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2019.10.24

龍谷大学法学会 特別講演「自由剥奪処分の枠組みにおける身体拘束の法的要請」を開催【犯罪学研究センター協力】

ドイツにおける身体拘束方法・基準の厳格化。その課題とは?

2019年10月7日、「龍谷大学法学会 特別講演」を本学深草キャンパス至心館で開催し、本学の法学部の教員・学生を中心にあわせて約15名が参加しました(犯罪学研究センター協力)。

今回の研究会では、メラニー・シュトイアー氏(ドイツ・ゲッティンゲン大学学術助手)による研究報告が行われました。シュトイアー氏は、医事法の研究者であり、ドイツ国内では弁護士としても活動されています。テーマは「自由剥奪処分の枠組みにおける身体拘束の法的要請―2018年7月24日の連邦憲法裁判所“身体拘束判決”とその影響」でした。


メラニー・シュトイアー氏(ドイツ・ゲッティンゲン大学学術助手)

メラニー・シュトイアー氏(ドイツ・ゲッティンゲン大学学術助手)


龍谷大学法学会 特別講演のようす

龍谷大学法学会 特別講演のようす

ドイツでは、病院や社会福祉施設において、患者や入所者に対する身体拘束による事故が発生し、施設内での身体拘束が社会問題となりました。2018年7月24日連邦憲法裁判所は、精神病者の強制収容について、バイエルン州およびバーデン・ヴュルテンベルク州の法律は、裁判官による許可なく身体拘束を容認している点で違憲であると判断しました。これによって、あらゆる自由剥奪は裁判所の厳格な審査を原則として受けなければならないことが明言されました。また身体拘束の方法や時間、書面手続きなどについて法的要請が示されました。本判決は、基本的には歓迎されましたが、裁判所が医師の勧告を信頼することが多いため、身体拘束の要請が棄却されることはめったにないこと、30分未満の自由剥奪には裁判官の同意が不必要であること、例外事項が明示的に規定されていないことなどについては批判がありました。本判決は2019年6月に「自由剥奪の枠組みにおける身体拘束の際の当事者の権利強化に関する法律」として具体化され、身体拘束に関する法的要件が創設されました。本判決は基本的に評価できると考えられており、法律は5年の見直し期間が設けられているものの、今後の課題として検討するための一定の法的規制となりえるということでした。



終了後は、参加者からの質疑が行われました。薬物依存回復施設での身体拘束の現状,薬物投与や保護室の利用など身体拘束によらない自由剥奪の現状と課題などについて活発な議論が行われ、有意義な機会となりました。