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2022.11.17

「実践真宗学研究科 実習報告会を開催しました【文学部】【実践真宗学研究科】

 実践真宗学研究科では、体系的な理論研究と実習を中心とした現場での活動を軸に、”理論と実践”を取り組んでいます。  実践真宗学研究科において重要な位置づけである実習について、毎年、「実習報告会」を開催し、修了生が実習の成果を研究科の内外に向けて発信しています。今年度は、11月3日(木)に龍谷大学実践真宗学研究科 実習報告会を開催しました。

 実習報告会の内容について、先輩たちの実習報告を聞いた、実践真宗学研究科1年生の学生の皆さんの声をもとにご紹介します。


那須研究科長より開会のあいさつ



1.「寺院と地域福祉 ―「まちの保健室」に着目して―」 (発表者:研究科3年 大西さん(森田敬史ゼミ))大西さんの発表は「寺院と地域福祉−「まちの保健室」に着目して–」というテーマであった。少子高齢化が進むなかで寺院がどのように社会貢献していくのかという概要でまちの保健室に焦点を当てた。
 今回の発表ではすでにまちの保健室の活動を行なっている寺院の事例を取り上げ、そこから生まれる利点、課題そして可能性を端的にまとめていた。寺院側の利点として専門制がなくてもできるパッケージ化された活動で始めやすいことがあげられた。幅広い教養がなくてもネットワークがあればその専門家とのパイプになることができるとされる。  
 しかし課題として寺の敷居の高さがあげられた。まちの保健室を寺院で開催する場合とスーパーや公民館など宗教性がない場所で開催する場合では後者の方が集客力があるようだ。これらのことから寺院独特な空間作りやもともと持つコミュニティを活用して密接な関係を作り上げることができるのではないかと考察された。 寺院でのまちの保健室を通して、他の活動に取り組み、地域福祉を促進していくことがねらいとされた。(コメント 研究科1年 金尾さん)



研究科3年 大西さん


2.「児童に対する宗教教育」
  (発表者:研究科3年 長谷川さん(那須英勝ゼミ))
 
 長谷川さんの発表はでは、まず実習の目的とその方法が明らかにされた。長谷川さんの実習は、子ども向けの宗教行事・宗教教育に寺院関係者や保護者が期待をすることを数値化し、改善すべきことを考えることを目的として行われ、調査方法としては、WEB上でのアンケート機能を用いている。
 アンケートにおける質問内容は、6項目であった。それらは、①子ども向けの宗教行事・宗教教育への参加頻度、②過去の子ども向けの宗教行事・宗教教育への参加の有無、③宗教行事・宗教教育教育に期待すること、④子ども(12歳以下)が宗教を学ぶことを重要視するか否か、⑤その理由、⑥寺院への要望である。
 調査結果については、現在考察をすすめている。今回言及していた考察は、特に④についてである。④の回答において重要と回答した78%(54票)の人から、(子どもが)心穏やかに過ごすこと、思いやりの気持ちの育み、命の大切さを学べることを期待しているという結果が得られた。そこから長谷川さんは、子どもが参加する宗教行事や宗教教育の場において、「何を」「どのように」伝えてゆくことが重要であると考えている。
(コメント 研究科1年 浅野さん)


研究科3年 長谷川さん


3.「浄土真宗における「動画伝道」の研究」
  (発表者:研究科3年 藤原さん(葛野洋明ゼミ))

 藤原さんは、新型コロナウイルス感染症の蔓延を契機として、主にYouTubeを用いた動画伝道を考えておられました。
 法話の中の法義説とエピソードトークを抜き出し、それぞれを繰り返し見てもらえる「ストック型」、人の目を引く「フロー型」にコンテンツを分類して動画を作成されており、その動画を布教使の方々に見てもらったアンケート結果として、不特定多数に見られることを意識したエピソードや言葉選び、法話の聴聞の基本は対面であることを懸念点として挙げられていました。
 また、個人的運営の「なもの部屋」と組織的運営の「築地本願寺」にYouTubeでの伝道活動について、半構造化聞き取り調査を行われ、双方の共通点として、現在の動画視聴対象は宗派内部の方であるが、今後はご縁のない方へ発信していく動画の作成、動画内容として深い教義に踏み込むのではなく、入門的な内容を軸にしていくことを検討されていることを述べられました。
 現代の人々の身近にあるYouTubeを通して、伝道を行う姿勢や内容が、今後どのように展開されていくか、非常に興味を惹かれる発表でした。
(コメント 研究科1年 中山さん)


研究科3年 藤原さん


4.「「お寺がんカフェ」とは」
  (発表者 古谷さん(森田眞円ゼミ))

 古谷さんの発表では、がんに対する多くの深刻な悩みを抱えている患者や家族、医療従事者などが集まり交流できる場所「がんカフェ」に着目され研究されていました。その「がんカフェ」において僧侶ならではの役割が果たせるのではないかという動機からこの研究に取り組まれたそうです。
 実際にお寺でがんカフェを行なっている埼玉県の日蓮宗の寺院と東京都の真言宗の寺院の2ヵ寺に対し調査を行なわれたそうです。
研究のポイントとして、お寺で行なわれていることの意味、また、がん患者にとってどういう意味があるのかというところに注目されていました。
 お二人のご住職の役割として傾聴することが重要だと共通のお答えがあったそうです。しかし真言宗の寺院は現在「がんカフェ」を閉会されているそうで、一番の理由として「祈り」という参加者にとって大きな部分が実現できなかったことを述べられていました。この部分について参加者の方の調査が現在の社会情勢もあり行なえなかったようでした。この「祈り」以外にも僧侶の果たせる役割がどのようなものがあるのか、これからの研究で明らかにしていきたいと述べられておられました。
(コメント 研究科1年 藤岡さん)


研究科3年 古谷さん


聴講した他の院生から質問や意見がありました。


先生の意見は大変参考になります。


杉岡先生から閉会のあいさつ


 今回の実習発表会を経て、発表者は、これまでの実習に対する手応えや修士論文の執筆に向けての気づきを得ることができました。  

 また、先輩たちの報告を聞いた学生たちは、今後取り組んでいく自らの実習に向けて、たくさんヒントを得られたことと思います。