Need Help?

News

ニュース

2019.11.20

公開研修会「“再犯防止と社会復帰の現状と課題~マザーハウスと語ろう~”」を開催【犯罪学研究センター協力】

社会復帰に向けて必要な「つながり」とは?

2019年11月2日(土)、龍谷大学 犯罪学研究センターは、深草キャンパス紫光館4階法廷教室において開催された「公開研修会『再犯防止と社会復帰の現状と課題~マザーハウスと語ろう~』」に協力しました。
主催の一般社団法人 京都社会福祉会は、「NPO法人マザーハウス*1で社会復帰に取り組む元受刑者のみなさんと、更生保護の活動に携わる専門職員とが意見交流を行い、社会復帰を阻む厳しい実態を学び、かつ、それを克服する具体的方法を対話を通じて考える」という趣旨のもと本研修会を企画・実施しました。50名を超える参加者が集まり、盛会となりました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4292.html


匠輝雄氏(京都社会福祉会 司法と福祉委員会・委員長)

匠輝雄氏(京都社会福祉会 司法と福祉委員会・委員長)


阿部寛氏(京都社会福祉会・会員)

阿部寛氏(京都社会福祉会・会員)

まず、司会の阿部寛氏(京都社会福祉会・会員)が本研究会の趣旨説明をし、つづいて、主催団体を代表して 匠輝雄氏(京都社会福祉会 司法と福祉委員会・委員長)が開会の挨拶をしました。
研修会前半では、APS研究会(After Prison Supports)を代表して石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センター長・ATA-net代表)からAPS研究会の活動及び長期受刑者の現状などについて説明がありました。石塚教授は「刑務所を出てきたということは、法律上の責任を果たし義務を終えたということであるが、『犯罪者』というスティグマを付与されるということが往々にして存在する。元受刑者たちが安心して社会生活を送れるようにするために、考えなければならないことがある」と述べました。次に、五十嵐弘志氏(NPO法人マザーハウス・理事長)からマザーハウスの活動についての報告とスタッフの紹介がありました。ついで、マザーハウスのメンバーが「逮捕に至るまでの生活」や「出所後、社会の中で生きていく上で困難なこと」などについて語りました。


登壇者(マザーハウスのメンバー 石塚伸一教授 匠輝雄氏)

登壇者(マザーハウスのメンバー 石塚伸一教授 匠輝雄氏)


研修会後半は、参加者全員が参加し、マザーハウスで実際に行われているミーティングスタイルで“語り合い”が実施されました。マザーハウスのメンバーが「家庭の中での嫌なこと」というテーマを提案。参加者が6人1組になって“語り合い”の時間が持たれました。多くのグループから寄せられたコメントは、「親子関係」についてでした。「ずっと父親との関係が良くなかった中、刑務所に入ることになった。…出所後、何年かして父親と会話をする機会があった…この時初めて父親に『わたしも悪かった』と言ってもらえた。社会の中で生きていく自信になった。」というコメントがありました。家族とのつながりが、社会復帰のための重要な要素のひとつなのだと考えさせられる一面となりました。また、社会復帰には、支え合う仲間の存在が大きいということも分かち合うことができました。どのグループも終了時間ギリギリまで“語り合い”を行い、有意義な時間を持つことができました。



ミーティングの様子

ミーティングの様子

ミーティングの後は、「マザーハウスのメンバーに質問コーナー」と題して、参加者からいろいろな質問が投げかけられました。
中でも、印象に残ったのは、「どういう時につまずきそうになりますか」という大学生からの質問に対して、「小さなことだが、SNSでやりとりしていた人からちょっとした行き違いで、『犯罪者だから』と言われたことがあった。その時に心が折れそうになった。」という回答でした。冒頭の石塚教授の「スティグマ」の話につながり、考えさせられる一面となりました。
学生、支援者などさまざまな立場の方が一堂に会し、社会復帰に関して語り合ういい機会になりました。

__________________________________________________________________
【補注】
*1 NPO法人マザーハウス:
受刑者・元受刑者の社会復帰支援を行う団体として2012年に設立され、2014年にNPO法人となりました。理事長をはじめスタッフも刑事施設経験者が多く、当事者視点・当事者体験に基づいて支援活動を展開しています。
https://motherhouse-jp.org