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2019.10.08

【犯罪学CaféTalk】武田 俊信教授(本学文学部/犯罪学研究センター 司法心理学ユニット長)

犯罪学研究センター(CrimRC)の研究活動に携わる研究者について、気軽に知っていただくコーナー「犯罪学CaféTalk」。研究の世界に馴染みのない方も、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非読んでほしい内容です。
今回は、武田 俊信教授(本学文学部/犯罪学研究センター「司法心理学」ユニット長)に尋ねました。
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Q1.武田先生が現在取り組まれている研究とは?

「私は成人のADHD(※1)を中心に臨床研究しています。研究のツールとしてスクリーニング(※2)尺度などのツールを作成します。くわえて、実際に日常生活において、どのような支障があるのかといったことを調査できる尺度も作成しています。例えば片付けとか、忘れ物があるかとか、そういった生活の支障、あるいは家庭内での状況、家族の変化ですね。あと職場でうまくやっているかというようなことです。


今は成人のADHD用の尺度の作成を大体終えたので、次は本人にどうやって介入するかという段階に入りました。きちんとしたツールがあると、介入前と介入後でどういった変化があるかを見ることができ、介入の有効性が確かめられます」
※1 ADHD(Attention-deficit hyperactivity disorder):注意欠如・多動症
※2 スクリーニング:集団から、目的とする疾患に関する発症者や発症が予測される人を選別すること

Q2.研究のために、どのような調査をしていますか?
「質問紙が主ですが、例外的に、有名なアニメキャラクターをテーマにしたら皆に親しみがあるかなと思い、サザエさんの行動を題材として、ADHDについて学生さんにお話したことがあります。この調査では、『おっちょこちょい』と言われる人と、ADHDと言われる人がどう違うのかということを示しました。確かにサザエさんはおっちょこちょいでうっかり間違いが多いですが、主婦として何とかやっていけているわけです。一方で彼女はケアレスミスが多少なりともあるので、スペクトラムの真ん中ぐらいにいるという言い方もできるかもしれません。全然症状がない人から、典型的な人まで、いわゆる定型発達(※3)から障害(症)レベルの状態が断絶なく連なっているんだよということを、発表しました。」
※3 定型発達:発達障害でない人々(あるいはそのような状態)を意味する用語


Q3.現在の臨床研究は、将来どのようなことに役立つと思いますか?


「“臨床”とつく学科にいるからには、日常生活に支障がある人たちの大変さ、困難な点を改善していきたいですね。一般社会、特に企業がケアレスミスをせず、コミュニケーションに長けた人を求めているため、これらを苦手とする人は困った目にあっています。そのような困難を抱えた人たちがどうやって生き抜いていくかを、一緒に考えていきたいと思っています。

同時に、社会においてもダイバーシティを見据えた個々人の多様性を認めていくような流れを作ることが大切です。今後スティグマ(※4)なども扱い、本人や周りの人への介入だけではなく、社会通念を変えていくという方向性も併せてやっていけたらいいなと考えています。」
※4 スティグマ:他者や社会集団によって個人に押し付けられた負の表象・烙印。


Q4.研究をされる意味、意義とは何ですか?
「自分を試すことですね。そして、研究の結果として、社会や将来の世代に貢献できるというのが魅力的だなと思います。私は主に英語の論文を書いているのですが、その論文を専門雑誌に投稿すると、日本の研究者なんか全く知らないようなその道のエキスパートたちが私の論文を評価するのです。論文の内容そのものによって、見ず知らずの海外の方にも評価されうる点が、私にとっての研究の醍醐味です。」



武田 俊信(たけだ としのぶ)
本学文学部教授・犯罪学研究センター「司法心理学」ユニット長 
<プロフィール>
本学文学部・臨床心理学科教授。研究分野は精神医学、発達障害で、現在は成人期のADHDの研究が中心。また医療施設で発達障害専門外来の精神科医師として診療も行なう。
【>>ユニット長インタビュー記事】