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2022.10.31

タイ・マヒドン大学の薬物政策研究チームが入澤崇学長を表敬訪問(日本学術振興会・二国間学術交流事業)【ATA-net研究センター】

ハーム・リダクション政策を採り入れたタイから研究チームが来日

 2022年10月31日、日本=タイ二国間学術交流(2022年共同研究及びセミナー)のため、マヒドン大学(タイ・バンコク)の薬物政策研究チームが入澤崇学長を表敬訪問しました。
 かねてよりタイは、薬物統制に厳罰主義で臨む国といわれ、密売買や輸出入には、死刑が科されることもありました。しかし、そのタイが、政策を根本的に見直し、ハーム・リダクション政策を採り入れるに至りました。本学ATA-net研究センターの日本研究チームは、本年5月にコロナ下の障害を乗り越えてタイに入国し、調査を行いました。今回は、タイ研究チームによる、日本の調査訪問となります。

 タイ研究チームの6名は、紫光館1階に完成した相撲部の土俵や、至心館1階矯正・保護総合センターの模擬刑事司法システム実験スペース(法廷)、接見室や審判廷、取調室を見学、その後、顕真館を見学しました。


至心館1階・模擬法廷の見学風景

至心館1階・模擬法廷の見学風景


至心館1階・模擬法廷の見学風景

至心館1階・模擬法廷の見学風景

 入澤学長の表敬訪問では、Chucharoen Prapapunマヒドン大学准教授が代表の挨拶をされ、龍谷大学への謝辞とともに次のようにお話されました。「タイでは、薬物運搬に子どもが関与し、その過程で薬物依存に陥るケースがある。このような子どもたちには薬物から離脱させる治療的なサポートが必要で、家族や地域への介入が欠かせない。タイではアメリカではじまった12ステップ*1というプログラムを取り入れている。これは日本のダルク*2、NA*3でも実施され、一定の効果を得ている。日本の研究チームと薬物政策について共に調査研究することには、大きな意義がある。」と述べました。

 これに対し、入澤学長は、「先日、卒業生を中心に社会に貢献し顕著な業績をあげた方を表彰する、龍谷賞の受賞式があった。そこでは、カンボジアの支援や阪神・淡路大震災で被災した、神戸市南京町の復興支援を行ってきた方を表彰した。それらの支援も昨今よく耳にする『レジリエンス(resilience)』*4と深く関係している。タイでの取り組みもまた、薬物依存からのレジリエンスを高めるものなのだろう。」と述べ、今回の来日調査へ期待を寄せました。


入澤学長と研究メンバー一同

入澤学長と研究メンバー一同


石塚伸一教授(ATA-net研究センター長)とタイ研究チーム

石塚伸一教授(ATA-net研究センター長)とタイ研究チーム

 タイ研究チームは、11月1日から関東の薬物依存回復支援施設や刑事政策に関する施設等を調査訪問する予定です。また、11月5日(土)には日本チームと合同でシンポジウムを開催予定です(※研究メンバー限定開催)。本シンポジウムでは、2022年6月から薬物新法典を施行したタイと、国際的な潮流に抗う薬物規制を続ける日本の対応との異同を明らかにします。

【関連記事】2019.03.16News 「東アジア薬物依存者回復支援者(DARS)養成セミナー」を開催【犯罪学研究センター】

【補注】
*1 12ステップ:薬物回復プログラムの中核。回復のための指針として重視されている。<https://www.seijo.ac.jp/education/falit/grant-book/jtmo4200000072xz-att/232-3.pdf
*2 NPO法人日本ダルク:<http://darc-ic.com>ダルク(DARC)とは、ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(RIHABILITATION=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語である。覚せい剤、危険ドラッグ、有機溶剤(シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラム(ミーティングを中心に組まれたもの)を実施。
*3 NA:ナルコティクスアノニマスの略。薬物依存からの回復を目指す薬物依存者(ドラッグアディクト)の、国際的かつ地域に根ざした集まりを指す。詳細は、ナルコティクスアノニマス日本ウェブサイトを参照。<https://najapan.org/about-na
*4 レジリエンス(resilience):自発的治癒力。近年は「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」と言われることが多い。