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2018.11.09

「司法のIT化」をテーマに法情報公開研究会を開催【犯罪学研究センター】

裁判手続等のIT化に向けて、日本の現状とこれからを検討

2018年11月3日、龍谷大学法情報研究会では「司法のIT化」をテーマに公開研究会を本学深草学舎 紫光館4階で開催し、約30名の方が参加しました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-2552.html

今回の研究会では、杉本純子・日本大学法学部准教授をゲストに迎え、「司法のIT化:『裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ』の概要及び今後の進展・課題について」発表いただきました。



司法のIT化は世界的に関心が高いところですが、日本の裁判手続の現状は決して先進的とは言えない状況です。世界銀行による調査・発表資料(“A World Bank Group Flagship Report: Doing Business 2018”)によると、「契約執行(裁判手続)」における日本のランキングはOECD順位24位(35ヶ国中)、世界順位51位(190ヶ国中)と、非常に低い評価です。

2017年6月の閣議決定「未来投資戦略2017」を受けて検討会が設置・審議され、民事裁判手続等のIT化に関するとりまとめ案が2018年3月に公表されました。


杉本純子・日本大学法学部准教授

杉本純子・日本大学法学部准教授


杉本准教授は内閣官房に発足した「裁判手続等のIT化検討会」の委員を務め、日本における司法のIT化を牽引する一人です。今回の研究会では、現在考えられている制度設計や、裁判手続のIT化における3つのe(e提出、e事件管理、e法廷)等の検討会案についての概要を発表いただきました。また、IT化実現への課題としては、(1)訴状や判決書などの電子送達の在り方の検討、(2)本人訴訟への対策、(3)裁判の公開原則に留意した記録の公開の在り方の検討等が挙げられ、この分野における先進国と比較しながら、日本ではどのような点に留意した検討が必要なのか具体化されました。


杉本准教授と石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長

杉本准教授と石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長


研究会後半では、杉本教授の発表を受けてフロア・ディスカッションが行われました。
参加者からは「世界的な潮流としてe法廷は刑事裁判で多く用いられているが、日本における司法のIT化はなぜ民事の分野から行われたのか?※1」、「司法のIT化の問題は裁判記録の公開に関する問題ともリンクしている。今後日本においてもe法廷化が進むことで、裁判記録の公開・非公開いずれの方向にも進む可能性を秘めているのではないか」といった意見が寄せられました。


福島至 本学法学部教授、矯正・保護総合センター センター長

福島至 本学法学部教授、矯正・保護総合センター センター長


裁判記録の公開に関しては、既にe法廷化が進んでいる各国の事例を交えながら「当事者のプライバシーに十分な配慮が必要である」とした上で、「日本における司法のIT化に伴う情報公開の在り方についてさらなる検討が必要」と杉本准教授は締めくくりました。


2009年から始まった裁判員制度により、刑事裁判はもはや遠い出来事、他人事ではすまされない時代です。今回の研究会を通じて、司法のIT化は当事者だけの関心事ではなく、第三者にとっても身近で重要な問題であることが再認識されました。


【補注】
※1:1996年に民事裁判の弁論準備手続等に「TV会議システム」、「電話会議システム」が導入され、2004年に民事訴訟法(民訴132条の10)が改正された。


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今回の公開研究会は、龍谷大学 犯罪学研究センターの支援を受けて実施しています。

現在、犯罪学研究センターではさまざまな視点から研究活動を進めており、その1つである「法教育・法情報」ユニットでは今回の公開研究会への参加をはじめ、裁判員裁判時代の法情報・法教育の理論の構築とその実践を目的としています。