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2020.08.06

2020年度第1回 龍谷大学法情報研究会を開催【犯罪学研究センター協力】

オンラインの法教育・法学教育の課題と展望

2020年7月21日、犯罪学研究センターは法情報研究会をオンライン上で開催し、約30名が参加しました。
【>>イベント概要】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-5791.html

はじめに、石塚 伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)より、「オンラインによる法(学)教育について」の報告がありました。

石塚教授は、法学部1回生を対象とした「法と裁判」の講義内容から、オンラインでの授業の進め方と内容を説明。裁判の流れや起訴状の作成において、童話裁判を用いながらポイントとなるところを学生達に伝え、また裁判の内容に対し「裁判官の立場ならどう考えるか」「検察官の立場ならどう考えるか」といった課題を提示し、学生達の意見を聞きながら、授業を行いました。

この講義では、学期末に学生達へ「オンライン授業だけの方が良い」「対面授業の方が良い」「混合した授業が良い」の3択で答えるアンケートを実施。結果、受講学生85名のうち20%が「オンライン授業だけの方が良い」、60%が「対面授業の方が良い」を選択。「混合した授業」については、対面授業をベースにして、オンラインでも受講可能なスタイルがあると良いのではないかという意見が出ました。こうしたアンケート結果から石塚教授は、「オンライン授業と対面授業を混合したハイブリッド形式は、体調不良などで休んでしまった場合でもオンデマンドで後日受講が出来るという利点がある。しかし、ハイブリッド形式の場合、クラブやバイトを理由に、対面授業に出席する人数が減っていく可能性がある」と述べ、新形式の授業のメリットとデメリットについて言及しました。

つづいて、石塚教授の報告を踏まえた上での意見交換が行われ、法学教育、法情報教育等、様々な立場からの意見が交わされました。中でも土山 希美枝教授(本学政策学部)からは、「オンライン授業の問題点として、学生の通信料(量)負担が挙げられる。限られたデータ容量の中でどれぐらいの長さのオンライン授業が出来るか、学生達の意見を取り入れ、学生の通信環境や勉強方法に対応した授業のスタイルを模索した」と、実際の体験から、オンライン授業の対策についての意見が述べられました。
また、福島 至教授(本学法学部)は「講義形式の課目は、オンライン授業でも教科書をベースにストリーミングで実施した。研究室にホワイトボードを持ち込み、配信画面の後ろで板書をしたので、講義室での授業に近い形になったのではないか。大規模な講義形式のオンライン授業では、これまでよりも教科書をしっかりと読んでいるようで、学生の知識の定着が進んでいると感じる。これからレポート課題を出すので正確には評価できないが、広く浅く底上げが出来たのではないか」とコメントしました。

さいごに石塚教授は、「オンライン授業に対する工夫によって、情報の吸収率や理解度など学生の学習レベルが上がったという実感は確かにある。それ自体は良いことだが、大学という高等教育機関の中でこのスタイルのままで良いのかという思いもある」と、大学教育のオンライン化に対する不安を述べ、報告を終えました。


写真左:石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)/右:福島至教授(本学法学部)

写真左:石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)/右:福島至教授(本学法学部)


※研究会当日は学内外をZoomでつなぎ、ハイブリッド形式で実施した

※研究会当日は学内外をZoomでつなぎ、ハイブリッド形式で実施した

次いで、札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部、犯罪学研究センター嘱託研究員)が、8月9日に開催予定の「オンライン高校生模擬裁判選手権」について報告しました。このイベントは従来実地で開催されてきた高校生模擬裁判選手権(主催:日本弁護士連合会)が新型コロナウイルス感染症の影響によって中止されたことから、札埜准教授が主催者となって独自にオンライン開催する初の試みです。オンライン高校生模擬裁判選手権に参加予定の全国各地の高校生を対象に、この春からオンラインで準備授業が行われてきました。
【>>イベント概要】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-5897.html

札埜准教授は、オンライン高校生模擬裁判選手権の狙いとして「本大会で重視しているのは、“広く人間や社会までを視野に入れた『国語的』模擬裁判を通じて、人間や社会を考える眼差しを深めること”である」と述べました。従来の模擬裁判選手権は「法的思考能力や刑事(裁判員)裁判の意義の理解」を得られるものでしたが、札埜准教授はこれに国語的要素を加えたものにすべく準備を進めてきました。法哲学的要素といって良いかもしれません。
具体的には、日弁連主催の模擬裁判選手権の採点基準では「論理性」が重視されていたのに対し、今回の採点基準には「論理性」だけでなく、「読解力」や「人間や社会への洞察力」を加えることで国語力が求められる仕組みを作りあげたり、シナリオ作成の参考文献として森鴎外の小説『高瀬舟』を取りあげたりするなど、「法律学の理解だけでなく、文学の知識も取り入れられる模擬裁判を目指す」と札埜准教授は述べました。

また「オンラインの模擬裁判授業を通じて、今までに無い面白さを感じた」と語りました。5月上旬に準備授業を実施した際、オンラインでの見学が可能だと広報したところ、今まで接点のなかった方々からの参加希望があるなど、かなりの反響があったそうです。中には、非常に熱心な東京の高校生から「ぜひ見学したい」と直接コンタクトがあったケースもあり、「こういう事が起こるからオンラインは面白い」と報告。準備授業では、外科医師が医学の観点から『高瀬舟』の殺傷の状況について説明するなど、オンラインだからこそ人脈が幅広く繋がり、新たな教育の可能性が広がったそうです。


札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部)

札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部)


札埜准教授の模擬裁判授業の資料スライドより

さいごに札埜准教授は、「私が以前(前職の京都教育大学附属高校教諭の頃)から行っていた法教育を全国に広げたいと常々思っていた。今回オンライン模擬裁判選手権を実施することで、これまでやってきた授業を一気に全国の高校生に提供することが出来る」とオンライン授業の可能性についての期待を述べました。一方で、今後の課題として「学校間の格差」についても言及。「模擬裁判選手権の常連校で優勝を目指して熱心に取り組んでいる学校もあれば、今回初参加で高校1年生が中心の学校もあるので、学校による差が出てきている」と説明し、「両者の差を縮めていくためのサポートが欠かせない。主催者側の熱意が生徒さんに伝わると思うので、教員の方にも理解される授業を実施していきたい」と述べ、報告を終えました。

8月9日に開催予定の「オンライン高校生模擬裁判選手権」は、一般視聴者(Zoom経由)を募集しています。オンラインで準備を進めてきた10校が全国から出場。検察側の高校生・弁護側の高校生が殺人か同意殺人かをめぐって争います。ぜひこの機会にご覧ください。※事前申込制
http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-5897.html