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2020.03.26

龍谷‐キャンベルシリーズ「キャンベル共同計画 介入・政策評価系統的レビュー」第14号を発行【犯罪学研究センター】

日本におけるエビデンスに基づいた犯罪対策の確立を目指して

龍谷大学 犯罪学研究センター(Criminology Research Center)では、犯罪をめぐる多様な〈知〉の融合と体系化を目的とし、現在14のユニットでの研究活動が行われています。
研究ユニットの1つである「政策評価」ユニットでは、浜井 浩一 ユニット長(本学法学部教授)のもと、犯罪学(犯罪防止)における科学的エビデンスの構築と共有を目的として、2000年に国際研究プロジェクトとして始まったキャンベル共同計画(Campbell Collaboration: C2)に協力した政策評価研究が行われています。

このたび犯罪学研究センター「政策評価」ユニットの2019年度の活動成果物として、龍谷‐キャンベルシリーズ「キャンベル共同計画 介入・政策評価系統的レビュー」第14号を発行しました。
同時に 犯罪学研究センターのウェブサイトでもPDFデータを公開いたします。

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<掲載レビュー>
・防犯ツールとしての監視カメラ
・再犯に対する施設内処遇と社会内処遇の効果
・犯罪ホットスホットにおける警察活動は犯罪を減少させる効果かある
・収監ヘースの薬物治療プロクラムは犯罪行為に対して適度な効果がある
・サイバー乱用への介入はインターネットの安全性についての知識を高めるが危険なオンライン行動を減らさない
・問題志向型警察活動は、犯罪と秩序違反にわずかな影響しか及ぼさない
・スケアード・ストレートプログラムは犯罪をより招く
・学校からの排除は、介入によって減らすことができるが、その効果は一時的である
・性犯罪者への処遇は再犯を減少させるが、効果的な介入を特定するには、さらなる検討が必要である
・青少年の夜間外出禁止は犯罪や犯罪被害の減少に効果がない
・低所得国や中所得国においてギャングと若者の関係を絶つ予防的介入に関する厳密な研究は存在しない
・企業犯罪:法律と規制は企業に対してわずかな効果しかない
・対面式の修復的司法カンファレンスは、再犯の減少と被害者の満足の促進という点で、費用対効果が高い
・警察の正当性を高めるための介入は、警察に対する市民の満足感と信頼を高め、 再犯を減少させる
・焦点を絞った抑止戦略「プリング・レバー」は、犯罪を減らすのに効果的である
・ドラッグコート:青少年よりも成人の薬物の使用と再犯の減少に効果的である
・低リスクの若者に対する警察主導のダイバージョンは若者が司法制度と将来的に関わることを減らす

【社会福祉】
・親密なパートナーからの暴力を防止する支援についての限定的根拠と限定的効果
・親族ケアを受けている子どもらの健康状態と幸福感は、里親によるケアを受けている子どもよりも良い
・学校で行われる性的虐待予防プログラムは、子どもの防御行動を強化し、 性的虐待に関する知識を増加させる
・若者のための能動的な労働市場プログラムは雇用と収益を増やす効果はプログラムとその内容により異なる
・違法薬物使用の減少に向けた 12-ステッププログラムは、 他の介入に比べて、良くも悪くもない
・若者の非オピオイド薬使用に対する治療方法としての FFT の有効性を示すエビデンスはほとんどない
・若者の非オピオイド薬物使用における認知行動療法は、他の治療と同等か劣っている
・ホームレス状態を減らし、居住安定性を改善する介入は効果的である

【教育】
・初等中等学校での不登校に対する心理社会的介入の効果
・交際中の暴力を防ぐための学校で行われるプログラムは行動に変化を与えない
・不登校プログラムは学校への出席を増加させるが、よりよいプログラムとエビデンスが求められている


「キャンベル共同計画(Campbell Collabolation: C2)」は、社会、行動、教育の分野における介入の効果に関して、人々が正しい情報に基づいた判断を行うための援助することを目的する国際的な非営利団体です。

「キャンベル共同計画(Campbell Collabolation: C2)」は、社会、行動、教育の分野における介入の効果に関して、人々が正しい情報に基づいた判断を行うための援助することを目的する国際的な非営利団体です。


龍谷‐キャンベルシリーズ「キャンベル共同計画 介入・政策評価系統的レビュー」第14号

龍谷‐キャンベルシリーズ「キャンベル共同計画 介入・政策評価系統的レビュー」第14号

RyukokuCampbell_14.pdf(2.64 MB)ファイルを開く

【PDFデータ】龍谷‐キャンベルシリーズ「キャンベル共同計画 介入・政策評価系統的レビュー」第14号

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はしがき

2016年6月、龍谷大学は、「龍谷・犯罪学」を構築し、日本国内だけでなく、広く世界に海外にアピールすることを目指し、犯罪学研究センターを開設し、同センターは文部科学省私立大学研究ブランディング事業に採択された。これまで、『Ryukoku-Campbell Series』は、龍谷大学矯正・保護総合センターの研究プロジェクトの一つとして第11号まで発刊してきたが、その研究内容に鑑み、今後は、政策評価に関する研究プロジェクトの活動として犯罪学研究センターが引継ぐこととなり、本号がその3号目である。
このプロジェクトの目的の一つは、刑事政策を含む社会政策に関する国際的な評価研究プロジェクトであるキャンベル共同計画(Campbell Collaboration )と協力し、その成果を広く公表することにある。キャンベル共同計画は、社会政策の中で「何が(科学的に)効果があるのか」についてのエビデンスを集め、評価し、広めることを目的としている。龍谷大学では、これまでもキャンベル共同計画の日本代表である静岡県立大学の津富宏教授と協力し、キャンベル共同計画の成果の中でも矯正・保護、つまり犯罪者処遇に関するエビデンスを中心に、評価報告書であるレビューの翻訳やウェッブサイトでの公表に協力してきた。今後は、犯罪学研究センターの開設を契機として、キャンベル共同計画の日本語版ホームページの運用を含め更に連携を強化することとなった。そして、政策決定者、実務家、研究者に対して、その成果をより身近なものとして活用してもらうために発刊してきたブックレット『Ryukoku-Campbell Series』についても、犯罪者処遇だけでなくより幅広い犯罪対策を カバーして発刊することとした。

本号は、抄録(Plain Language Summary)を収録した特集号である。キャンベル共同計画の系統的レビューは厳格な審査を経て採択されるため、その報告書にはレビューのプロセスが詳細に記載され、それを読み解くには一定レベル以上の統計学や疫学の知識が必要となる。その一方で、キャンベル共同計画の目的は、良質なエビデンスを学界だけでなく、行政官や政治家といった政策立案者に届けることで、エビデンスに基づいた政策立案を促進することにある。そこで、キャンベル共同計画では、疫学や統計学に関して高度な知識がなくても系統系レビューの概要が理解できるように、系統的レビューごとに平易な言葉で書かれた抄録を作成している。本号は、日本語版ホームページに掲載した抄録の一部をまとめた抄録集である。私たちにとって重要な示唆を含んだ内容となっており、ぜひご一読願いたい。

抄録集を通読してみると、再犯防止や防犯について、効果が認められたものには以下のような傾向があることがわかる。箇条書きに示すと。
・心だけに働きかけるプログラムよりも、行動に働きかける(行動変容)プログラムのほうが効果が認められやすい。たとえば、認知の歪みと行動変容の両方に働きかける認知行動療法は、性犯罪など多様な犯罪類型の再犯防止に対して効果が認められている。ただし、その効果には有効期限があり、介入が実施される環境によって効果に違いがある。
・同様に、具体的なターゲットが不明確なまま漠然と規範意識や自信を高めたり、忍耐力を身につけさせたり、基本的生活習慣を身につけさせようとするプログラムには再犯防止等に効果が認められにくい。たとえば、常識的には効果がありそうなスケアードストレイトやブート・キャンプ処遇、青少年に対する夜間外出制限などには再犯防止効果が認められていない。
・薬物犯罪の再犯防止や再使用防止については、治療共同体による介入に一定程度効果が認められた一方で、ドラッグコートについては、成人に対しては再犯防止に効果が認められたものの、少年に対しては認められていない。
・防犯については、ターゲットを絞った対策や警察だけでなく地域の関係機関との連携によって地域全体を活性化するような介入のほうが効果が認められやすい。たとえば、地理的目標を定め、警察と第三者間での協力関係を構築する問題解決型の警察活動は、協力関係を構築するが地域全体に分散してしまう警察活動よりも、街路レベルでの薬物市場を根絶するのに効果的な傾向があることが明らかになった。
・親に対する介入には非行少年本人に対する介入以上に非行防止効果が認められやすい。たとえば、出生前を含む5歳以下の子供がいる家庭に対する育児訓練や親業訓練といった早期の支援によって、その後の子供の問題行動が予防されること、また、こうした早期の介入は、子供が成人した後の問題行動(犯罪)の防止にも有効である可能性が確認されている。その一方で、親が受刑することは、その子供の問題行動の発現リスクを高めることも明らかとなっている。
その他、再犯防止に関しては、介入後のアフターケアが充実し、継続的な支援が組み込まれたプログラムのほうが効果が認められやすいこと、強制されたプログラムよりも、自発的に参加したプログラムの方が効果が認められやすいこと、再犯防止には、司法による公式な処分よりも非公式な介入(ダイバージョン)のほうが効果が認められやすいことなどが明らかとなっている。

今回は、キャンベル共同計画の成果を政策決定者や実務家に広く理解し、活用してもらうため、限られた紙面を使い平易な言葉で簡潔に記述された抄録のみを掲載した。その結果、かえって舌足らずな表現となってしまっていたり、何も明確になっていないような印象を与えてしまったりすることがあるかもしれない。しかし、一つひとつの抄録の背後には分厚い系統的レビューの存在があることを忘れないでいただきたい。キャンベル共同計画の成果である系統的レビューは、これまでの研究を概観するような単なるレビュー(ナラティブ・レビュー)ではない。たとえ、介入の効果が認められなかったレビューであっても、その結果は、疫学の基本的な考え方にのっとり、レビューの計画段階から、対象やその方法が適切であるかの審査を経て、更に、メタ分析の方法など、レビューそのものが、系統的レビューとして適切であるかどうかの審査を経た上で公表される。読者には、この抄録集が、膨大な時間と手間隙をかけた、現時点で最良のエビデンスに基づいて書かれたものであることを理解した上で、じっくりと読み、その成果を活用する方法を考えていただきたい。

龍谷大学犯罪学研究センター 政策評価ユニット長 浜井浩一