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2018.11.02

第5回公開研究会「性暴力・セクシュアルハラスメントを考えるために――性暴力の顕在化・概念化・犯罪化」を開催【犯罪学研究センター】

セクハラ:誕生から現在まで

2018年10月27日、第5回公開研究会「性暴力・セクシュアルハラスメントを考えるために――性暴力の顕在化・概念化・犯罪化」を、本学深草学舎 紫光館で開催しました。
企画者である牧野雅子(犯罪学研究センター博士研究員)がモデレーターを務め、今回は、日本におけるセクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラ)の歴史や問題点をテーマに、牟田和恵・大阪大学大学院人間科学研究科教授をゲストに迎えました。


牟田和恵・大阪大学大学院人間科学研究科教授

牟田和恵・大阪大学大学院人間科学研究科教授


社会学・ジェンダー論が専門の牟田教授は、研究、実践両面において、セクハラ問題の第一人者です。日本で初めてのセクハラ裁判となった「福岡セクハラ裁判」に支援者として深く関わり、1989年に「セクハラ」が流行語となった際の立役者の一人でもあります。
女性が職場で性的な嫌がらせを受けることが日常茶飯事で、それが問題であるという認識すらなかった時代に、一人の当事者の声に呼応して、他の女性運動とも連携しながらセクハラを社会問題として認知させるに至るまでの牟田教授の報告は、性暴力に抗する女性運動当事者の証言としても、貴重なものでした。
職場においてセクハラ防止対策が取られている(はずの)現在でも、本年4月の財務省のセクハラ事件やそれに続く関係者のコメント、被害者バッシングに分かるように、日本のセクハラ認識には大きな問題があります。その原因として、牟田教授は、日本ではセクハラが性差別だという認識が希薄であること上げ、その状況を改善するためには、セクハラを防止するための法整備や、ジェンダー教育が必要だと主張します。

「福岡セクハラ裁判」をはじめとして、性暴力・セクハラが「社会の問題」として認知される経緯には、「勇気ある被害者の告発」と、それに共感する支援者による「運動」がありました。性暴力が可視化され、被害者が適切な保護を受けるためには、被害当事者が声を上げられる社会であることが重要です。当事者の被害申告を躊躇わせるような、被害者の落ち度を責め、人格を非難するような声も聞かれる中、一人ひとりが、この社会の構成員としてどのように振る舞うのかが問われているとも言えます。

質疑応答では、セクハラ問題のみならず、女性言葉の問題や、SNSによる被害者バッシングへの対処方法にも議論が及びました。

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本公開研究会は、犯罪予防と対人支援を基軸とする「龍谷・犯罪学」の構築を目指す、龍谷大学 犯罪学研究センターの共催で開催しています。

いずれも参加費無料・事前申込不要。どなたでも参加いただけます。
次回は11月17日(土)14:00-16:00 開催予定です。 【>>詳細】
・テーマ:「セクシュアル・ハラスメントへの法的対応の問題点――被害者責任論も視野に」
・登壇者:角田由紀子 弁護士



※この企画は、JSPS科研費 平成28ー32年度 基盤研究(C) 16K02033<研究課題「近代日本における『性犯罪』抑止政策と法の批判的検討」、研究代表者 牧野雅子(犯罪学研究センター博士研究員)>の一環として実施しています。