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2019.12.11

石塚伸一教授がCETアカデミックプログラムの取材に協力【犯罪学研究センター】

犯罪学の知見から、アメリカ銃社会を比較的に検討する

2019年11月8日、石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)が、「CETアカデミックプログラム」の学生から日本の犯罪状況などについて取材を受けました。

CETアカデミックプログラム」(本部:ワシントンDC)は、大阪学院大学にオフィスをおき、アメリカの大学生のために短期日本語留学プログラムを毎学期提供しています。その教育の一環として、日本の社会や文化に関する研究プロジェクトを日本語で実施しています。
今回、石塚センター長を取材したのは、アメリカ創価大学に通うAiko Robertsonさん。『日米の犯罪の歴史と文化比較』をテーマにした研究プロジェクトの中で、日本社会における犯罪について専門家に日本語で取材をし、日本の犯罪状況などを調査する目的で龍谷大学 犯罪学研究センターを訪れました。


「CETアカデミックプログラム」Aiko Robertsonさん

「CETアカデミックプログラム」Aiko Robertsonさん


石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)

石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)

Robertsonさんの取材では、銃を取り巻く日米の犯罪や歴史が話題にのぼりました。アメリカ・ピュー研究所の2017年調査によると、アメリカ国民の約4割が銃を所有している、もしくは銃のある世帯に住んでいると答えています。また銃による殺人や過失致死の割合は先進国で最高です。悲惨な銃乱射事件が起こるたびに世論が銃規制強化を求めているにも関わらず、アメリカの銃規制を困難にしているものとして、合衆国憲法修正第二条*1の存在が指摘されています。
一方、日本では16世紀の鉄砲伝来以降、火縄銃型の鉄砲が量産され、16世紀末には当時の世界最大の銃保有国だったとも伝わっています。しかしながら、17世紀には銃を放棄することで報奨金を得られる制度が存在し、第2次世界大戦後の1946年に施行された「銃砲等所持禁止令」によって狩猟用等を除き民間の銃の所持は禁止されることになりました。
このように約90分に及ぶ取材を通じて、日米の政策や文化的背景の違いが浮き彫りとなりました。


「CETアカデミックプログラム」ディレクター 日野裕子氏/Aiko Robertsonさん/石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)

「CETアカデミックプログラム」ディレクター 日野裕子氏/Aiko Robertsonさん/石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)


2019年11月27日、約4ヶ月間の短期日本語留学プログラムの集大成として「CETアカデミックプログラム 日本語発表交流会」が大阪学院大学2号館1階ラウンジにおいて催されました。当日は、 Robertsonさんの日米の犯罪学に関する発表をはじめ、『日韓関係』や『日米のクレジットカードシステムの違いについて』、『関西弁のイメージ』など、8名の留学生によるユニークな研究がポスターセッション形式で行われました。





Robertsonさんのポスターセッション『日米の犯罪の歴史と文化比較』では、1990年以降にアメリカで発生した有名な銃乱射事件やその件数を概観した上で、アメリカ銃社会の歴史や日本の銃規制の歴史にふれ、身近な武器として、アメリカの銃・日本の刃物の存在が紹介されていました。



結論として、「無差別に人に危害を加えるような悲惨な犯罪が日米両国で多く発生しているが、犯罪に使われる武器は社会によって大きく異なる。アメリカでは殺傷能力の高い銃があまりにも身近な存在であるし、日本の刃物は生活道具としても欠かせないものだ。こうした武器や道具には日米で異なる文化的背景があるが、人に危害を加えるような行為の根底にあるいじめ等の問題には共通点がある。問題を抱えた人に対してどのようなケアが必要なのか、これから時間をかけて考えていきたい」と述べ、Robertsonさんは発表を締めくくりました。


龍谷大学 犯罪学研究センターでは、犯罪学の研究者を中心とした国際交流を積極的に行っており、これまでスペインやカナダ、ポーランドなどから研究員の受け入れを行っています。今回のRobertsonさんの取材は、日本の犯罪学をよりグローバルな視点で捉えるうえで、意義深い機会となりました。


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【補注】
*1 合衆国憲法修正第二条
「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有しまた携帯する権利は侵してはならない」という規定。すなわち合衆国憲法は、銃の所有・携帯を人権の一部として保障している。