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2021.01.08

アジア犯罪学会 第12回年次大会 オンライン・プレイベントを実施【犯罪学研究センター】

海外での挑戦を志す若手研究者をパネリストに迎え、国際学会で発表するという挑戦や有益性にについてディスカッションを展開

2020年12月19日、龍谷大学犯罪学研究センターは「アジア犯罪学会 第12回年次大会 オンライン・プレイベント」を実施し、国内の犯罪関連学会ネートワークの会員をはじめ、研究関係者、学生など約40名が集いました。
【>>EVENT詳細】http://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-6529.html

今回は国際学会での発表経験を有する、社会科学・人文科学を専門領域とする若手研究者5名がパネリストとして登壇し、日本の若手研究者や実務家、学生を主な対象としてウェビナー(Webinar)で実施しました。国際学会のトレンドを共有する機会となったと同時に、国際的な学術交流を通じた日本の犯罪学研究の質的向上や、論文や出版物など知見を発信する必要性についても議論が交わされました。

パネリスト(50音順・*敬称略):
  ・相澤 育郎(立正大学・助教)
  ・相良 翔(埼玉県立大学・助教)
  ・都島 梨紗(岡山県立大学・講師)
  ・松川 杏寧(国立研究開発法人防災科学技術研究所・特別研究員)
  ・丸山 泰弘(立正大学・准教授)

指定討論者(パネリスト総括):
宮澤 節生(アジア犯罪学会・会長、神戸大学名誉教授、カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール客員教授、本学犯罪学研究センター客員研究員)

司会者:
ディビッド・ブルースター(龍谷大学犯罪学研究センター 博士研究員)


パネリスト紹介

はじめにパネリストの自己紹介として、各自の国際学会デビューや近年の報告状況について報告が行われました。パネリストの研究課題は、薬物政策(刑事政策)や非行からの立ち直り(教育社会学)、被災地防犯(環境犯罪学)など犯罪学領域の中でもさまざまで、報告経験のある国際学会も多岐にわたっています。

そうした中で、「日本で行われる国際学会は、ホームアドバンテージがある!」という共通点が指し示されました。特に若手研究者や学生にとっては、国際学会の参加にかかる費用の捻出がネックになっています。パネリストの中からは「はじめての国際学会は院生時代に指導教員を頼って参加したものの、日本とは異なり大会事務局の対応がアバウトで、無事に報告を終えて帰国できるかどうか、まさにサバイバルだった」というエピソードの紹介もありました。旅費や大会事務局の対応という点で、日本で行われる国際学会(学会にもよりますが数年〜十数年に一度)は、若手研究者にとって貴重なチャンスと言えるのかもしれません。

また、指定討論者として参加した宮澤 節生会長(アジア犯罪学会)も自身の国際学会経験を振り返りました。宮澤氏の国際学会デビューは1976年(イエール大学留学中)のアメリカ法社会学会。以来、主にアメリカの学会を中心に毎年発表を続けてきたとのこと。そして、「様々な大会に参加して発表することで、論文の出版機会に恵まれ、共同研究プロジェクトのメンバーとして声がかかるようになった。研究費の制約など厳しい状況があるかもしれないが、若手研究者にはぜひ積極的に国際学会に参加して欲しい」と激励しました。

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パネルテーマ1【私はなぜ国際学会に参加するか】

Q. 国際学会参加のための研究資金はどう調達するか?
松川:大学院生時代、2011年に神戸で行われた国際犯罪学会(World Congress of Criminology)に参加した時、日本国内の参加者に対する助成があったので申請した。また、過去には指導教員の研究費枠で国際学会に同行したこともある。私としては機会を逃さないために、学会報告にはお金を使おうと思っている。
相良:初めて参加した国際学会は、2015年にドイツで行われたヨーロッパ犯罪学会(European Society of Criminology)だった。その時には科研費が獲得できていたので、渡航費に充てることができた。科研費は研究課題の内容はともかく、申請書類の書き方にポイントがあるので、その点についても若手研究者の皆さんと共有していきたい。
相澤:近年は所属機関の研究費をベースに国際学会に参加してきた。また、研究費をもっていない院生時代には、先生方の科研費の協力研究者に加えていただいて、学会に限らず海外に行く機会をもらってきた。先生方はぜひ若手研究者に目をかけてあげて欲しい。


Q. 国際学会の参加で得られた発見やメリットは?
松川:行動範囲が広がると、当然のことながら出会う人が増える。コネクションが広がることで研究の幅が広がり、研究課題の突破口が見つかることがある。また、世界における自分の立ち位置やレベルについて、客観的に見ること、深く考えることに役に立つ。
相良:自身の研究テーマである「更生保護施設」について海外で説明する時に、日本の文化や制度的な枠組みから説明しなければならず、とても苦労した記憶がある。しかし同時に、どのような文脈で伝えると良いかをグローバルな視点で捉えることにつながり、松川さん同様に自分の研究者としての立ち位置について考えさせられた。
都島:2つの発見があった。1つは、 過去に参加したヨーロッパ犯罪学会では、日本の学会ではあまり話題にのぼらないようなテーマが話題になっていることを知った(例:環境犯罪学、戦争犯罪等)こと。もう1つは、 (ヨーロッパと台湾での報告経験から)お互いに英語のネイティブスピーカーではないので、発表をあたたかく聞いてくれたこと。英語での発表に対しての緊張感が和らいだ。


Q. 国際学会の参加で生まれたコネクションとその後の展開は?
丸山:自身の発表内容について後日問合せが来るなど、少しずつ興味を持ってくれる方が増えていった。また、はじめはミーハーな姿勢で参加しても良いと思う。有名な先生であっても積極的に話しかけていけば、気さくに若手の質問に答えてくれることがある。
相澤:私は消極的なタイプなので、自分から話しかけていくことがなかなか出来なかった。ただ、同じ国際学会に3回続けて参加したところ、さすがに顔見知りになって、韓国の若手研究者が来日した時には一緒に食事に行くようになった。参加し続けることで、繋がりが深まることもあると思う。
相良:2019年に参加した香港の学会(The 1st Asia Regional Meeting of the International Society for the Study of Drug Policy)はアットホームな雰囲気で交流が進み、各国の状況を知る上で非常に為になった。
ブルースター:確かに学会によって雰囲気は随分違う。
丸山:コネクション作りについて、15年ほど前に浜井浩一先生(龍谷大学法学部)に教わった裏技がある。欧州で有名な研究者でもアウェイのアメリカの学会では、一人ポツンとしている時があるので(逆もまた然り)、そこで話しかけると気さくに対応してくれる、というものだ。実際にトライしてみると、たしかに良い反応が得られた。


Q.国際学会で人気の研究領域、日本との違いは?
松川:日本の学会と海外の学会とでテーマの違いを強く感じる。たとえば、私が属する災害に関する研究領域では、日本はこれまで理工(土木)系が報告の中心だったが、近年は社会科学領域がようやく注目されるようになった。一方、アメリカの同領域の学会では社会科学の報告が中心で、「災害=社会問題へのアプローチ」という捉え方が普及している。そうした点でも、ギャップを感じる。
丸山:海外の犯罪学領域の学会で驚くのは、同時に20、30のテーマセッションが行われるので、自分が興味を持つテーマセッションを見つけやすい状態になっていること。たとえばDPA(Drug Policy Alliance)が主催する薬物合法化のカンファレンス(International Drug Policy Reform Conference)の「薬物合法化」のテーマセッションの中には、研究者でありドラッグユーザーでもある人々が円陣を組んで語るというものも開催され、日本ではまず目にできないようなもので、とても興味深かった。


Q. 言語の壁をどう乗り切ったか?
相澤:気合で乗り切ったと言うか、発表のタイミングだけ変なスイッチが入っていて、うまく答えられることができた。ただ準備していないわけではなく、おすすめしたいのは「カフェで英会話」というようなサービスで、時間制で講師と好きな話ができるというものがある。私の場合は、担当講師にプレゼン資料のアドバイスをもらったり、QAの問答集を一緒に作ったりと、このサービスを通じて事前の準備をすることができた。
都島:発表自体はトランスクリプトを用意して練習していたので、あまり困ることはなかった。トランスクリプトは、所属する大学の英語講師に協力を仰いで用意した。大学院生でまわりに留学生がいる人は、言語のことを相談できるようになると良いと思う。
丸山:プレゼン資料はただ読みあげるのではなく、指し示しながら話せるようにグラフを多用するようにしている。都島さん同様に僕も大学の英語講師と仲良くなって、定期的に他の教員も含めた英語の勉強会に付き合ってもらえるようになった。普段の勉強会では自身の授業を英語で10分で説明するような練習をして、学会前はプレゼンの内容を相談した。
相良:僕はトランスクリプト(台本)を発表時に読みあげずに、事前に暗記するようにした(暗記しきれなかったこともあったが)。そうすると他の学会報告の時にも覚えたフレーズを活用できるようになった。

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パネルテーマ2【おっと! 事前に失敗だと知っていたらよかったこと】

Q. 国際学会での恥ずかしい経験は?
松川:大学院生時代、指導教員に「国際学会で笑いをとってこい。それで点数をつける!」といわれたことがある。プレゼン中、うまい言い回しが見つからない時に、たくさんの言葉で補足しようとして時間切れに…。以来、プレゼン資料にあわせてトランスクリプトを準備するようになった。あと、質疑応答の時に何を聞いているか分からないまま、時間切れになったことも…。
相澤:発表するテーマがその学会に合致しておらず、参加者にポカーンとされたことがあった。とくに法律系の研究者は国際学会での発表に慣れておらず、また普段から国際的な発信を意識した研究をしていないことが多い。私自身もそのような姿勢でいたが、苦い経験を経た現在では、海外での発表を意識した研究をあえて別立てで行うようになった。
丸山:国際学会では、やはり前提となる部分が伝わらないと共感を得にくい。(日本の状況を伝える論文など)土台として読めるものを沢山出して、さらに国際学会で発表することが必要。海外で日本の研究者が勝負していくためには、論文と発表の両輪が欠かせない。個人の学会発表だけで済ませるのではなく、全員で日本の犯罪学を底上げする必要がある。


Q. 過去の自分へのアドバイス、次の国際学会への参加に向けての意気込みは?
相澤:過去の自分へ伝えたいのは「(国際学会へ)はよ行け!」ということ。2016の初参加の時に感じたことを、もっと若いうちに体験できれば良かった。
相良:大学院生の時に横浜で行われた社会学領域の国際会議(The 18th World Congress of Sociology)に参加しなかったことを未だに後悔している。学生や若手研究者には資金面の懸念があると思うが、「ホームアドバンテージがある時には参加すること」をおすすめしたい。尻込みせずに自分の発表をしっかりとして、その反応を見てみることが必要。
都島:現在のような大学教員としてではなく、「学生の身分の時に国際学会に参加したら良かった」と思う。資金面については、指導教員に相談することができるかもしれない。
また、プレゼン資料については、海外の機器によってパワーポイントが文字化けしてしまうことがあるので、PDFデータを持参することを強くおすすめしたい。
松川:過去に参加した学会に関して、1つずつもっと丁寧に準備をしておけば、相手に伝わるような報告や、議論を深めることができたように思う。国際学会で発表するハードルはあるが、海外は学術的な広がりのレベルが日本よりも高く、国際的な視点を獲得できる貴重な機会だと思う。異なる視点の獲得や経験を多く積むことが大事なので、これから国際学会での初報告を目指す学生には、とにかく「頑張れ!」と言いたい。
丸山:「迷ったらやる!」ということを若い方々に伝えたい。また、やはり誰しも自分の学会報告に対しての反応が無いと寂しいものなので、大学院生や若い人には他人の報告にも積極的に質問やコメントするなど、どんどん参加して自らコミュニケーションをとって欲しい。


▼宮澤会長からのアドバイス
(丸山さんが指摘された通り)前提となる日本の状況や文化的背景が理解されていないことには、国際学会では報告が理解されにくい状況がある。現状として、日本の犯罪学研究が国際的に流通していない、とりわけ英語での出版点数が少ないという問題点がある。最近では、多くの出版社がアジアの研究成果を発表するようになってきており、アジア犯罪学会で最優秀図書賞に選出された研究者たちは、アメリカやイギリスで執筆した博士論文を何年もかけて改定して単行本として出版している。しかし日本人がいきなりその段階に上がることは難しい。日本の状況をデータとして世界に共有するために、若手世代の研究者には英語論文の執筆・投稿を強くおすすめすると同時に、学術論文として出版することを提案したい。
アジア犯罪学会では、Asian Journal of Criminologyに掲載されている論文の中から最優秀のものを、1000ドルの賞金付きで表彰している。今年は日本の研究者の論文が受賞したが、日米でデータを集めて既存の犯罪学理論に対して発言するという内容だった。日本の理論やデータだけではなく、他国の理論やデータとどう関係があるかまで言及すると、海外の研究者にももっと読んでもらえるのではないか。

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全体ディスカッション

【参加者からの質問1】
バックグラウンド(また、理論的背景や先行研究の認識)がさまざまに異なる研究者が集う国際学会で、より充実した質疑応答をおこなうために意識すると良いことは?
(各国の事情を確認しておしまい、となってしまった苦い記憶がある)

丸山:長期的に見ると、先ほど宮澤先生がおっしゃった通り論文執筆や出版を通じて日本の状況を知ってもらう必要がある。短期的な対応としては、本当に知ってほしい革新的なことを15〜20分のプレゼンに盛り込むことになると思う。もしくは特定のテーマに関して、75分〜90分のパネルセッションを組んで、基本的な状況を報告する人、そこからの発展について報告する人、海外との比較について報告する人といった複合的な形で報告を試みてはどうか。
宮澤:私自身の経験からも、たしかに自らセッションを組んでみることが最善だと思う。その場ですべてを解決しようとせず、自身と興味関心のある方とのつながり、また考えるべき視点を見つけるきっかけとなれば良いのでは。
相良:まさに今のようなことを意図して、私も都島さんと2019年にヨーロッパ犯罪学会で共同発表を行った。前半は日本の制度論に関することを報告し、後半はナラティブ分析に関して報告した。チームを組んで発表するのも一手。また、国内・国際学会問わずどの視点で報告するのかを明らかにする上で、先行研究レビューとの比較検討が根本的に重要ではないか。
松川:私も方法論に関して、チームを組んで発表したことがある。また、日本と海外とで発表の際に使用する先行研究を変えている。どの先行研究を取り上げるかによって、その国で理解されやすい内容になる。

【参加者からの質問2】
スライドを作成する際に、ユニバーサルデザインについて具体的にどのような配慮をしているか?

松川:シンプル・イズ・ベスト。フォントは2種類まで、キーカラーも2色までにすると良い。グラフや写真が入るのが効果的だが、文字の説明は極力少なくすること。スライドはビジュアル的に見せて、プレゼンの言葉で説明していくことをおすすめしたい。
ブルースター:コミックサンズ(Comic Sans)フォントは、子供っぽくなるから絶対に使わないこと。
相澤:極力文字量を少なくするようにしている。グラフを使う場合、途中で要点をまとめたスライドを入れるようにして理解をうながすようにしている。
石塚:15〜20分のプレゼンで共有すべきグラフは1、2個に絞って、詳しく聞きたい人には後でデータをメール等で配布するような仕組みにして、関係性作りのきっかけにしては。

【参加者からの質問3】
リモート報告を中心とした学会が増えている中、プレゼンやQ&Aの工夫についてどう考えるか?

松川:学会報告のリモート化が進んだことで、簡単に海外の学会に参加できるようになった。リモート形式の方が、むしろ質疑応答の内容が濃くなるように思う。また、報告時にプライベートチャットでメッセージもとんでくるので、文字で情報を把握することができる。
今年ポスターセッションで参加したリモート形式の学会では、ポスター(説明音声付きのプレゼン資料)のデータを事前にWEB公開し、会期中のコアタイムにライブチャット等でオンタイムに質疑応答を行うというものだった。
丸山:松川さんの事例のように、これまでのオーラル報告とポスターセッションの間、デジタル・ポスターセッションのようなものが生まれてきているし、面白いと思う。
相澤:同世代の人とみんなで海外へ行くのは貴重な経験で、関係性が深まる機会でもあるので、対面のコミュニケーションが完全になくなってしまうのは寂しい。
宮澤:日本で大会を行う場合、時差の関係で日本人だけが交流時間に参加するような懸念がある。各報告に関して新たな視点を見出すためにも、各セッションに海外のディスカッサントを招くなどの工夫が必要ではないか。

【参加者からの質問4】
国際学会での発表が、国内学会のように必ずしも拍手では終わらないことを語って欲しい。

宮澤:昔の刑法学会では質問できる人が決まっていたなど、しきたりや関係性を重視する学会はある。私個人の経験としては、自分の報告に対して(批判を含めて)何も反応が得られないことの方が心配だ。
石塚:学会というものは、参加者の立場が違うことが前提となっているので、心配することはない。自身が報告するセッションを盛り上げるという意味では、関連するテーマの研究者と事前に仲良くなっておき、サクラ(報告後の質問役)を入れると良い。学会報告を通して、毎回聞きに来てくれるような仲間を作っていくこと。個人として名を売ること、研究仲間のチームを作っていくこと、この2つが大切だ。


おわりに:日本の若手研究者と犯罪学の国際化

▼宮澤会長による総括
今回議論したように、「アジア犯罪学会 第12回年次大会(ACS 2020)」では、日本の研究報告に対して、外国の研究者が何らか議論に参加できるように工夫したい。日本の若手研究者には、自身の研究に誇りをもって発表されることを期待する。
まずは国際的に関心を持ってもらえるような報告を準備し、その上で積極的に発表していただくことで、将来的には出版につながるのではないかと考える。また、日本やアジアに関する犯罪学の知見が増えていくことにもつながると考えているので、ぜひとも若手研究者の皆さんには積極的に国際学会に参加して欲しい。



アジア犯罪学会 第12回年次大会(ACS 2020)」は、2021年6月18日〜21日に龍谷大学で開催されます。大会登録、演題募集ともに2021年1月15日よりスタート予定。詳細はぜひ公式サイトでご確認ください。
http://acs2020.org/

↓本大会のプロモーション・ビデオ(Short Version)をぜひご覧ください。