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2022.07.01

公開研究会・シリーズ「鴨志田祐美の弁護士放浪記」第1回レポート【犯罪学研究センター共催】

刑事司法、刑事弁護とは何か

龍谷大学 犯罪学研究センター(CrimRC)は、刑事司法・刑事弁護をテーマに、2022年6月13日、公開研究会・シリーズ「鴨志田祐美の弁護士放浪記」をオンラインで共催しました。本企画には85名が参加しました。進行は、石塚伸一教授(法学部/犯罪学研究センター)がつとめました。
本企画は、大崎事件再審弁護団事務局長、日本弁護士連合会「再審法改正に関する特別部会」部会長をつとめる、鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)によるものです。
【イベント情報:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-10556.html


鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)

鴨志田祐美弁護士(京都弁護士会)


はじめに
第1回のテーマは「刑事弁護の辺境で~「オーダーメイド弁護」のススメ~」です。はじめに石塚教授が「鴨志田先生といえば大崎事件ですが、どうして弁護士になったのか、どのような弁護活動をしているのかを話してほしいと考えて講演を依頼しました」と企画趣旨を述べ、講演が始まりました。

5つの「オーダーメイド弁護」
今年の4月から京都弁護士会に登録替えをした鴨志田弁護士。これまで、鹿児島県弁護士会で刑事弁護に地道にこつこつ取り組んできたことを紹介し、「小さな事件といってもその人にとっては一生の一大事。その人にジャストフィットするような“オーダーメイド弁護”を実践してきました」と述べました。
講演では鴨志田弁護士が実際に行った、5つの弁護活動が紹介されました。このうち最初の2件は、鴨志田弁護士が弁護士登録をして2カ月の時期に続けて受任したもので、実子に対する傷害と殺人のケースでした。鴨志田弁護士は、それぞれのケースについて被告人の状況を調査し、周囲の支援者や機関が被告人をフォローできる環境づくりを行い、更生のための弁護を行ったことを紹介しました。3件目は飲酒運転の前科3犯のケースでした。この被告人には処罰より治療が必要であると考え、医療との連携を重視した弁護活動を行ったことを紹介しました。4件目は覚せい剤取締法違反等の事件で、違法薬物の密売、使用を行っていた元暴力団員のケースでした。このケースでは被告人の劣悪な生い立ちや社会的偏見によって更生を妨げられていた事情を裁判体に伝えるとともに、本人の振り返りと気づきによる更生を目指す弁護活動を行ったことを紹介しました。5件目は、建造物侵入、威力業務妨害の事件で、無職で引きこもり生活中の被告人である息子の家庭内暴力に耐えかねた母親が警察に駆け込んだことに腹を立て、コンビニで暴れたというケースでした。母親が再度の同居を拒否したことから、このケースでは更生保護に医療的ケアを組み込む環境整備を模索しつつ弁護活動を行ったことを紹介しました。

おわりに
鴨志田弁護士は最後に「紹介したケースはあまり華々しい事件ではありませんでしたが、みんな、いろんなものを抱えて生きています。なにも好き好んで犯罪者になるわけではありません。普通の刑事裁判は本当に短い期間で行われます。その短い期間にその人のことを変えることはもちろんできません。しかし、刑事裁判というトンネルをくぐったときに、次につま先がどの方向を向いて踏み出すかで、その人の人生は大きく変わっていくのではないでしょうか。その人のつま先を、光が差す方向に踏み出させたいというのが、私の実践してきた“当たって砕けろ、オーダーメイド弁護”かなと思います」と述べ、講演を締めくくりました。

第2回のテーマは、「再審弁護とは ~「針の穴にラクダ」を通すための手練手管~」です。
是非、ご参加ください。
【イベント情報:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-10719.html

当日の記録映像をYouTubeにて公開しています。ぜひレポートとあわせてご覧ください。
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