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理工学部

丸山敦 研究室
和装本に漉きこまれた毛髪の科学分析で江戸時代の食環境を復元する。
毛髪のPIXE分析

2019.11.25毛髪のPIXE分析

理工学部 丸山敦 研究室

これまで10ヶ月にわたり何度も繰り返してきた毛髪採取と鑑定作業は、いよいよ佳境を迎えています。私たちの研究は、分析の段階に入りつつあります。

さて、私たちは、探究対象である江戸時代の「食生活」「食環境」を、毛髪の安定同位体分析とPIXE分析の2つのアプローチによって迫りたいと考えています。今回は、PIXE分析について紹介します。

PIXE分析とは、粒子線励起X線分析の略で、イオンビームを試料にぶつけることで発生するX線の特性から、色々な元素の含有量を推定できる分析です。複数の元素を、試料を非破壊的に定量できるところが大きな強みです。PIXE分析は、毛髪の分析経験が豊富な日本アイソトープ協会の二ツ川先生にご協力をお願いし、放射線医学総合研究所(千葉市)の機器を利用して及川先生に進めて頂いています。

PIXE分析は、1サンプルを分析するのにたくさんのお金と時間がかかるため、私たちが採取した約350サンプルのすべてを即座に分析することは難しい状況です。そこで、350サンプルの中で最も分析するべきサンプルは何なのかをゼミで何度も話し合い、まずは厳選した20サンプルから分析を依頼しました。

2019年11月12日、私たちが準備した毛髪がどのようにして分析されているのかを実際に拝見する機会を頂きました。分析機材は、イオンビームを加速する加速器とイオンビームを絞る部分とで構成された、とても大きなものでした。印象としては、機材一式のために建物が用意されているような大きさでした。巨大な機材で、細い髪の毛に100ミクロンの微細なビームを狙う様子は、サイズ感のキャップがとても印象的でした。

私たちの試料が分析されていく様子がリアルタイムでモニタに表示される様子をみていると、やはり独特の興奮感を覚えました。また、私たちの質問に対して二ツ川先生、及川先生が分析機器を前に丁寧に説明してくださり、論文などの文章では理解が難しい点も理解が深まりました。

今後はもう一つの分析である安定同位体分析の準備を進めつつ、PIXE分析の結果から得られた考察も進めていきたいと思っています。

木村 俊太郎(追手門学院高校卒業)