Need Help?

News

ニュース

2019.11.27

龍谷大学法学部「少年法」公開講義『ヨーロッパ犯罪学の旅(ドイツ)』を開催【犯罪学研究センター協力】

欧州の少年司法から見た、日本の少年司法の問題とは?

2019年11月7日、龍谷大学法学部「少年法」公開講義『ヨーロッパ犯罪学の旅(ドイツ)』が龍谷大学深草キャンパス21号館にて行われました。
【EVENT概要>>】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4337.html

「少年法」は、石塚伸一教授 (本学法学部、犯罪学研究センター長)が講師を務めています。今回は特別講師として、フリーダー・デュンケル氏(元欧州犯罪学会会長、ドイツ・グライフスバルト大学名誉教授)をお招きし、欧州における少年司法をテーマに講演していただきました。


石塚伸一教授 (本学法学部、犯罪学研究センター長)

石塚伸一教授 (本学法学部、犯罪学研究センター長)

日本は法改正に伴い、2022年に成人年齢が20歳から18歳に変更されます。一方で、少年法の適用年齢も18歳未満に引き下げるかどうかは今なお議論が続いています。

はじめに、デュンケル氏は少年司法における基本思想と原則について説明しました。少年非行における社会的コントロールは様々な形式で発展してきました。デュンケル氏は「近年では、デュープロセス(*1)が重要とされているが、非適正的な手続きも必要だ」と主張。基本原則として「刑罰ではなく教育」「最小限度の介入」「修復的正義(*2)」「刑事手続きは最終手段」の4つを上げ、それに基づいた各国の少年司法の新しい動きを紹介しました。
少年司法制度改革の流れとして、1960年代および1970年代に4D政策(*3)が提唱されました。その後1970年代末から1980年代は「少年司法の黄金期」と呼ばれ、子どもの教育について色々な政策が講じられ、少年司法の基本原則が具現化された時代とされています。しかし、1980年代から1990年代にかけて政策は厳罰化の方向に進み、4R主義(*4)が登場します。21世紀には新自由主義が登場し、少年司法の多様な方向性を提示。子どもには制裁を科すべきではないという考えから、西欧を中心に「子どもの権利に関する条約」等が作られ、少年に対する法的な権利保障が重視されるようになりました。そして1990年代以降、中欧及び東欧では欧州評議会が原動力になり、東・西欧における少年の人権、及び手続的権利の保障が強化されます。2000年代半ば以降には、基本原則の考えが確立していきました。


フリーダー・デュンケル氏(元欧州犯罪学会会長、ドイツ・グライフスバルト大学名誉教授)

フリーダー・デュンケル氏(元欧州犯罪学会会長、ドイツ・グライフスバルト大学名誉教授)


つぎに、デュンケル氏は少年司法と適用年齢上限の概観を説明しました(表1参照)。


※この表はデュンケル氏の発表資料より一部抜粋して作成


現在の日本では、刑事責任年齢は14歳以上、少年法の適用年齢は20歳未満とされており、これを18歳未満に引き下げるかどうかが論点となっています。また各国の適用年齢を見てみると、ドイツの刑事責任年齢は14歳以上、少年法は18歳から21歳未満に適用されます。クロアチアも同じく刑事責任年齢は14歳以上、18歳から20歳の場合は少年法上の教育措置がなされます。ロシアの刑事責任年齢は一定の重大犯罪については14歳以上、その他は16歳以上とされており、19歳まで少年刑法上の教育的措置が適用されますが、成人刑法の適用は18歳以上となっています。イングランド/ウェールズは刑事責任年齢が10歳以上と若く、18歳から20歳の若年成人と呼ばれる少年は量刑ガイドラインにおいて特別な減刑がなされます。デュンケル氏は各国を比較して、「社会学的変化、発達心理学及び神経科学の観点、犯罪学上のエビデンスから大人への移行期間が長期化していることは明らかだ。少年司法は若年成人と呼ばれる18歳から21歳の適用範囲から、21歳から25歳の成人にまでその適用範囲を拡大すべきだ」と述べました。

近年の大脳生理学の知見では、身体は14歳まで、知能は19歳まで、そして人格は20代になって成熟するとされています。しかし、計画をしたり衝動を制御するといった脳の高度な機能は20代半ばになって成熟することが明らかになっています。



さいごに、少年司法制度の展望として、デュンケル氏は「欧州評議会とEUは、刑事手続きにおける少年に対する法的な権利保障を向上させることを強調している。欧州は、少年司法を21歳、あるいはそれ以上の若年者にまで対象を拡大している。日本で議論になっている、少年法の適用年齢を、民法の成人年齢引き下げと統一するかという問題は、人は25歳前後で脳が成熟するという神経科学上のエビデンスに基づき、完全な刑事責任を21歳あるいは25歳といった、より成長した段階で取らせた方が合理的ではないか」とまとめ、講演を終えました。今回の特別講義は学生達にとって、欧州の少年司法制度や科学的観点を踏まえ、日本の適用年齢引き下げについて改めて考える良い機会となりました。

───────────────
【補注】
*1 デュープロセス:
法に基づいた適正な手続きのこと。
*2 修復的正義:
当事者同士の対話を通して、関係を修復していくこと。
*3 4D政策:
1960年代から1970年代に提唱された政策。刑事手続きからそらすこと(Diversion)・非犯罪化(Decriminalization)・脱施設化(Deinstitutionalozation)・デュープロセス(Due process)の4つの頭文字を取って付けられた。
*4 4R主義:
1980年代半ばから1990年代に登場。賠償(Restitution)・修復的正義(Restorative justice)・責任(Responsibility)の追及・応報(Restribution)の4つの頭文字を取って付けられた。