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2020.06.18

サツマイモネコブセンチュウの寄主適合性に関わるゲノム領域を同定しました

龍谷大学農学部植物生命科学科の浅水恵理香教授、資源生物科学科の岩堀英晶教授、かずさDNA研究所の白澤健太ゲノムユニット長、平川英樹施設長らの共同研究グループは、遺伝解析の難しいサツマイモネコブセンチュウで、サツマイモ品種に対する寄主適合性に関わるゲノム領域の同定に成功しました。

研究のポイント
1. 日本各地の主にサツマイモ圃場から単離された、サツマイモネコブセンチュウ48系統のゲノムを解読しました。
2. サツマイモ5品種に対する感染表現型 (SPレース) 検定を行い、32系統についてレース分類しました。
3. SPレースとゲノム多型との関連を調べるため、系統のゲノム配列をマッピングし、SNP (一塩基多型) コールを行いました。
4. 感染に関わるSNPが集積するゲノム領域を発見し、エフェクタータンパク質候補を見出しました。
5. さらに、海外系統とのゲノム比較を行い、世界の圃場から単離されたサツマイモネコブセンチュウ系統の多様性の低さを示しました。

植物寄生性線虫の一種であるサツマイモネコブセンチュウは、世界の農業に甚大な被害を与えています。サツマイモネコブセンチュウの寄主は被子植物25万種に及ぶという多食性ですが、作物種や品種によって、感染力の差 (寄主適合性の違い) が見られます。この差を引き起こす原因を探ることによって、サツマイモネコブセンチュウの寄主範囲の広さの謎を解く鍵を得ることができます。

絶対寄生で単為生殖のサツマイモネコブセンチュウでは、系統の採集や維持に多大な労力を要し、また従来の交雑による遺伝学的解析が困難です。本研究では、48系統という多数のサツマイモネコブセンチュウ系統を用いることで、世界で報告のなかったゲノムワイド関連解析 (Genome-Wide Association Study; GWAS) に初めて成功しました。その結果、寄主適合性に関わる「ホットスポット」ともいうべきゲノム領域を発見したことが、学術的意義が高いと思われます。本研究成果は、科学雑誌「Molecular Plant Pathology」オンライン版に2020年6月17日に掲載されました。

論文タイトル
Root-knot nematode genetic diversity associated with host compatibility to sweetpotato cultivars
著者
Erika Asamizu, Kenta Shirasawa, Hideki Hirakawa, Hideaki Iwahori
掲載誌
Molecular Plant Pathology
DOI: 10.1111/mpp.12961


ネコブセンチュウ


ネコブセンチュウの被害を受けたサツマイモ