Need Help?

News

ニュース

2019.02.01

第8回 龍谷犯罪学セミナー(Ryukoku Criminology in English)レポート【犯罪学研究センター】

“Corrections and Rehabilitation in Japan” 日本の矯正・保護

龍谷大学 犯罪学研究センターは、犯罪予防と対人支援を基軸とする「龍谷・犯罪学」を構築し、日本国内だけでなく、広く世界にアピールしていくことを目標に掲げています。
犯罪学研究センターでは、現在までの研究成果を踏まえて英語でのトライアル授業を2018年10月より2019年1月まで8日程(全15コマ)にわたって開催してきました。
この授業は、欧米諸国では「犯罪学部」として学問分野が確立されている領域を、世界で最も安心・安全とされる日本社会の中で独自に捉え直す試みで、新たなグローバル・スタンダードとしての「龍谷・犯罪学」を目指して、全回英語で実施しています。
龍谷犯罪学セミナー(Ryukoku Criminology in English)【>>実施詳細】

2019年1月26日(土曜)、本学深草キャンパス至心館1階にて、第8回「Ryukoku Criminology in English –Let’s study the Criminal Justice System in the secure and safe society-」を開催しました。今回が最終回で、講師は本学法学部の石塚伸一教授(犯罪学研究センター代表)でした。テーマは「Corrections and Rehabilitation in Japan」で、日本の刑罰と社会復帰についておもに死刑制度を中心にその概要が紹介されました。

基本情報:
Ryukoku Criminology in English –Let’s study the Criminal Justice System in the secure and safe society-
Jan 26th (Sat) <1 lectures (13:15-14:45)>
Shinichi Ishizuka (Director of Criminology Research Center / Professor of the Faculty of Law at Ryukoku University)
“Corrections and Rehabilitation in Japan”



2018年7月、オウム真理教信者らによる一連の事案(弁護士一家殺害、信者家族殺害、長野県松本市サリン散布、東京地下鉄サリン散布)に関与した、松本智津夫元死刑囚をふくむ13名に対する死刑が執行されました(7月6日に7名、7月26日に6名)。これは一度に多くの執行が行われた非常に稀なケースですが、明治時代にも類似したケースがありました。1910年に発覚した明治天皇暗殺未遂事件、いわゆる「大逆事件」です。本件は、社会主義者、無政府主義者ら26名が明治天皇と皇太子の暗殺を企てたものの未遂に終わったとされた事案で、1911年1月18日、24名に死刑(このうち12名は無期懲役に減刑)、2名に無期懲役刑が下されました。その結果、1911年1月24日に11名、翌25日に1名に死刑が執行されました。
日本の刑法における最高刑は死刑です。それでは、死刑も含めた日本の刑罰はどのようなものでしょうか。日本の刑法では、死刑、懲役刑、禁錮刑、拘留刑、罰金刑、科料刑という刑罰が定められています。死刑は、刑法11条で「死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する」と定められており、執行されるまでは拘置所に拘置されます。また懲役刑には有期刑と無期刑があり、有期刑の期間は、1か月以上20年未満で、刑期中は決められた刑務作業をすることが定められています(禁錮刑にも有期刑と無期刑があり、有期刑は1か月以上20年未満、作業義務はありません)。日本では以上のような刑罰がとられていますが、ここで日本国憲法の条文をみると第36条に「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と定められています。これは戦後、GHQによる憲法草案の第34条「公務員ニ依ル拷問ハ絶対ニ之ヲ禁ス」、第35条「過大ナル保釈金ヲ要求スべカラス又残虐若ハ異常ナル刑罰ヲ科スべカラス」が元になっています。


石塚伸一教授(本学法学部教授・犯罪学研究センター代表)

石塚伸一教授(本学法学部教授・犯罪学研究センター代表)


統計的にみると日本における死刑、無期懲役判決の数は2003年から2005年ころにかけて急激に増加し、2006年にピークを迎えると、近年は急激に減少しています。これは刑事司法における「殺人狂時代(Monsieur Verdoux)」であるといえます。しかしながら死刑囚、無期懲役囚の数は刑事施設収容者の全体数からみると極めて多い状態です。
 刑事施設収容者は特性・犯罪傾向に応じて分類され、分類に応じた刑事施設に収容されます。刑期を終えると刑事施設から釈放されますが、それ以外に仮釈放という制度があります。無期懲役囚は法律上、刑期を10年以上経過すると仮釈放の対象者となりますが、実際は30年以上経過しないと仮釈放の許可が下りません。また無期懲役囚は釈放されても(恩赦がなければ)生涯、保護観察という状態です。実際の統計をみると近年の仮釈放者数は非常に少なく、2015年末時点の無期懲役囚の数は1835名、仮釈放が認められたのはわずか9名でした。また無期懲役囚の高齢化もすすんでいるというのが現状です。こうした現状から、今後は無期懲役囚に対する大幅な処遇スキームの改革が必要になると考えられます。

本講義の終了後のアンケートでは「私の仕事に関する内容もあり、興味を持って聞かせていただきました。こうした形でセミナーを受けたことが初めてでしたので、非常に楽しかったです。」「今回初めて参加しました。 全部参加できず残念です。次回を楽しみにしております。」などご意見をいただきました。

2018年10月よりスタートした本企画では全8日程回(15コマ)、毎回犯罪学にかかわる様々な研究や実情について紹介してまいりました。犯罪学について英語で講義するという日本初の試みでしたが、多くの方にご参加いただくことができ、今後の当センターの活動にとりましても大変有意義な機会となりました。ご参加いただいた皆様、講師の先生方、本当にありがとうございました。