臨床宗教師研修

「臨床宗教師研修」の目的と意義
―2016年度カリキュラムについて―

龍谷大学大学院実践真宗学研究科では、2014年4月に東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座に創設された「臨床宗教師研修」に学び、上智大学グリーフケア研究所の協力を得て、2014年度から本学においても「臨床宗教師研修」を実施しています。

去る、2016年1月21日(木)新春シンポジウム『臨床宗教師研修の反省と新展開』を開催し、2016年度の出願要項を発表しました。詳細につきましては、以下のページをご覧ください。

1.臨床宗教師とは

人は誰しも、その時代の悲しみと共に生きています。
臨床宗教師研修は、東日本大震災の悲しみに寄り添う宗教者の社会実践と、ビハーラ活動の実績を踏まえて、2012年4月、東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座に誕生しました。
臨床宗教師は、日本版チャプレンであり、岡部健医師が提唱しました。臨床宗教師(interfaith chaplain)とは、病院、社会福祉施設、被災地などの公共空間において、宗教勧誘を目的とせず、相手の価値観、人生観、信仰を尊重し、生きる力を育む心のケアを実践する宗教者のことです。医療、社会福祉の専門職とチームを組みながら、宗教者として全存在をかけて、人々の苦悩や悲嘆に向きあい、そこから感じ取られるケア対象者の宗教性を尊重し、「スピリチュアルケア」と「宗教的ケア」を行うことを目指します。臨床宗教師の呼称は、仏教のビハーラ僧やキリスト教チャプレンを包み込み、宗教宗派を超えて協力する願いが込められています。

あそかビハーラ病院医療カンファレンスに臨床宗教師研修生が参加。
2014年6月


2.臨床宗教師研修開設の経緯

2012年4月、東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座において「臨床宗教師研修」が創設されました。
龍谷大学大学院実践真宗学研究科は、2012年、臨床実習と教学研究とを統合した教育研究を推進するため、「寄り添う」「伝わる」「聞き学ぶ」姿勢を明示しました。2013年、龍谷大学大学院実践真宗学研究科は、東北大学大学院の「臨床宗教師研修」を理解するため、仙台の東北大学大学院文学研究科 鈴木岩弓教授らを表敬訪問し、また、本学大学院実践真宗学研究科FD研究会に東北大学大学院 谷山洋三准教授を招いて「臨床宗教師研修の目的」を学び、実際に、臨床宗教師研修に参加してその意義を実感しました。
2013年秋、本研究科シンポジウムを開催した際、上智大学グリーフケア研究所 島薗進所長は「宗教的ケアは、宗教的な形があるから真心がこもっている。災害支援ボランティア活動など悲しみに寄り添うスピリチュアルケアは、宗教的な形がないところに宗教的なものがある」と教示いただきました。
こうした先生方のおかげにより、2014年、東北大学大学院実践宗教学寄附講座と連携し、龍谷大学大学院実践真宗学研究科「臨床宗教師研修」を開設させていただきました。関係大学ならびに病院施設協力者のご支援に心から感謝します。今後も、世界の諸大学に学び、臨床宗教教育を継続し、医療、社会福祉、被災地に必要とされる臨床宗教師を養成していきます。

3.臨床宗教師研修の具体的目標


2015年6月3日 南三陸町防災対策庁舎 追悼儀礼

臨床宗教師研修は、宗教者として全存在をかけて人々の苦悩や悲嘆に向き合い、そこから感じ取られるケア対象者の宗教性を尊重し、公共空間で実践可能な心のケアを、理論と臨床実習を通して学ぶことを目的としています。東北大学大学院に準拠して、龍谷大学大学院は五つの具体的目標を掲げています。

① 「傾聴」と「スピリチュアルケア」の能力向上。

② 「宗教間対話」「宗教協力」の能力向上。

③ 自らの死生観と人生観を養う。

④ 宗教者以外の諸機関との連携方法を学ぶ。

⑤ 幅広い「宗教的ケア」の提供方法を学ぶ。


2015年10月7日
国立広島原爆死没者追悼祈念館
被爆者講話 川本省三
小学校6年の時、被爆。家族全員亡くした。
黒い雨がなぜ降ったのか・・・・
孤児はどう生き抜いたのか・・・・
「こんな辛い目を他の誰にもさせたくない」
川本さんにいただいたお話しを胸に刻み、これから私たちが伝えます。

理論は、学内で開講される実践真宗学研究科の講義科目で学びます。また、必修の臨床実習科目である「臨床宗教師総合実習」では、約140時間の研修を設けています。臨床実習現場では、医師、看護師、臨床宗教師(ビハーラ僧)による講義と実習、宗教儀礼、グループワーク、ロールプレイ、会話記録検討(supervising)、実習ふりかえり(supervising)を重視します。

※詳細は、「■4.臨床宗教師研修 カリキュラム及び実習スケジュールについて」を参照のこと。

4.臨床宗教師研修 カリキュラム及び実習スケジュールについて

(1)臨床宗教師研修 履修カリキュラム(2年間)

  • ①必修科目:次の5科目16単位を修得すること。
  • ★「臨床宗教師研修」に特化した講義
  • 「臨床宗教師総合実習」通年集中8単位2回生配当
  • 「グリーフケア論研究」半期2単位2回生配当
  • 「ビハーラ・スピリチュアルケア論研究」半期2単位2回生配当
  • ★「臨床宗教師研修」の基盤となる講義
  • 「実践真宗学研究」半期2単位1回生配当
  • 「真宗人間論研究」半期2単位1回生配当
  • ②選択必修科目(推奨科目):
    次の「臨床宗教師研修」に関連した10科目を推奨科目とし、2科目4単位以上を修得すること。
  • 「真宗教義学研究」半期2単位1回生配当
  • 「現代宗教論研究」半期2単位1回生配当
  • 「宗教心理学研究」(宗教者間対話)半期2単位1回生配当
  • 「宗教教育学研究」半期2単位1回生配当
  • 「生命倫理論研究」半期2単位1回生配当
  • 「人権・平和論研究」半期2単位1回生配当
  • 「カウンセリング論研究」半期2単位2回生配当
  • 「地域・寺院活動論研究」半期2単位2回生配当(隔年開講)
  • 「臨床心理学研究」半期2単位1回生配当(隔年開講)
  • 「精神保健学研究」半期2単位1回生配当(隔年開講)

(2)「臨床宗教師総合実習」の概要

  • ①臨床実習は、全体実習と特別実習を行う。東日本大震災被災地、病院、社会福祉施設、ビハーラ関連施設を訪問し、研修教員、施設職員の指導にしたがって実習を積む。
  • ②特別講義、グリーフケア講座に参加し、学内外の有識者の経験と知見に学ぶ。
    特別講義 東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座連携など通年16回
    新設グリーフケア講座「悲しみを生き抜く力」前期8回・後期8回
    主催
    上智大学グリーフケア研究所
    龍谷大学人間・科学・宗教オープンリサーチセンター(CHSR)
  • ③事前研修・課題学習:事前に指示する資料図書、論文に基づいて学習する。
  • ④事後研修・ふりかえり学習:研修で学んだ知見、反省、課題を大学院指定「ふりかえりシート」にまとめる。この記録をもとに自己理解と実習先との交流とを深める。
  • ⑤会話記録検討会:自らの会話記録をグループワークで検証し、課題を知る。総合実習担当者の指導に従う。前期2回、後期1回、全体ふりかえり2回。

(3)2016年度 臨床宗教師総合実習 計画

  • 全体実習1 あそかビハーラ病院・ビハーラ本願寺での臨床実習
    場所 あそかビハーラ病院緩和ケア・ビハーラ本願寺
    2016年5月
  • 全体実習2 東日本大震災被災地での臨床実習
    場所 東北被災地 仙台市・南三陸町・気仙沼市
    2016年6月
  • 全体実習3 保育園・デイサービスセンター統合社会福祉施設での臨床実習
    場所 統合型社会福祉施設 橘保育園・橘デイサービスセンター 宮崎市
    2016年7月
  • 全体実習4 広島平和記念資料館研修とヒロシマ被爆者交流
    特別講義「被爆者講話 ヒロシマ原爆の真実」
    場所 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館
    2016年10月
  • 特別実習1 阪神淡路大震災遺族講話と交流
    場所 兵庫県神戸市
    2016年6月
  • 特別実習2 あそかビハーラ病院・ビハーラ本願寺での臨床実習
    場所 あそかビハーラ病院緩和ケア・ビハーラ本願寺
    2016年9月~12月
  • 特別実習3 NCC宗教研究所ドイツ人神学生との「宗教者間対話と交流」
    2016年10月
  • 特別実習4 神戸赤十字病院&阪神淡路大震災記念・人と防災未来センター
    「災害時における遺族への心のケア」
    場所 神戸赤十字病院、阪神・淡路大震災記念・人と防災未来センター
    2016年12月
  • 学内実施 特別講義
    年9回程の学内特別講義を実施予定。
  • 会話記録検討
    前期2回 、後期1回
  • 全体ふりかえり会
    ・全体ふりかえり1 2016年 7月
    ・全体ふりかえり2 2016年 12月

あそかビハーラ病院 大嶋健三郎院長とのグループワーク 2015年5月

2015年6月 南三陸町歌津総合支所におけるグリーフケア講座と被災者交流 合掌

南三陸町町長室 佐藤仁町長に感謝と支援と 2015年5月
2011年に寄贈した賢治直筆「雨ニモマケズ」が町長室にかけられていてうれしかった。

手をつないで歌う「しあわせ運べるように」
悲しみの中で支えあう力強さを感じ、みんな笑顔に

広島平和記念公園の下には、かぞえきれないほどの被爆者が眠っている・・・・。


※上記スケジュールは予定であり、変更を行う場合があります。

※上記以外に、特別実習4「京都府 京風カフェデモンク「きょうのモンク」自死遺族支援」、または、「社会福祉施設 常清の里での臨床実習」への参加を予定しています。

5.研修協力者・機関など

研修スタッフ

  • 鍋島直樹(龍谷大学文学部教授、臨床宗教師研修主任)
  • 杉岡孝紀(龍谷大学農学部教授、臨床宗教師研修副主任)
  • 那須英勝(龍谷大学文学部教授、比較思想論)
  • 葛野洋明(実践真宗学研究科教授、宗教間対話)
  • 黒川雅代子(龍谷大学短期大学部准教授 グリーフケア論)
  • 打本弘祐(龍谷大学文学部講師)

大学院協力者(アドバイザリーボード)

  • 鈴木岩弓(東北大学大学院文学研究科教授、宗教民俗学)
  • 谷山洋三(東北大学大学院文学研究科准教授、臨床死生学)
  • 高橋原(東北大学大学院文学研究科准教授、実践宗教学)
  • 島薗進(東京大学名誉教授、上智大学グリーフケア研究所所長、日本臨床宗教師会会長、宗教学)

施設協力者

  • 大嶋健三郎(あそかビハーラ病院院長・緩和ケア医)
  • 新堀いづみ(同外来看護及び関連事業連携室室長・看護師)
  • 花岡尚樹(同ビハーラ室長・ビハーラ僧)、山本成樹(同ビハーラ僧)
  • 弘中信厚(橘保育園園長・橘デイサービスセンター長)

日本臨床宗教師会

  • 金田諦應(カフェデモンク主宰、東北大学心の相談室理事)
  • 髙橋悦堂(臨床宗教師、曹洞宗僧侶)
  • 森田敬史(長岡西病院ビハーラ僧)
  • 堀靖史(日本臨床宗教師会山口副支部長) ほか。

以上、敬称略。

6.2016年度「臨床宗教師研修」出願要項

「臨床宗教師研修」の出願要項は、以下のとおりです。

(1)定員

5名から10名。

(2)出願資格及び受講許可について

【出願資格】

信徒の相談に応じる立場にある宗教者(僧侶、神父、牧師など)。あわせて、次の①~③のいずれかに該当し、④⑤に賛同・遵守する者。

  • ①龍谷大学大学院実践真宗学研究科に在籍する者(2年生以上)
  • ②龍谷大学大学院実践真宗学研究科を修了した者(特別専攻生・修了生)
  • ③大学卒業者で大学院生と同等の資質があると実践真宗学研究科が認める者(社会人)
  • ④実践真宗学研究科の教育理念・目的を理解し賛同する者
  • ⑤臨床宗教師倫理綱領を遵守する者
    • 【受講許可について】
    • Ⅰ.受講年度に在学する実践真宗学研究科生(2年生以上)(2014年度から)
      • 事前学習レポート提出を求め、内容を精査して当該研究科委員会において受講の可否を判定する。
      • 受講可否の結果は、文学部教務課掲示板で発表する。受講許可された院生は、必ず受講登録するものとする。
    • Ⅱ.実践真宗学研究科特別専攻生・修了生(修了見込者を含む)(2014年度から)
      • 事前学習レポート提出を求め、内容を精査して当該研究科委員会において受講の可否を判定する。
      • 受講可否の結果は、文学部教務課掲示板で発表するとともに、希望する住所に郵送で通知する。
      • 受講許可された者※は、3月下旬に出願が開始される「科目等履修生」として手続きをする。
    • Ⅲ.社会人(2015年度から募集開始)
      • 事前学習レポート提出と面接への出席を求め、内容を精査して当該研究科委員会において受講の可否を判定する。
      • 受講可否の結果は、文学部教務課掲示板で発表するとともに、希望する住所に郵送で通知する。
      • 受講許可された者※は、3月下旬に出願が開始される「科目等履修生」として手続きをする。

※臨床宗教師研修の審査において受講許可となった場合でも、科目等履修生制度において受講許可がされなかった場合、当該年度の受講は不可とします。

(3)臨床宗教師研修受講に係る経費

  • ①交通費・宿泊費:実費負担。
  • ②レンタカー代(ガソリン代等を含む)・通行料:実費負担。
  • ③講師謝礼・会場借用料:大学負担
  • ④科目等履修料(審査料・許可料・履修料)出願要項記載どおり

(4)出願書類

所定の「履歴書」と「臨床宗教師研修申込書」に必要事項を記入し、以下の「事前学習レポート」とともに提出すること。

  • ★事前学習レポート
  • ①参加動機
    これまで/これからの自分自身の「臨床宗教師」としての活動をふまえて、「研修プログラム」に参加する動機や、研修で特に学びたいことについて1,000字程度のレポートを提出する。
  • ②生 育 歴
    出生から現在に至るまで、自分の人生に影響を与えた出来事について、その時の思いを含めて5,000字程度で記述する。さらに、記述して気づいたことや感想を800字程度にまとめ、800字程度のレポートだけを提出する。(5,000字程度のレポートは研修が終わるまで自分で保管する。)
  • ③人 生 観
    自分自身の人生観、死生観、信仰について、影響を受けた人物や書物、出来事などを含めて2,000字程度で記述する。さらに、記述して気づいたことや感想を800字程度にまとめ、800字程度のレポートだけを提出する。(2,000字程度のレポートは研修が終わるまで自分で保管する。)

※履歴書、臨床宗教師研修申込書については、「■10.出願書類ダウンロード」において入手いただけます。必ず、上述ページよりダウンロードのうえ、所定の書類をご利用ください。

(5)提出先

龍谷大学文学部教務課 臨床宗教師研修係
〒600-8268
京都市下京区七条通大宮東入大工町125番地の1
TEL: 075-343-3317 FAX: 075-343-4302

(6)スケジュール

  • 出願期間
    2016年2月1日(月)~2月15日(月)(必着)
    ※簡易書留の郵送に限る。
  • 書類審査
    2016年2月17日(水)~2月18日(火)
  • 面  接
    2016年2月24日(水)13:30~15:00
  • 合格発表
    2016年3月14日(月)

7.修了証の授与

臨床宗教師研修」の修了者には、龍谷大学大学院実践真宗学研究科より、「臨床宗教師研修修了証」を授与します。

8.「臨床宗教師修了証」授与者の修了後について

この「臨床宗教師研修」は、参加者自身が世界の悲しみの現実を知り、自分自身を見つめ直すための研修です。応募要件を「信徒の相談に応じる立場にある宗教者(僧侶、神父、牧師など)」と定めているように、修了後の就職先確定や資格取得のために行われるものではありません。「臨床宗教師研修」修了によって、自らの宗教者としての課題を見つけ、現場に戻って生き生きと活動できるようになることが本研修の願いです。
なお、龍谷大学大学院実践真宗学研究科における臨床宗教師研修では、2014年度第1期修了生11名、2015年度第2期修了生11名、臨床宗教師認定3名、合計25名(2015年度現在)がいます。研修生は、社会人応募枠を含めて、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、真宗高田派、浄土宗僧侶が共に研修を重ねています。本研究科臨床宗教師研修修了生の中には、岐阜県沼口病院臨床宗教師、大阪府社会福祉法人慶徳会常清の里生活相談員(臨床宗教師)、大阪市職員(社会福祉担当)、大阪市グループホームさくら北畠職員、岐阜県犯罪遺族の会、山口県緩和ケア病棟、立花病院緩和ケア病棟傾聴ボランティアなどとして活躍しているものがいます。

9.フォローアップ研修について

東北大学大学院実践宗教学寄附講座主催「臨床宗教師フォローアップ研修」に参加し、日本臨床宗教師会において研修をつづけていきます。また、宗派宗教を問わず、「浄土真宗本願寺派ビハーラ活動養成研修会」を受講することが可能です。さらに「あそかビハーラ緩和ケアレクチャー」(主催 あそかビハーラ病院 会場 浄土真宗本願寺派聞法会館)、滋賀医科大学医学部生との合同研修が開催されます。

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