Need Help?

News

ニュース

2022.11.24

模擬裁判に挑戦する高校生と一緒に学ぶ法教育:Part2「文学模擬裁判と今回の事件の文学的・歴史的背景について(Ⅰ)」【犯罪学研究センター後援】

模擬裁判は国語であり、理科であり、社会であり、スーガクだ!

2022年11月23日(水・祝)、「第3回オンライン高校生模擬裁判選手権大会」*1に向けた事前講義がオンライン上で開催されました。本イベントは、札埜和男准教授(本学・文学部、「法教育・法情報」メンバー)によって企画されたものです。
【>>EVENT概要】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-11627.html  

今回の講義は、札埜准教授が「文学模擬裁判と今回の事件の文学的・歴史的背景について(Ⅰ)」と題し、前半に文学模擬裁判の説明を行い、後半では模擬裁判で扱う事件について紹介をしました。当日は、大会に参加する高校生と一般参加者をあわせて65名の参加がありました。


文学模擬裁判とは何か?


札埜准教授の講義の様子

札埜准教授の講義の様子


模擬裁判とは、法的紛争の事例・テーマに沿って、裁判に出てくる当事者(裁判官、弁護士、検察官、原告・被告人、証人など)の役割を分担し、裁判・公判手続きを最初から最後まで通しで再現するものです。本学の 法学部では、六法(憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法)科目の講義を履修した学生(4回生)を対象に、総合演習科目として開講されます。
一方、小中高校生向けの法教育として行われる模擬裁判は、①裁判の手続きを理解すること、②基本的なルール(法律・法原則)に従って、与えられた論点を整理・検討し自分の意見を組みたてることを目標に、あらかじめ台本を用意するなど、より簡略化した形でロールプレイを体験してもらう場合が大半です。では、文学模擬裁とは、どのように行われるのでしょうか。

札埜准教授は「法の知識や法的思考力を身につけるだけでなく、人間や社会という不条理な存在を深く考える姿勢を養うことを目的とするのが文学模擬裁判です。多くの模擬裁判が中・高の社会科の授業の一環として行われているのに対し、国語科の視点を取り入れて行う模擬裁判(国語的模擬裁判)といえます。題材は文学作品で、小説だけでなく、古文や漢文、随筆、落語、演劇などのジャンルを含みます」と説明します。
札埜教授は、これまで行ってきた文学模擬裁判の事例や体験者の感想を紹介しながら「
大切なのは、頭の中だけで考えないことです。文学模擬裁判で大事なことは、“なりきること”、“よく見ること”です。ものごとのリアリティを追求することです。高校生は経験知が足りない分、経験知が豊かな大人から話を聴くことでこれまでの世界観が壊れたりします。だからさまざまな大人と出会うことが大事です。事前配信講義もそういう意図があります。国語とは言葉を通して人間を考える教科だと考えています。みなさんも、是非“人間とは何か”を考えながら文学模擬裁判を楽しんでください」と、模擬裁判の目的、趣旨について説明しました。


河豚鍋事件


文学模擬裁判の事件概要を説明する札埜准教授

文学模擬裁判の事件概要を説明する札埜准教授


つづいて、札埜准教授より今回の文学模擬裁判の事件の概要について説明がありました。時代は江戸時代。大坂の商家で起きた、ふぐを食べたことによる中毒死事件です。モチーフとなった文学作品は、落語「鰒汁(ふぐじる)」*2と「小説 土佐堀川―女性実業家・広岡浅子の生涯」*3です。札埜准教授は、大同生命の特別展示展を鑑賞したエピソードに触れながら、江戸時代の大坂商人の生活スタイルや、江戸時代には調理技術が未発達で美味だけど危険な食べ物であった“河豚(ふぐ)”について、参加者に説明しました。札埜准教授は犯罪・法律学の予習事項として「ハラスメント」、「殺人と過失致死の違い」、「共同正犯」の3つをキーワードとして高校生たちに提示し、準備を進めていく注意点として2点挙げました。「内面的だけでなく時代的にもリアルを追求していく必要がありますが、江戸時代には、ハラスメントという言葉はありませんので、安易に現代のカタカナ言葉を使ったりしないように、注意を払って下さい。また、人間を見ることが大事だと強調しましたが、事件を起こした動機は人間を考える上で大事ですが、証拠としての重要度が相対的に低いといえます。こういったことをふまえたうえで、当時の時代背景や人の価値観や暮らしをイメージし、準備をしていって下さい」と述べました。

また札埜准教授は、参考文献*4を示しながら、「大会では、ぜひみなさんなりきってください。言葉として発したり、身体を動かして表現することはとても大切です。表現と理解をいったりきたりすることで、論理は磨かれていきます。コロナ対策を取りつつ、河豚鍋を食べながら、文学模擬裁判を楽しんでください」と大会参加校の生徒らへの期待を込め、講義は終了しました。


講義のラスト

講義のラスト


次回は、11月26日(土)14:00-16:00に、後藤貞人弁護士(大阪弁護士会)を講師に迎え、「裁判とは何か・死刑制度をめぐって高校生と対話する」と題した講義を予定。ぜひHPよりよりお申し込みください。
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/

【補注】
*1 (関連情報)
>>第3回オンライン高校生模擬裁判選手権<出場校を募集!>【犯罪学研究センター後援】
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-11402.html 
同大会は、2023年1月29日(日)にZoomにて開催を予定。大会のねらいとして次の2点を掲げている。(1)法的思考力や刑事(裁判員)裁判の意義の理解にとどまらず、広く人間や社会までを視野に入れた「国語的」模擬裁判を通じて、人間や社会を考える眼差しを深める。(2)「国語的・文学模擬裁判」という新しい教育手法を通じて新学習指導要領の理念でもある主体的・対話的で深い学びを実現する機会とする。

*2武藤禎夫『定本落語三百題』(岩波書店、2007年)、別名「ふぐ鍋」。
参考:棚橋正博「第29回 フグは食いたし命は惜しし」、『そのことば、江戸っ子だってね!?』(Web日本語、2012-12-13)

*3 潮出版社より1988年初版。潮文庫として古川智映子(2015年)『小説土佐堀川-広岡浅子の生涯』がある。
大同生命は、創業110周年を迎えた2012年度より、当社の礎を築いた大坂の豪商“加島屋”、そして当社創業者の一人である実業家“広岡浅子” に関する歴史的文書等を大阪本社(大阪市西区)で一般公開している。
参照:「大同生命の源流 加島屋と広岡浅子」(大同生命)
「商都大阪の豪商加島屋再現模型の公開」(大同生命)

*4渡辺貴裕・藤原由香里『なってみる学び: 演劇的手法で変わる授業と学校』(時事通信社、2020年)