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2022.08.24

西正寺・中平了悟先生のご講演と西方寺(浄土宗)訪問 受講生企画の講演とフィールドワーク【社会共生実習】

 「社会共生実習(お寺の可能性を引き出そう!―社会におけるお寺の役割を考える―)」(担当教員:社会学科教授 猪瀬優理、コミュニティマネジメント学科准教授 古莊匡義)では、前期の学びのまとめとなる活動として、7月に受講生たち自身がお話しを聞きたい方からの講演会、ご活動の現場を拝見させていただきたい寺院におけるフィールドワークを企画・運営しました。


 4月から実施してきた、ご僧侶による講演(浄土真宗本願寺派「子ども・若者ご縁づくり」推進室長・弘中貴之先生)、お寺でのフィールドワーク(訪問順に:浄念寺・西本願寺・一念寺・覚明寺)で得られた学びをもとに、各受講生が自分の関心に基づいてさまざまな活動をされているご僧侶、お寺について調査を進めました。受講生一人ひとりから提案された案をもとに全員で議論し、ご講演は兵庫県尼崎市にある浄土真宗本願寺派・西正寺のご住職・中平了悟先生に、フィールドワークは滋賀県草津市にある浄土宗・西方寺様に依頼することになりました。それぞれの企画を実施させていただくべく、受講生自身が依頼と日程調整を担当して企画・運営を進めました。双方とも、大変ありがたいことにご多忙の中、快く受講生からの依頼を受けてくださいました。


西正寺・中平了悟先生


ご講話を聞く受講生


 西正寺・中平了悟先生には、7月8日に龍谷大学・瀬田学舎にて、1時間半のご講演をいただきました。
中平先生は受講生の希望もあってご自身のご経歴からお話を始めてくださり、「お寺をお寺として、(僧侶を僧侶として)守っていきたい」というお寺における活動の根底にあるお考えをお伝えくださいました。この考えのもと、「無自覚な思想・価値観を相対化する試み」をしたいともお話され、これらのお考えが、西正寺で実施されている専門家の方をお呼びして、地域の方々と社会課題について語り合う「テラからはじまるこれからの、ハナシ(テラハ)」というご活動につながっていることを学びました。
現代社会においては、人が暮らしている地域社会を作る際に、宗教施設が必ずしも必要不可欠なものとはみなされなくなっている状況にあること、このような中、お寺の経営を継続していくことも厳しくなっている現実も改めて教えていただきました。その中で、お寺自体がこれまで担ってきた役割を守りながらも、新たな役割を見出し、担っていく必要性があるという認識を持っておられることを教えていただきました。

中平先生ご自身、地域において様々な活動に参加しその活動を通して、地域の人たちとのつながりを作り、地域の人たちからお寺に企画が持ち込まれる関係性を作ってこられたとのことでした。受講生が関心を持った「カリー寺」という取り組みも、すでに関係があった地域の若者が持ち込んだ話が発端であるということも伺いました。
ご講演を伺う前、受講生たちの関心は、西正寺で地域の方々と連携して実施されている「カリー寺」という一つの活動への興味が中心を占めていましたが、一つの活動の背景にお寺が地域の方々とはぐくんできた歴史やそのお寺を取り巻くより広い社会状況との関係について、改めて考えさせられる時間となりました。

今回の講演を受けて学生からは、以下の感想を聞くことができました。

「中平先生が考える「NPO法人とお寺の役割は似ている」という見方にとても納得しました。地域問題や地域活性化などの最前線で関わりを持ちながら課題を解決していくことも大切だと考えます。しかし地域についてなんらかの支援をしている人を増やすことで地域住民が少しずつ意識を変えて「一人ひとりの生活のなかで地域を助けること」ができるのではないか。見えやすい支援をすることがすべてではなく、目に見えない「思いやり」の支援を大切にしていきたいと考えました。今回の講演はお寺についてだけでなく、地域貢献や地域の課題、これから私たちが地域について考える時の一つの視点になりました。そして中平先生のユーモアのある講義はとても面白く、またお聞きしたいと思いました。」

「新たに様々なお寺の活動や可能性を知ることができました。その中でも、ニュータウンに関するお話がとても興味深く感じました。中平先生によれば、新しい町にとってお寺は必要なものから省かれていて、それはお寺への期待の変化が大きく関わっているとのことでした。そこで、お寺が積極的にお寺の外での活動に関わることで、地域の人にお寺を知ってもらい、お寺のイメージを明るく楽しいものにしていけるなど、さらに先を見据えたお話をされていて、様々な発見がありました。」

「「近いけど当事者ではないこと、語れないことを言葉にできるように」というお話は、お寺という場所から始まる福祉活動ならではの視点と感じました。「地域の困りごとを解決する切り口をお寺で」や「問題が顕在化する前に火消しする」、「アンテナを張る」ということは、福祉で言えば中間支援的な役割を担っていると感じました。困っている人や苦しんでいる人がいても、またそれを助けようとする人がいても、両者を取り持つ人がいなければ繋がることはできず、本当に必要な人に支援が届きません。私自身福祉を学ぶ中で問題や困りごとがあっても、本当に困っている人に支援が届いていないのではないかということは、日ごろからもどかしく感じていた部分でもありました。お寺にそうした双方向のニーズをつなげる役割としての可能性があるということや、お寺を中心に据えることによる地域支援の活性化という力があることを中平先生のお話から考えることができ、大変有意義な時間となりました。」


西方寺・副住職の牧先生からのお話しを聞いている様子


本堂内に置かれているピアノ


 7月17日には、西方寺の副住職・牧哲玄先生・光美様ご夫妻より、西方寺で取り組んでおられる諸活動とその背景にあるお考え、また本堂や広大な境内をご案内いただき、各所に設けられている施設とそこに関わるご活動について教えていただきました。
912年開基というお寺の由緒からお話を伺い、その歴史の上に築かれた伝統をこれからの社会の中で継続し、守っていくために、積極的に行動しながらその具体的方法を模索しておられることが、お寺の各所に形として示されていることから、実感として学ぶことが出来ました。

これまでお寺主催でマルシェを開催、地域住民の方による学習塾やヨガ教室・絵画教室などを実施する場所の提供をされてきました。また、裏山のキャンプ場ではボーイスカウトが活動し、設置されているグラウンドゴルフのコースではお檀家さんだけではなく、近隣住民の方も楽しまれているとのことでした。裏山ではヤギも暮らしており、近隣の子どもさんたちの散歩コースともなっているとのことでした。また、誰でも弾くことのできるストリートピアノが、本堂内と本堂外、そして墓園の一角に建てられたテラス内と計3台設置されており、遠方からもピアニストが弾きに来られるとのことでした。フィールドワーク当日も大阪からピアノを弾きに来られている方がおられました。西方寺のストリートピアノの存在を広めるために、副住職が自ら都市部に設置されたストリートピアノを弾きに行き、訪れた人に名刺を配布したり、撮影した動画をSNSに投稿したり、といった活動もされているとのことです。

このような活動を通して、宗教や世代を越えた地域のつながりを作っておられることを学びました。時代に合わせたお寺のあり方を探っておられるとのことで、墓園においても石材屋さんや葬儀業者さんとも相談しながら合同墓やペット霊園など、人びとの希望に合わせた新たなかたちを提供されていました。


テラス内のピアノ


今回のフィールドワークを受けて、学生たちからは以下の感想を聞くことができました。

「印象的だったことはピアノの存在です。想像を超える可愛さとユーモアのあるお地蔵さんや建物でとても魅力に溢れていました。ピアノの設置のエピソードも興味深く面白かったです。お話の中で「田舎のお寺は足を運んでもらうための話題が必要」という言葉がありましたが、ストリートピアノという形で広告していることに感銘を受けました。様々な生活のニーズに合わせてお寺での供養や仏壇づくり、ペットのためのお葬式などお寺側が変化をもたらすことは檀家さんにとってもとてもありがたく、地域の方に寄り添った大切な視点だと思います。私たちがこれから活動をしていく中で大切なことは「相手のニーズに合わせた」計画だと感じました。」

「ピアノが調律不可能であっても「もうこのピアノは使えないな」と考えるのではなく、「それならホンキートンクピアノとして使おう!」という考えで設置されたのが素晴らしいなと思いました。たくさんのイベントを実施しておられる西方寺さんですが、そのためには檀家さんの理解や説得が必要で、それにしっかり向き合っておられることを学びました。」

「活動やイベントはもちろんですが、檀家様についてのお話についてもたくさんのことを聞くことができ、多くの発見があり印象に残っています。檀家様が積極的にイベントに参加してもらえる工夫をされていて、様々な発見がありとても驚かされました。」

「お話を伺いながら感じたことは、お寺に対する危機意識のようなものがかなりはっきりとあり、それをどうにかするために活動をされているということです。目を引くような社会貢献活動だけでなくお墓にも様々な種類があったことをみて、地域社会のさまざまなニーズをキャッチしたうえで、そのニーズとお寺を関連させるような活動、結果的にお寺の存続につなげられるような活動を考えてされているのだなと感じました。また、自分たちがアンテナを張っているというよりは、アンテナを張っている人を呼び込むというお話が面白いなと感じました。地域社会で必要とされていることを敏感に察知できる人をお寺に呼び込むことによって、地域の中でお寺が一つの交流拠点となることが期待でき、お寺の価値を高めることに繋がっているのではないかと思います。」


お寺の敷地内を案内していただいている様子

自分たちの手で企画した講演とフィールドワークを通じて、事前調査や「相手のニーズを知る」ことの重要性にも気づくことができたようです。中平先生、牧先生ご夫妻に温かくご指導いただいたことで、受講生たち自身が後期から取り組む活動に向けた意欲も高まってきました。
後期からは、受講生自身がお寺と連携した活動を考え、実践していくことになります。そのためのヒントもたくさん与えていただいたご講演とフィールドワークとなりました。


裏山のキャンプ場(ボーイスカウトの活動場所)


社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。