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2019.10.04

第9回AIDS文化フォーラムin京都プレイベント「これからの依存症予防教育」を開催【犯罪学研究センター】

「これからの依存症予防教育」をテーマに、日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニア・松本俊彦氏の講演イベントを実施

2019年9月29日(日)、深草キャンパス紫光館4階法廷教室にて、精神科医の松本俊彦氏を講師に迎え「これからの依存症予防教育」をテーマに講演していただきました。(主催:AIDS文化フォーラムin京都/共催:龍谷大学 犯罪学研究センター
公開で行われた当講演会には、学生や一般の方を合わせて約150名が参加しました。

今回のイベントは、10月5日(土)・6日(日)に本学深草キャンパスで開催される「第9回AIDS文化フォーラムin京都」のプレイベントとして行われました。AIDS文化フォーラムは、1994年に横浜で開催された「第10回国際エイズ会議」をきっかけに発足しました。以降、全国各地でHIV/AIDSに取り組む団体・個人の発表・交流の場として、また、多くの市民、特に若者に向けた啓発の場として定着しています。

【イベント概要>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-3930.html
【NEWS Release>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-4115.html


講演に先立ち、高畑吉博氏(AIDS文化フォーラムin京都 幹事)と石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長、ATA-net代表)が趣旨説明と講師の紹介を行いました。


高畑吉博 氏(AIDS文化フォーラムin京都 幹事)

高畑吉博 氏(AIDS文化フォーラムin京都 幹事)


石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長、ATA-net代表)

石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長、ATA-net代表)

小中学校・高等学校では薬物乱用防止教育が行われていますが、多くが『ダメ。ゼッタイ。』の視点での防止教育であり、薬物に手を出してしまった若者やその家族を地域から孤立させ、医療や福祉につながる道を閉ざしかねず、地域社会の回復力を逓減させていきます。
アルコールや薬物、ギャンブルなどのアディクションの問題状況を克服するためには、嗜癖・嗜虐行動の原因やメカニズムについての正確な知識をもち、当事者や家族の回復を適切に支援する支援者を増やし、互いに協力し合う必要があります。

日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本氏は、講演の中で「ダメ。ゼッタイ。」では防ぎきれない若者の薬物依存の背景について解説しました。
松本氏は「ダメ。ゼッタイ。」や「薬物辞めますか?人間辞めますか?」などのコピーから連想される違法薬物使用者が、実態からはかけ離れていることを説明し、日本の予防教育における想像力の欠如を指摘しました。

また、違法薬物を使用するリスクのある子どもたちが抱える背景について、「10代の子どもたちの中には、自傷行為の経験者が1割存在しており、男女ともに自尊心が低く、飲酒や喫煙を早くから始めており、特に女子は摂食障害の経験があります。この中には、違法薬物の誘いを受けた子どもたちも多いです。つまり、違法薬物使用のリスクが高いということです。」と説明し、「私が薬物乱用防止の講演を学校で行なった際、自傷行為の経験がない子どもたちは、大人たちが満足する感想を書きます。しかし、自傷行為の経験のある1割の子どもたちは『自分を傷つけるだけで人を傷つけるわけではないから、違法薬物を使いたい人は使えばいいと思う』といったような感想を書きます。単なる薬物乱用防止の講演はこの1割の子どもたちには全く響かないのです。」と学校現場における薬物乱用防止教育の課題を明らかにしました。

つづいて松本氏は、現在の薬物乱用防止教育における「ダメ。、ゼッタイ。」のコピーのモデルは、国連が掲げた「Yes to life, No to Drugs.」であると指摘した上で、人生に「Yes」と言えない人たちに、どのようなサポートが必要なのかを考えるべきであると述べました。現在の薬物予防においては、「人」の問題ではなく薬という「モノ」の管理の問題になってしまっています。痛みの抱えた人の支援をどうするかを、今後考えねばなりません。


松本俊彦 氏(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部 部長)

松本俊彦 氏(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部 部長)


松本俊彦 氏による講演のようす

松本俊彦 氏による講演のようす

後半は、「薬物の予防について」というテーマで、課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”*1を行いました。“えんたく”とは、アディクション当事者(嗜癖・嗜虐行動のある人)の主体性をもとに、当事者をとりまく課題をめぐる情報をもつ多様なステークホルダーと参加者が集まり、話し合いを通じて課題を共有し(あるいは課題の解決を目指し)、緩やかなネットワークを構築していく話し合いの場を指します。


今回は、はじめにセンターテーブルに石塚教授や松本氏をはじめ、木津川ダルク代表や公認心理師・依存者家族・高校教諭など様々な立場の方が集まって「薬物使用のきっかけと背景となる家庭や社会の事情」や「周囲の気づきや関わり方」などについて語り合い、その周りをオーディンエンスが取り囲んで個々の話からどのような問題があるのかを共有しました。


課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”のようす

課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”のようす


石塚教授がファシリテーターとなり課題の共有を行う

石塚教授がファシリテーターとなり課題の共有を行う

つづいて、オーディエンスにも3人1組のグループになって「薬物乱用の予防について」をテーマにディスカッションをしてもらい、そこから出た課題を紙にまとめて、石塚教授の司会のもとへ共有しました。
(※下記の画像はオーディエンスから寄せられた紙の一部)



○今回のイベントは、10月5 日(土)・6日(日)に本学深草キャンパスで開催される「第9回AIDS文化フォーラムin京都」のプレイベントです。
10月6日(日)午後には今回の企画メンバーが中心となり、田代まさし氏(日本ダルク)を招いたワークショップの開催を予定しています。
>>第9回AIDS文化フォーラムin京都 プログラムページ

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補注:
*1 “課題共有型(課題解決指向型)円卓会議“えんたく”:
“えんたく”は、依存問題の解決に際してどのような問題や課題があるかの共有を目的としています。アディクション(嗜癖・嗜虐)からの回復には、当事者の主体性を尊重し、回復を支える様々な人が集まり、課題を共有し解決につなげるためのゆるやかなネットワークを構築していく話し合いの「場」が必要です。
ATA-net(代表・石塚伸一)では、この「課題共有型(課題解決指向型)円卓会議」を「えんたく」と名づけ、さまざまなアディクション問題解決に役立てることを目指しています。
https://ata-net.jp/