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2022.03.07

京都弁護士会 公害・環境委員会 第74期選択型実務修習(自然保護部会) 開催【里山学研究センター】

<京都弁護士会 公害・環境委員会 第74期選択型実務修習(自然保護部会)開催>

日時:2022年2月25日(金)10:00~16:30(龍谷大学瀬田学舎9号館2階大会議室・「龍谷の森」)

第1レクチャー:人類と自然環境の持続可能性と里山
         村澤 真保呂氏(社会学部・教授)
第2レクチャー:里山の開発と法・政策
         牛尾 洋也氏(法学部・教授)
第3レクチャー:潜在能力アプローチを用いた「生態系サービスの享受プロセス」の解明
        ――震災復興の中での子どもと自然環境――
         伊達 浩憲氏(経済学部・教授)
第4レクチャー:里山の歴史と現状
         宮浦 富保氏(先端理工学部・教授)
第5レクチャー:「龍谷の森」での実地研修
         太田 真人氏(里山学研究センター・博士研究員)
意見交換会

 
「森のある大学 龍谷大学里山学研究センター」は、京都弁護士会の依頼を受け、環境問題や持続可能社会の学習を目的に、第74期司法修習生の実務修習を開催しました。本実務修習には、本研究センターの研究員6名、司法修習生9名、弁護士2名の計17名が参加しました。

村澤教授(第1レクチャー担当)は、持続可能の危機を国際的な取り組みの文脈から解説し、IPCCとIPBESの活動方針が抱える気候変動対策と生物多様性対策の矛盾をメガソーラー問題や浮力発電問題などの事例から提起しました。この問題設定から現状を理解するために、エコロジカル・フットプリントのデータを紹介し、エネルギー消費量や農村と都市人口の比率、国際的な生物種豊富度などのデータを用いて生態系と生物多様性に関する課題を説明しました。持続可能な発展をめざす経済は、生物種を自然と社会、文化や精神などの区分を超えたネットワークの結び目として捉えることができると論じました。

牛尾教授(第2レクチャー担当)は、都市部と農村部を見るまなざしから、里山の開発と保全について「水」の管理に焦点を当て問題提起を行い、里山が持つ機能と複合性を解説しました。法的な観点からこの里山の機能に対する政策的な関心を、土砂災害問題の文脈から森林資源の利用と管理をめぐる課題――過剰利用、過少利用、国土の管理の放棄、所有権放棄――として整理し、国土利用と土地利用に関する権利義務関係に焦点を当てながら、低成長時代の国土管理と環境問題の関係を論じました。


写真:大会議室(撮影太田)

伊達教授(第3レクチャー担当)は、江戸末期から現代にいたる日本の第一次エネルギー供給源の推移を長期的な視座から解説し、温室効果ガスがもたらす問題を提起した後、もう一つの環境問題である生態系サービスに焦点を当てた2010年のCOP10以降の研究動向を紹介しました。自然を道具的な価値の観点からではなく、自然と人間との間に構成される関係的価値の観点から考察するアプローチから東日本大震災後の生態系サービスの劣化が与える人間の福利にたいする問題を論じました。

宮浦教授(第4レクチャー担当)は、日本の中世からの里山利用を「白砂青松」の景観を紹介しながら、農家での資材や食料、燃料、肥料として利用されてきた様子を、モノとエネルギーの流れの観点から問題を提起しました。「アカマツ」「コナラ」「クヌギ」といった里山の樹木の歴史的な分布の推移と概観した後、里山の「ミズカマキリ」の生態を解説し、「アカマツの衰退」「ナラ枯れの拡大」「タケの大繁殖」「鳥獣問題」の発生メカニズムを論じました。

太田研究員(第5レクチャー(実地研修))は、大会議室で実地研修の概要を地図とともに説明した後、「龍谷の森」で実地研修を実施し、里山の環境と生態系を解説しました。司法修習生たちは、自生するヒノキを観察し、森林生態系の実態を学び、森林観測タワーに登頂して「龍谷の森」を一望しました。


写真:龍谷の森 森林観測タワー(撮影太田)

意見交換会では、村澤センター長の司会進行のもと活発な質疑が交わされました。環境問題は開発と植林だけの問題ではなく、生態系や生物多様性の保全という課題があり、人が農作物を持続的に生産するために森に入り、多面的な方向から自然に関わる必要があることを理解したという意見がありました。エネルギー問題に関連して石炭の輸入による発電について認識を新たにしたという見解や、里山の問題について、私たちはどのように政策や技術革新によって解決の糸口を探ることができるのか、あるいは市民の意識の問題として取り組むべき課題なのかについて考えるきっかけになったという感想もありました。


写真:龍谷の森 イノシシの泥浴び(ヌタウチ)の現場(撮影太田)