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2019.11.20

第13回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を開催【犯罪学研究センター】

「科学鑑定」・「対話的コミュニケーション」ユニットの研究最前線

2019年10月28日、龍谷大学犯罪学研究センターは第13回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を本学深草キャンパス 至心館1階で開催し、約15名の方に参加いただきました。
【イベント概要>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4031.html
今回の研究会では、古川原明子准教授(「科学鑑定」ユニット長 / 法学部)、吉川悟教授(「対話的コミュニケーション」ユニット長 / 文学部)の2名による研究の進捗報告が行われました。


第13回CrimRC公開研究会の様子

第13回CrimRC公開研究会の様子


はじめに、古川原准教授による「科学鑑定」ユニット研究の進捗報告が行われました。本ユニットでは科学鑑定に関する国内外の最新の「知」を集結することで、科学的知見に基づいた科学鑑定の枠組みを提示し、刑事裁判において実践を担いうる専門家集団を形成することを目的としています。法科学研究会では、特に揺さぶられっこ症候群(SBS) *1 について検証を重ねており、2018年度及び2019年度にSBSに関する国際シンポジウムの記録を『龍谷法学』に掲載したほか、関連する研究会の開催を重ねてきました。今回の研究会では、今年3月の中間報告会以降の活動について、報告が行われました。

まず、4月以降の法科学研究会について、第20回「科学的証拠に関する改革課題ーアメリカとの比較」(徳永光氏)、第21回「死因究明…法医学の役割」(吉田謙一氏)が開催されたことの報告がありました。
(*近日中にCrimRC HPにてレポートを公開予定)


古川原明子准教授(本学法学部/「科学鑑定」ユニット長)

古川原明子准教授(本学法学部/「科学鑑定」ユニット長)

他方、ユニット代表として古川原准教授が行った活動として、小児頭部損傷研究会において「改正臓器移植法附則第5項について」と題する報告をしたこと、ニューヨーク大学ロースクールアジア法研究所(U.S.- Asia Law Institute)のパブリックイベントに登壇して科学鑑定とえん罪の問題について報告をしたことが報告されました。

また、ユニットが研究面で協力してきたSBS検証プロジェクトに関しては、プロジェクトメンバーが弁護を担当した傷害致死事件に対して、大阪高裁が2019年10月25日に逆転無罪を言い渡したことが紹介されました(その後、確定)。 【>>判例登載ページ】
古川原准教授は本判決がSBS(揺さぶられっこ症候群)理論による事実認定の危うさを指摘した点、ならびに検察側の専門家証人の証言の不正確さを批判した点が注目されるとした上で、今後の裁判に対して大きな影響を与えるだろうと指摘しました。本件の弁護活動においては、国内外の専門家(脳神経外科医、法医学者、病理学者など)の役割も大きかったのですが、2018年と2019年に開催した国際シンポジウム(科学鑑定ユニット主催)が、協力関係を形成する契機となったそうです。なお、本判決についての報告会(主催:SBS検証プロジェクト、共催:科学鑑定ユニット)が12月16日に予定されています。
【>>EVENT詳細】12/16(月)《公開シンポジウム》無実の祖母はなぜ「犯人」にされたのか


吉川悟教授(本学文学部/「対話的コミュニケーション」ユニット長)

吉川悟教授(本学文学部/「対話的コミュニケーション」ユニット長)

つぎに、吉川教授による「対話的コミュニケーション」ユニットにおける研究の進捗報告が行われました。本ユニットは、新たな矯正・保護の方法として、犯罪や非行を行った人たちへの回復支援の導入段階から、これまでと異なる対話的コミュニュケーションによる援助関係の構築を行い、自律的な社会的活動意欲の促進や矯正的な行動改善の可能性が高くなることを明らかにすることを目的としています。

具体的には、①支援者の現状における関係構築の困難点を把握し、②対話的コミュニケーションの技能獲得の研修を行うことで、③その効果をこれまでのかかわりとの差として比較検討し、対話的コミュニケーションの技能獲得のためのガイドライン作成を計画しています。今回の研究会では、犯罪を犯した人たちの回復支援・社会復帰の初期過程における援助関係の構築について報告が行われました。

吉川教授は、従来の臨床心理学では、対象を「変容に関するモチベーションがある人」に前提としていたと指摘し、「モチベーションのない人」に対して援助的な関係を作れるような対話はどのようにして可能かという問いが研究の始まりであると述べました。
具体的な対話の手法として「リフレクティング・プロセス」 *2 を挙げ、「リフレクティング・プロセス」をスウェーデンのカルマル刑務所内で導入した事例に関する報告が行われました。「リフレクティング・プロセス」とは、治療者と患者の階層関係を取り払い、患者だけでなく患者の家族も対象にした対話によるプログラムです。
吉川教授は、刑務所内で「リフレクティング・プロセス」が導入された経緯として、「受刑者側からの要請ではなく、刑務所内の支援者側の不全感がきっかけとなった」と述べました。また、刑務所内においては厳しい規則があるため、小規模な形での実施となったものの、「リフレクティング・プロセス」を用いてやりとりが行われたと説明しました。その上で、小規模ながらも「リフレクティング・プロセス」を行うために、どのようにトレーニングしたのかという点に関して、対話的会話を生み出すための「対話のマナー」に含まれている、私見に関する断定的な言い回しの禁止などのルール設定の一部を紹介しました。

今年度の「対話的コミュニケーション」ユニットの予定としては、現状対応についてのリサーチおよび、より効果的な研修手法の検討が挙げられました。


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【補注】
*1 揺さぶられっこ症候群(SBS):

「揺さぶられっこ症候群(SBS)」とはShaken Baby Syndromeの略で、1970年代に英米で提唱。硬膜下血腫・網膜出血・脳浮腫の三徴候は、激しく子どもを揺さぶることで生じるという仮説。日本においても、児童相談所における虐待判断、警察の捜査や裁判で多く採用されるが、近年、海外ではこの仮説を疑問視する裁判例が相次いでいる。
最近では「虐待による頭部外傷(AHT, Abusive Head Trauma)」という包括的な名称も用いられる。

*2 リフレクティング・プロセス:
リフレクティングは、1980年代にノルウェーの精神科医トム・アンデルセン氏によって提唱された家族療法の一種。家族療法とは対象者を取り巻く人間関係に注目して問題解決を図る手法。現在は対話を主軸にした精神医療「オープンダイアローグ」の中核的手法としても活用されている。
【>>参考イベント・レポート】2019.04.12「北欧の刑務所におけるリフレクティングの展開と含意」をテーマに、トークセッションを開催
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CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」は、犯罪学研究センターに関わる研究者間の情報共有はもとより、その最新の研究活動について、学内の研究員・学生などさまざまな方に知っていただく機会として、公開スタイルで開催しています。
今後もおおよそ月1回のペースで開催し、「龍谷・犯罪学」に関する活発な情報交換の場を設けていきます。

【次回開催予定】
>>第14回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」
日程:2019年11月25日(月)18:30~20:00
報告予定の研究ユニット:
・「性犯罪」(斎藤司ユニット長)
・「ギャンブル障害」早川明ユニットメンバー)
(参加費無料・事前申込不要)

ぜひふるってご参加ください。