5年前に一緒に活動されていたみらプロの先輩たちの話もお聞きできました。住民の皆さんの地域に立ちする「愛」が非常に強く感じられ、地域を作っていくのは地域の一人ひとりであることの大切さを学びました。
午後からは小平市へ。この小平市では、50年前に計画された小平都市計画道路3・2・8 号線が、府中街道に並行して作られ、東京都は平成25年度に事業着手を行い、整備を推進していこうとしていた。しかし、本道路によって玉川上水遊歩道が大きく分断され、虫とりや散策、プレーパークで親しまれている小平中央公園の雑木林は半分に削られ、住宅地の約220世帯が立退きとなり、町並みは一変する恐れがでてきた。


そこで、平成25年5月、『住民参加による道路計画の見直しの必要性の有無』を問う住民投票が実施された地域である。私たちは、共同代表の水口さんをはじめとする「住民の意思を反映させる会」の皆さんに計画地を案内してもらいヒアリングを行った。閑静な住宅街が立退きとなり道路になることから、生活環境や地域コミュニティに与える影響、住民がどのようにまちづくりに関わっていくのかについて、主にお話を聞くことができた。まさに、住民自治というものを肌で学ぶことができる機会でした。


世界農業遺産

○はじめに

あなたは、農業について、深く考えたことはありますか?
あなたが、真っ赤なりんごをスーパーで手にできるのは、なぜですか?

輸入したものであれ、日本で生産したものであれ、誰かがどこかで農業を営んでくれたおかげです。ありがたいことです。そんなことを考えながら、ご飯を食べることはないでしょう。TPPという農業の国際化が進み、日本の農業は今後どこへ向かうのでしょうか。
世代も変わり、景観を真正面からとらえた問題でなく、また少し異なる角度から、2014年~2015年前半は調査を行いました。それは、

「世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems)」

です。冒頭でも述べましたが、食物や水があるおかげで私たちは生きているのです。そんな農業(システム)を遺産として認定する制度に着目し、現地調査を行いました。

(1)世界農業遺産って?

「世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems)」は、FAO(国際連合食料農業機関)という国連の組織が認定する遺産です。世界では36サイト、日本では8サイトありますが、聞いたことある人は少ないでしょう。そもそもFAOは、世界の人々を食料不足による飢餓から救うことでした。しかし、「緑の革命」という改革で、森林破壊や水質汚濁、遺伝子組み換え作物等の問題が発生したのです。そこで、活動が見直された結果、設立当時の趣旨とは違う「世界農業遺産」という認定を行うようになったのです。

Q.「世界遺産の農業バージョンですか?」
A. いえいえ、少し異なったものです。私たちがよく耳にする世界遺産は、「UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産」で、①文化遺産、②自然遺産、③複合遺産があります。京都が含まれているのは想像に安いですし、白神山地はセンター試験によく出てきていました。では具体的に、「ユネスコ世界遺産」は「顕著な普遍的価値を有する」有形文化遺産(不動産)を対象としており、そのまま残っている古いものを保護しようとするものです。一方、「世界農業遺産」は、それが時代や環境の変化に移り変わったものであれ、その地域独自の農村文化・農業景観・生活・生物多様性を代々受けつながれた知恵の遺産(システム)として保護・活用し、次世代に継承することを目的とするものです。
今回は、その中でも私たちが調査した、熊本県阿蘇、静岡県掛川、石川県能登で、どんな調査を行ったのか書かせていただきました。

(2)熊本県阿蘇市「草原の維持と持続的農業」 2014年2月26日~28日

阿蘇地域は、熊本県の北部にあり、阿蘇山のカルデラ地帯に広がる草原は、まさしく「アルプスの少女ハイジ」で見た景色さながらです。2015年はニュースでしばしば、火山の噴火の様子が報道されていました。この阿蘇の世界農業遺産は、輪地切り、野焼き、放牧という一連の流れによって維持されてきた草原とそれを取り巻く文化・景観の持続性が特徴です。


〔1〕 1日目「熊本県庁 世界農業遺産ディスカッション」 2014年2月26日
私たちは、熊本県庁で、質問状を手に白熱したディスカッションを行いました。まだ現地調査していない中でしたが、自分たちが京都で考えてきたことや疑問をぶつけました。目的は、大きく3つ、①世界農業遺産とは、実際どういったものか? ②問題・課題は何か? ③それらの解決を含め、どのような取り組みをしているか?です。様々な課から対応し、議論に参加してくださり4人の方々の貴重な意見を聞かせていただきました。

〔2〕 2日目「阿蘇市 阿蘇世界農業遺産推進室」 2014年2月27日
1日目に、熊本県が大きな政策を考え、大分県や阿蘇市と連携しているというお話を聞いた上で、次はより市民との距離が近い阿蘇世界農業遺産推進室の帆足俊文さんにヒアリングをお願いしました。阿蘇は、世界農業遺産だけでなく、世界ジオパークにも加盟していることから、合わせて質問させていただきました。
目的としては、県と違い市民と密着している点で、県とはまた違った課題・政策があるか?ということでした。印象に残っていることは、防災と農業景観の維持について質問させていただいた時の、「防災対策が景観の維持よりも優先されるべきだと考えます。」というものです。これは決して、景観対策が不要とおっしゃっているのではなく、安全があってこその遺産であるということです。可能な対応を考えて景観保全を考えていくことが必要ともおっしゃっていました。阿蘇の世界農業遺産とは、景観を守るために防災を疎かにする遺産ではなく、市民の生活を第一に考え、時代や環境の変化に適応しながら進化を続ける「生きる遺産」であると再認識させられるものでした。

〔3〕 3日目「リストランテミヤモト」 2014年2月28日
 最後の日は、世界農業遺産を熊本県庁に提案し、認定まで導いたイタリアンレストランのシェフである宮本健真さんを訪問しました。実は、一日目にはお客としてランチをいただいていました。私たちは、熊本県の野菜を使ったトマトパスタと熊本県の名産「あか牛」のハンバーグを注文させていただきました。私たちが宮本さんから最も学んだことは、①情熱、②地元愛ではないでしょうか。ファストフードのチェーン店が全国で展開している中、「自分たちの足元が素晴らしい」と気づき、アクションを起こしたその勇気と行動力には、学ぶべきものがあります。一般に成功と呼ばれる背景には、中心となる人物がいるものです。
このように世界農業遺産を学び、調査していると、後世に残すべき遺産が独立して存在するのではなく、人々の生活と一人一人の行動があって生まれています。何が課題で何を行っているかは、方法にすぎないのです。よく言われますが、世界農業遺産とは「過去の栄光の姿ではなく、現在と今の輝ける姿」といえると実際に学ばせていただきました。



「掛川市東山地区」

(3)静岡県「静岡の茶草場農法」・「掛川市 環境経済部 お茶振興課」 2014年7月4日

静岡県の世界農業遺産は、周辺5市町(掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町)にまたがっており、日本では3番目に認定を受けました。茶草場農法とは、茶園と茶園の間に刈り取ったススキ・サヤを敷く伝統的な農法のことです。茶園土壌の保湿や微生物の繁殖を助けるなどの効果があり、人間の管理がなされている「半自然草地」と呼ばれています。
そこで私たちは、掛川市環境経済学部お茶振興課の永谷隆行さんに2時間程度ヒアリングをさせて頂きました。阿蘇の農業遺産を学んだ後であったため、①静岡の特徴(課題・取り組み)、②阿蘇の世界農業遺産との違いが明確になり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。認知度向上や後継者不足解消の法人化等の問題もあれば、国内の需要は減りつつも、海外の需要は増えているという今後の可能性についてもお聞かせいただきました。
2日目には、掛川市栗ヶ岳で実際に茶草場を調査しました。「静岡の茶草場農法」の特徴である生物多様性を象徴する「カケガワフキバッタ」にも会うことができました。この地域周辺のみで生息する固有種であり、貴重な体験でした。


(4)石川県「能登の里山里海」 2014年12月19日~21日

石川県北部に位置する能登半島は、多くの里山里海があり、揚げ浜式製塩法、輪島塗などの伝統技術、千枚田のような美しい農業景観、「あえのことが」はじめとする伝統的祭礼が残る地域です。里山里海を中心とした土地利用、農業水産業、食文化、祭礼、工芸、生物多様性が認められ、世界農業遺産第一号として新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」と共に認定されました。
今回の調査は、12月という非常に寒い時期に日本海側に臨むことになり、雪・氷道で難航しましたが、無事調査することができました。


〔1〕 1日目 ・午前「石川県庁 農林水産部 里山振興室」    2014年12月19日
今回の目的は、①現在の動向調査及び取組の経緯調査、②他地域との比較調査です。初めて参加する2回生も多く、少し緊張した状況で臨みましたが、石川県庁農林水産部里山振興室の奥本勉さん、村角美登さん、橋場真美さんが丁寧に対応してくださり、多くを学ぶことが出来ました。「GIAHS」を「世界農業遺産」と日本語訳なさったのは石川県知事ということは、阿蘇・静岡と調査してきた私たちには、衝撃な事実でした。また、能登の世界農業遺産は、阿蘇・静岡と比べ、よりいっそう人々の生活とその地域との密接な関係が存在しており、日本の世界農業遺産の原点と考えさせられました。
・午後「珠洲市 自然共生室」
石川県庁の県全土と他地域との交流等、広い視点を学ばせて頂いた後に、珠洲市自然共生室の才式嘉明さんに1時間30分程度ヒアリングをお願いしました。世界農業遺産だけではなく、珠洲市の現状や課題も合わせて話していただき、京都市から調査に乗り込んだ私たちにとって非常に新鮮でした。地域の2/3の人は認識できるというしっかりとしたコミュニティでも、市がどの程度市民と関わり合いをもって接するかが重要になるなどの課題も学ばせていただきました。


〔2〕 2日目「金沢大学 能登里山里海マイスター育成プログラム」 2014年12月20日
雪に覆われた山の極寒のコテージで泊まった私たちは、まず珠洲市の奥能登塩田村等の現地調査に向かいました。揚げ浜式製塩法が現在でも行われている場所で、塩田と巨大な釜を見ることができました。
お昼からは、金沢大学能登学舎(元小学校)でご飯をいただきました。現地の食材で調理されたもので、世界農業遺産を実際に感じようということですね。
次に、里山里海マイスター育成プログラムの中島浩二先生と小路晋作先生にヒアリングを行い、里山・里海プロジェクトの合同研究会にも参加させていただきました。まず、里山里海マイスター制度とは、「能登に定住し自然や文化を学びたい」、「里山里海についてより良く理解したい」、「里山里海を仕事に活かしたい」等の学ぶ意欲を持つ45歳以下の人を対象にしたものです。1年間のカリキュラムで、基礎科目と実践科目、プレゼンを実施して、卒業認定を行い、金沢大学から「里山里海マイスター」の称号が授与されます。ネットワークの拡大や里山里海を利活用する地域の伝承者になるとされています(調査時2014年)。
「能登里山里海マイスター」は、能登の里山里海だけでなく、地域コミュニティも学ぶことができ、地域の伝承者になることができると感じました。この、里山マイスター制度がさらに広まれば、日本全国で課題とされる里山について、多くの方に関心を持っていただけるのではないかと考えています。その地域の生物多様性、伝統的な農業文化、農業景観の保護・活用、住民の意識の向上を「真の願い」とした世界農業遺産も全国で今や8サイトになっています。世界農業遺産が全国に知れ渡ることで、里山里海に対する考え方や地域コミュニティのあり方が考えられる、そんな局面を迎えているのではないでしょうか。私たちは、みらいの環境をささえるため、今後とも世界農業遺産を含め、景観、環境等のまちづくりの調査を進めていたいと思っております。



滋賀県高島市 重要文化的景観「高島市針江・霜降の水辺景観」現地調査(2015年3月9日)

高島市針江・霜降は、水路、水田、内湖、琵琶湖をはじめとする水循環利用システムが形成されている地域で、人々の生活に密着した水辺景観に触れることができます。
京都市から約1時間30分かけ、滋賀県の重用文化的景観を学ぶため現地調査に行ってきました。そこで、針江生水の郷委員会事務局の方に現地案内をお願いしました。右上の写真は、水が湧き出る水路です。江戸時代の雨が貯水し、現在、地下水として湧き出ていると言われています。この調査で、①身近な自然を「利用しながら手入れするシステム」が現在に至るまで使用されていることの貴重さと伝承の必要さ、②重要文化的景観の認定が住民の地元愛を後押しすることを学びました。 (右図、カバタ)


中池見湿地 現地調査(2015年3月9日)
私たちは、針江調査後に福井名物ソースかつ丼を堪能し、中池見湿地に向かいました。現地では、NPO法人ウエットランド中池見の笹木進さんと笹木智恵子さんに案内をして頂きました。小雨が降る足元の悪い中、長靴を履き、傘を差した調査となりました。さては...誰かが雨男、女なのでしょう。
  この中池見湿地は、世界的に希少な10万年の泥炭層が形成されている場所で、水鳥や絶滅危惧種の生息地として保護することを目的としたラムサール条約湿地です。北陸新幹線の計画ルートがこの湿地(うしろ谷)を貫通しており、開発によってこの地域の水循環、景観、生物多様性に不可逆的な影響を与えることが問題なりました。そこで、私たちは動向調査及び自らの目で見て、考察することを目的に調査を行いました。(2015年5月にルートの見直しが実現)
経済発展を目的とした開拓は、一見私たちの生活を豊かにするように見えます。しかし、自然景観、水質の変化、生物多様性等を危険にさらすおそれがあるのです。相対するとされる、経済の発展と地域の保護の問題を実際に触れ、学ばせていただきました。


2013年度活動

○深草SOSUI(疏水)物語2013~疏水と通りのヒストリー

2012年度に引き続き、今年度も疏水をテーマに活動しました。2012年度の活動から見えてきた課題として、深草地域は、有名な岡崎や伏見の疏水と繋がっている琵琶湖疏水が流れているものの、本地域に流れる疏水(鴨川運河)と、疏水との独特な繋がりを持つという魅力を住民の方はあまり注目していないことでした。そこで、疏水と平行に走る「通り」(本町通など)にも着目し、「疏水」と「通り」の関係から、本地域における疏水と通りで発展した地域独特の文化を住民の方々と一緒に共有し、疏水と「通り」を中心に地域の魅力を「みらい」へ継承することを目指し活動しました。

(1)文化的景観研究会開催(7月12日)

熊本大学大学院教授、文化庁記念物課文化的景観部門技官、コンサルタント会社、龍谷大学教授の方々をお招きし、龍谷大学深草町家キャンパスにて文化的景観研究会を開催しました。研究会では、地域における文化とその独自性がこれからのまちづくりにおいてどのような位置にあるのか、また、まちづくりを考える上で地域のどういった点に着目すべきかを議論しました。

(2)古写真展・ミニコンサート開催(疏水沿いライトアップ共催イベント)、PV上映、聞き取り調査(8月9日)

地元住民団体であるふかくさ・藤森・桜並木を愛でる会の行う疏水沿いライトアップイベントと共催し、同時開催日において龍谷大学深草町家キャンパスにて古写真展・PV上映(疏水の成り立ち)及び龍谷大学サークルのマンドリンオーケストラのミニコンサートを行いました。また、古写真を見られる方に地域についての聞き取り調査も行いました。


(3)河川周辺地域における文化と景観調査
四万十川流域調査(8月7~10日、10月4~5日)/岐阜市長良川流域調査(12月17日、3月9~10日)

今年度も、水辺空間の活用という点から高知県の四万十川と長良川の活動に注目し、調査することにしました。
高知県5市町にまたがる四万十川が重要文化的景観に選定されていることから、人と川との繋がり、文化、川との関わりにおけるまちづくりを調査するため四万十川流域へ訪問調査を行いました。四万十市や四万十町の担当者の方へお話をお伺いするとともに、その他関係者の方へ聞き取り調査もしました。
また、河川と人々との生活の関わりが要素の一つとなり、国の重要文化的景観に選定予定である岐阜市長良川流域でも調査し、地域のWSにも参加し、お話をお聞きしました。
鴨川運河という水辺のある地域と類似する水辺地域において、水辺の文化、景観調査をすることにより、水辺と生活とのつながり、水辺空間の活かし方など、参考となる要素を学ぶことができました。

(4)「通り」に着目:「ストリート・ヒストリー」の冊子作成への準備

「通り」に着目したとき、私たちが対象とする「通り」は、どのような要素(お店、住宅など)で成り立っているのか、どのように変化してきたのか、を考えました。そこで、対象としていた「通り」である本町通りに軒を連ねる家々、お店を全て撮影しました。「通りの歴史」を考えるということで「ストリート・ヒストリー」と名づけました。また、同時に住民の方に聞き取り調査を行いました。当日は雨の降る中での調査でしたが、写真を撮ることで、本町通りをゆっくりと歩く良い機会になりました。
そして、この「通り」の写真に古写真を加え、通りの両側の要素をくっつけ冊子上にして、これを土台に住民の方々と「話すきっかけづくりとしての冊子。」にするべく、準備しました。

(5)鴨川運河会議(全3回)への参画

昨年度の企画にて準備会議が進められていた鴨川運河会議の本会議に参画しました。今年度における鴨川運河会議への出席及び作成資料に関わらせていただきました。
なお、鴨川運河会議は2015年9月にNPO京都景観フォーラム、地元住民、学生などが企画、運営する新たな形態(会議内に複数のチームを設け、チームごとの活動と全体としての活動の形態)に変わりました。みらプロからも引き続き、メンバーが参画しています。

(6)京都市上下水道局へのヒアリング(10月24日)

疏水の歴史、現在の姿(問題点や重要な要素等)、今後の利用の可能性について調査するため、京都市上下水道局へヒアリングを行いました。

(7)龍谷大学学園祭(龍谷祭)にて写真展・プチ・ストリート・ヒストリーの展示会の開催・学生アンケート調査実施(11月2~4日)

写真展・プチ・ストリート・ヒストリーでは、地域の方々から古写真について大変ご好評をいただきました。3日間で約450名以上の方に見ていただくことができました。
また、学生アンケートでは、龍谷大学生が地域へほとんどアクセスしないこと(主に下宿先や通学以外で疏水に架かる橋を渡らない)などが明らかになりました。今後の活動に活かすことのできる若者目線のお話をいただけました。


(8)深草100円商店街にてWS(ワーク・ショップ)実施(11月23日)

深草100円商店街において、深草町家キャンパスにて地域の価値の再確認とこれからのまちづくりについてのWS(ワーク・ショップ)をしました。地域の方々から、大学生視点からの素材やアイディアに触れていただいたことで、「疏水について考えるきっかけになった」「次の世代へ疏水も含めて伝えていく大切さを改めて分かった」などの率直な気持ちをいただけました。


(9)琵琶湖疏水記念館へヒアリング(12月5日)

ヒアリングでは、疏水がどんな道筋を辿ってきたのか、どのような目的で作られ、実際に利用され、当時どんな風に市民に受け入れられていたのかといったお話や、琵琶湖疏水の維持管理(管轄など)や水利権の話など、学術(法学)から、実務に至るまで「疏水」に関する内容を深く知ることができました。

(10)ふかくさ・藤森・桜並木を愛でる会との共催イベント「ふかくさまるごとライトアップ2014春」開催(2014年3月28日~4月9日)

昨年度にも開催された桜のライトップイベントを本年度も開催することとなり、更に昨年度よりも地域の範囲を広げることになりました。1日がかりで準備をし、毎日決まった時間にライトを点灯し消灯するなど大変なこともありましたが、多くの方の喜ぶ顔や声を聴くことができて、苦労も吹っ飛びました。この光景も毎年見てきましたが、何回見ても本当に美しいです。


2012年度活動

○「深草SOSUI(疏水)物語」(2012年4月~2014年3月)

京都市は、琵琶湖疏水を始め、鴨川、白川、高瀬川など多くの水辺空間が街中に溢れているまちです。琵琶湖疏水は、山科疏水、岡崎疏水、鴨東運河、鴨川運河など、流れる場によって様々な名前が付けられています。その中で私たちは、大学付近を流れる鴨川運河(以下、「疏水」)に注目しました。
「深草SOSUI(疏水)物語」事業では、「知る」「表す」「共有する」の3つを軸として地域の魅力の再発見と共有、発信に取り組みました。主に伏見区深草を中心に、本地域における生活史の再編と疏水を通して、深草地域(深草地域内の学区)を縦でつなぐ活動を行いました。

(1)疏水のライトアップ・疏水沿いでの映像上映会(2012年8月)

2012年8月に疏水沿いで行う初めての企画として、疏水沿いで様々なイベントを行っている地元有志団体「京・ふかくさ・藤森桜並木を愛でる会」(以下、「愛でる会」)の「京の七夕ライトアップ」に参画しました。そこでは、「愛でる会」様より、疏水沿いを行燈で灯し、七夕飾りをつけ、通りかかった住民の方々に短冊に願いを書いてもらう企画をしました。みらプロでは、名神高速道路高架下(京阪藤森駅疏水側)において、深草地域の自然、歴史・文化、食等といった魅力を伝える映像を上映し、合わせて、通りかかった住民の方々に聞き取り調査を実施しました。聞き取り調査では、昔は疏水で実際に泳いでいたという話から疏水で洗濯をしていたなど、ビックリ!!するような話ばかりでした。また、今の疏水しか知らない方の中では「疏水で何かできたら良い」という意見もありました。聞き取り調査を通して、以前は水辺と人が近い存在であったことが分かりました。

(2)京都市へのヒアリング

疏水を中心とした地域のまちづくりを学び・考える上で、行政の政策に関する調査が必要であると考えました。

①京都市都市計画局都市景観部景観政策課
最初に、京都市都市計画局都市景観部景観政策課にヒアリングをしました。京都市全体の景観政策、伏見区の景観政策、今後、伏見区の地域についてどのようなまちづくりを考えているか、景観政策課として琵琶湖疏水をどう捉えているか、等のお話をお聞きしました。

②京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課
現在、岡崎地域における琵琶湖疏水は、京都市において重要文化的景観の選定を目指した調査・取組が進められています。そこで、深草周辺地域に流れる琵琶湖疏水とつながる岡崎地域の琵琶湖疏水に関する政策や調査・取組の内容、及び、岡崎地域における琵琶湖疏水のみではなく、琵琶湖から宇治川まで続く琵琶湖疏水全体についてどう考えているか、等お話をお聞ききしました。


(3)熊本県山都町の通潤用水調査、熊本県庁・山都町へのヒアリング調査

水辺空間の活用方法について、京都市以外の場では、どのような方法を模索しているのか、また、実際に行っているのか、を知るべく、熊本県へ調査(2012年9月27・28日)に向かいました。
主に、重要文化的景観に選定されている熊本県山都町にある通潤用水と白糸台地の現地調査と、熊本県庁及び山都町へ訪問し、実地調査とヒアリングを行いました。そこでは、人々が昔から継続してきた生活(人の生業)から形成された文化的景観の意義・重要性を学ぶとともに、重要文化的景観の制度の可能性についてお話をお聞きしました。山都町では、「本制度だけでまちづくりを考えるわけではなく、本制度はまちづくりの一手法である。」ということや、「まちづくりは住民の人の気持ちが最も大切。住民の気持ちなくしてはまちづくりはできない。」というお話をお聞ききすることができました。


(4)龍谷大学文化祭(写真展示会と行政・地域の方による講演会及びワークショップ)

2012年11月2、3、4日に龍谷大学の文化祭にて企画を開催。本企画は、まず、まちあるき・ヒアリングを通して撮った今の疏水周辺の写真と昔の疏水周辺の古写真、また京都以外の各地域の疏水・用水の写真、全国の重要文化的景観についてのパネル展示を行いました。
2日目は、深草支所地域力推進室まちづくり推進課長の松野光宏氏(当時)からは現在の深草地域の魅力と課題について、また、「愛でる会」代表の金津佳光氏からは、疏水沿いでの活動や疏水に対する想いについて、ご講演いただきました。加えて、その場に来場してくださった地域・学生・行政の3者を交え、「通りと疏水がつなぐまち、伏見~過去・現在・みらいを語ろう」と題したワークショップも同時開催しました。「疏水でなにかイベントをしたい」、「疏水で昔泳いでいたし、今ももっと触れられたらいいのに」など、思いを語り合い、住民の方同士の意見交換の場だけでなく、学生と地元との交流の場にもなりました。


(5)深草100円商店街への初参加(写真展示)

11月17日の深草100円商店街では、深草小学校の一角をお借りして、住民の方々に地域の魅力を再認識又は気づいていただくきっかけとなる場として写真の展示会を行いました。写真は、本活動において学生の目線から魅力であると思ったものや、地域の昔の写真を展示しました。その際、京都市長の門川大作氏にもご高覧頂きました。


(6)伏見連続講座

2012年12月1日(土)、聖母女学院で行われる伏見連続講座において、みらプロも参加させていただきました。そこでは「深草SOSUI(疏水)物語」の活動報告をさせていただくとともに、受講されている住民の方々とワークショップを開催しました。ここでは、「伏見」という大きなまちの特徴について語り、その中で深草地域がどのような位置づけがされているかを歴史や皆さんの記憶に遡って、多角的な話しを交わすことができました。

(7)学生発のシンポジウムの開催

2013年1月12日、「第3回21世紀の景観とまちづくりサミットin京都文化となりわいの景観・地域づくり~重要文化的景観の課題と可能性~」と題して、学生発のシンポジウムを開催。第1部基調講演として文化庁文化財部記念物課文化的景観部門技官の鈴木地平氏、、熊本大学政策創造研究教育センター准教授の田中尚人氏、京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課文化財保護技師の石川祐一氏、龍谷大学文学部教授・里山学研究センター研究員の丸山徳次氏にご講演いただきました。
第2部としてパネルディスカッションを行い、京都市文化市民局地域自治推進室まちづくりアドバイザーの加藤ゆうこ氏にもパネリストとしてご参加いただき、「文化的景観の概念・制度」についての大枠での話と、「深草あるいは各地域を具体例としたまちづくり」についての具体的なテーマにおいて、フロアを交えて議論を行いました。


1.広島県福山市鞆の浦現地調査(第一回2009年4月25日~26日、第二回2009年8月30日~31日)

(1)第一回現地調査2009年4月25日~26日

実費での現地調査を予定し、経費削減のためETC割引を狙って土日で現地に向かいました。目的は、問題について本当のことを知るためでした。私たちは当初、鞆の浦は鯛網等、漁業で栄えた町であるという意識で調査に赴きました。

1日目は、鞆の浦訴訟原告のお一人である岡本純夫さんに、鞆町内の案内とヒアリングをお願いしました。


1時間半程、海の構造や町内の通り、町並み、神社・お寺等を、歴史の説明と共にご案内頂いた後、聞き取り調査では3時間半程かけて、鞆の浦の歴史や本事件の問題の所在、行政との関係等詳細にご説明頂きました。2日目は、鞆の浦訴訟原告団団長の大井幹雄さんに、ヒアリングをお願いしました。岡本さんと同じく、鞆の浦の歴史やこれまでの住民の生活や活動、行政との関係、問題の所在等を4時間程かけて詳細にご説明頂きました。その後、国の重要文化財、太田家住宅という歴史的商家内部のご案内を頂いて調査は終了しました。
この調査では、法律の問題、制度の問題は紙面で勉強できるとしても、本当の問題の所在や訴訟当事者の訴え、思い、地域をどのようなまちにしたいきたいと考えているのか、そして、被告行政との協力関係は如何、という訴訟の根本については現地でしか勉強できないのだということを学びました。そして、鞆の浦は歴史的な港町であること、だからこそ、奈良時代から様々な航海者の係留地として商業を中心に栄えた町であること、開発が行われて地域の歴史・文化や特徴が失われていく中で、地域の歴史・文化を色濃く残し、地域規模での生活が現存する鞆の浦は一周遅れの最先端であるとの考えがあること、大井さんは、海から見る鞆の浦が鞆の本来の姿であることを活かし、パーク・アンド・クルーズのまちづくりをしていきたい考えをお持ちであること等を学びました。

(2)第二回現地調査2009年8月30日~31日

二回目の現地調査は、被告行政側の調査をメインに考え、その他、裁決書では扱いに疑問が残った漁業権者の方々の調査、そして、NPOを立ち上げて鞆町の復興支援を行っている原告の方の活動の調査を行う目的で赴きました。


 1日目はまず、私たちの活動に関心を寄せて頂き、本調査に同行頂いた里山学研究センターの教授の方々へ鞆町内を案内して歩きました。そして、15時からはNPO法人


鞆まちづくり工房の代表、松居秀子さんにヒアリングを行いました。鞆まちづくり工房の活動について、また、行政との協力関係や松居秀子さんの目指す活動についてお聞きしました。松居さんは、今ある問題を順に解決していく努力をしているとして、人口減少によって問題となっている空き家の活用を通して「御舟宿いろは」を経営されていました。その後、16時30分からは、元漁民の子孫の方々にヒアリングを行いました。仮の免許差止訴訟の裁決書では、鞆港埋立ての計画が進む中、先の鞆の浦漁業協同組合の総会で、当港の漁業権者が持っていた浜や海の権利を放棄したものとして埋立て反対を主張する権利がないとされていましたが、その真実について調査する目的でした。2日目は、福山市役所土木部港湾河川課、鞆まちづくり課等の、本埋立て問題の福山市の関係課を集めて頂いてのヒアリングを2時間半程行いました。

 二回目の現地調査では、地域と住民の活動としてNPOという形での活動があり得るということ、現在の漁業の厳しい実態と、漁業権放棄の経緯、そして、鞆の浦という過疎地域の復興を目指す行政としては、観光業を支える景観に最善の配慮をしながら、交通という人口定着の要の問題についての解決を図ろうとしていること等を学びました。


2.東京研修~板橋区常盤台、文京区湯立坂銅御殿、国立市~(2009年10月24日~25日)

 私たち法学部生が大学で学んだ知識を活かし、地域に還元するには、まちづくりや行政政策はもちろんのこと、訴訟に関連した調査が適切だと考えています。東京研修は大きく三つの学習を目的として行いました。まず一つ目は、国立市の高層マンション訴訟です。当訴訟は日本で初めて景観利益に法的保護を与えました。鞆の浦一審判決は、この判例を引用して原告適格が認められました。二つ目は、現在、高層マンションの問題で係争中の常盤台です。鞆の浦の景観利益の原告適格が行政訴訟上認められたという解釈が、現在一審が審議中である常盤台の原告適格の解釈・判断に影響するか否かについて調査する目的になります。そして、三つ目は湯立坂にある銅御殿という国指定の重要文化財です。現在、重要文化財の隣りの土地に建設が始まっているマンションに対して係争中です。今後の社会における文化財保護の観点から、調査することを決めました。

 1日目は、午前中を訪れ、原告の島田晴子さん、米倉勉弁護士に常盤台一丁目・二丁目の案内を1時間程して頂き、その後、常盤台の係争状況についてヒアリングを行いました。午後からは、銅御殿の所有者、大谷利勝さん、その娘の大谷光陽子さんに1時間程銅御殿内をご案内頂いた後、係争状況について3時間程ヒアリングを行いました。2日目は、午前中から元原告川合智子さん、元原告の大西信也さんに国立市大学通り周辺のご案内をして頂き、午後からは訴訟後のまちづくりについて、原告代表石原一子さん、関口博市長も交えてヒアリングを行いました。

 東京研修では、国立市、常盤台ともに道路やロータリーに工夫をし、「車」中心ではなく「人」中心のまちづくりを進めているということが非常に印象的でした。特に、市民の活動によるまちづくりを支援しようとする国立市関口市長は、今後の市政方針として駅前ロータリーに駅舎を復活させ、車の通らない広場にする等検討しておられました。また、銅御殿は、長年、保存のために一般公開していなかったことから知名度は低かったが、近年公開を始め、その重要性が地域に広まりつつあるといいます。


3.京都研修(京都市景観政策課2009年11月18日、京都市景観・まちづくりセンター2009年11月24日、28日)

(1)京都市都市計画局都市景観部景観政策課でのヒアリング調査(11月18日)

現在まで研究・調査してきたことを、私たち龍谷大学生のフィールドである京都に、どのように活かしていくのかを考え、京都市の景観やまちづくりの政策を調査することを決め、景観政策課の岡田圭司係長にアポイントさせて頂いて、4時間程のヒアリング調査をお願いさせて頂きました。 景観政策課を訪れるに当たって、事前勉強としては「京都の景観」というパンフレットを事前に学び、それについての解説と、京都の政策方針や市民・業界との協力関係について質問をさせて頂きました。

京都市は、景観を重視するまちづくりに関して先駆的であり、いくつもの条例が細かい網の目のように張り巡らされていることから、高い建物は建てられにくいこと、また、それらの政策の先駆者であることから他県・他市とへのレクチャーも行っているとのことでした。そして、京都市のまちづくりは自然、特に山と共存することを目指し、その政策は古くから高さ制限をかけることを重視し、五山の送り火「大」の字をどこからでも見られるまちづくりを目指すことを考えているということ、今後は「車」中心ではなく「人」中心のまちづくりを行うことを考え、三条・四条通りの歩行者天国化(ただし、公共交通機関等は現状のまま)する案も挙がっているということ等教えて頂きました。

(2)財団法人京都景観・まちづくりセンターでのヒアリング調査(11月24日)

 京都は特に、行政以外の自治組織によるまちづくりが先駆的と考えられます。京都市景観・まちづくりセンターへは、行政である京都市と住民とをつなぐ役割を担う活動を調査するため訪れました。同センターでは、組織の概要と、同センターが行っている各種活動や支援制度等、また、市民や学生とのつながりについて、事業第一課長の中島吾郎さんらに2時間半程ヒアリングさせて頂きました。

「景観・まちづくりセンター」という景観を押し出した名称が、他府県にはない京都特有のものであること。まちづくりファンドを設立し、市民・事業者による寄付で運営を行っており、その費用で京町家の修繕や、歴史的建造物等の調査研究を行っている。また、景観・まちづくり大学等、市民に対しての周知に関しても努力を進めておられること、同センターへは市民が抱える暮らしに関しての疑問や、制度に関する疑問等が寄せられ、それに対して助言を行う形でまち全体に貢献していること等教えて頂き、これから私たちの目指すべきまちづくりについて議論を行いました。

(3)京のまちづくりセミナー 歩いて学ぶ京の水②―疏水を活かした伏見のまちづくり―(11月28日)

 住民が住みよい環境を求めて見出すアイディアを地域のまちづくりに活かすため、京都市景観・まちづくりセンターはアイディアの実現に向けて支援の場を用意しています。その支援策の一つとして、住民の方々自らまちの在り方を考え、その実行を試みる場、周知する場の提供として同センターが実施しているセミナーがあります。この日は京都環境計画研究所所長の西尾信廣さんのセミナーで、13時~16時半の前半は伏見の疏水利用の歴史と現在の講義、後半は実際に伏見の疏水を下りながら施設・設備等を現地見学しました。

 西尾さんは水辺空間を活かしたゆとりのある日常生活を理想とし、これからのまちづくりに伏見の疏水利用を復活させることを取り上げておられました。伏見の疏水はかつて、主に田畑に水を送るために利用させていたとされます。現在は1月~3月にかけて、疏水に投げ込まれたゴミの回収を行っておられるようで、将来その疏水に小型の舟を浮かべて、公共の物流・交通手段として疏水を利用したいというものでした。


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