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2023.01.12

模擬裁判に挑戦する高校生と一緒に学ぶ法教育:Part4「法廷プレゼンテーション術」【犯罪学研究センター後援】

有名弁護士が伝授する「プレゼンテーション」の"コツ"

2023年1月8日(日)「第3回オンライン高校生模擬裁判選手権」*1に向けた事前講義がZoomを利用したオンライン形式で開催されました。本講義は、札埜和男准教授(本学・文学部、「法教育・法情報」メンバー)の企画です。
今回は、刑事事件に精通した弁護士である遠山大輔氏*2(京都弁護士会)より、プレゼンテーションについて講義をいただきました。遠山弁護士は2022年に2件の裁判員裁判をご担当されております。大会に参加する高校生と一般参加者をあわせて26名の参加がありました。


遠山大輔弁護士(京都弁護士会)

遠山大輔弁護士(京都弁護士会)

まず、プレゼンテーションの基礎についての説明がありました。
講義の冒頭に「プレゼンテーションとは?」という質問が高校生に投げかけられました。高校生からは「まとめたものをうまく説明する」や「自分の主張をわかりやい方法で伝える」などといった回答がありました。遠山弁護士は「プレゼンテーションとは、“プレゼント”である」「徹頭徹尾相手のことを考えることがプレゼンテーションなのだ」と解説しました。続けて、プレゼンテーションは、ピラミッド構造になっていて、①戦略 ②シナリオ ③デリバリーについて考える必要があると説明しました。


プレゼンテーションのピラミッド構図(講義の様子1)

プレゼンテーションのピラミッド構図(講義の様子1)

「①戦略には目的と目標があり、目的にはⅰ情報伝達・ⅱ説得・ⅲモティベートの3つの目的がある。ⅰ情報伝達に関して、聞き手はわがままであるから、情報を伝えるときは、相手が知りたいことを伝えなければならない。図表を示したりして相手のニーズに応じることが大事である。自分の話しやすさではなく、相手の聞きやすさを考えてほしい。ⅱ説得に関しては、“ベネフィット=あなたにとっての利益”、“ロジック=論理的・弁証法”、“エモーション=情動的”の3点が重要である。ⅲモティベートに関しては、相手を動機づけることや裁判員の役割を示すことが重要である」と説明しました。また、裁判員には、裁判官をチェックするという役割もあるので、義務を語るモティベートについても重要性があることなどについても説明されました。
 戦略の目標に関しては、手続きが終わった時に獲得していなければならないことを明確に持つということであると説明されました。


講義の様子2

講義の様子2

つづいて、②シナリオについて説明がありました。「刑事裁判の1つ1つの手続きにシナリオがあるということに注意してシナリオを作らなければならない。シナリオにも“説得”がキーワードとなる。説得のプロセスをすっ飛ばすと相手が引いてしまうので、聞き手のことを考えてシナリオを考えるべきだ」として、


説得のプロセス(講義の様子3)

説得のプロセス(講義の様子3)

「シナリオも3部構成となる。大きなテーマを3つ設定して、原稿は用意せず弁論を行う。原稿を用意すると、覚えてしまって、活き活きさがなくなってしまう。また、シナリオを活かすために、ⅰデリバリーとⅱノイズを意識する。ⅰデリバリーは、聞き手のために“いい人”になることである。相手(聞き手)に話に集中させてあげられるよう相手(聞き手)に媚びる。ⅱノイズには、見た目のノイズと言葉のノイズがある。ノイズを除去することを心がけ、ジェスチャーなども交えて目と耳で伝えることを意識することが大事である」と説明されました。


ジェスチャーの例(講義の様子5)

ジェスチャーの例(講義の様子5)

最後に質疑応答の時間がありました。
高校生からは「原稿を書かずに話すと…話すべきことを忘れてしまいます(原稿の必要性に関する質問)」や「パワーポイントのお話の中で、アニメーションなどを使う手法もあるとのことでしたが、それは、ゼロノイズの観点からはいかがでしょうか」、「文と文を全て接続詞でつなぐと少しくどいように感じます。接続詞の使用頻度について教えてください。」といった質問がありました。
遠山弁護士は「忘れてしまうことは大したことではないから、気にしなくても良い。忘れてしまうことを怖がる必要はない」、「私も(アニメーションはノイズだと考えているため)ゼロノイズの観点から、アニメーションは使わないようにしている」、「(接続詞に関して)いい質問です。私は、極力接続詞を使わないようにしている。接続詞がなくても意味は通じる」と回答がありました。これに対して、高校生から「接続詞を全く使わないのは不自然ではないか」と再質問があり「不自然にならない程度に使ってください。なるべく使わないようにしています」と回答がありました。そのほかにもさまざまな質問があり、盛会のうちの講義終了となりました。

次回は、1月21日(土)16:00-18:00 弁護士としてもご活躍の石塚伸一教授(本学・法学部)を講師に迎え講義を予定しています。興味・関心のある方はどなたでも視聴可能です。ぜひHPよりよりお申し込みください。
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/

【補注】
*1 (関連情報)
>>第3回オンライン高校生模擬裁判選手権<出場校を募集!>【犯罪学研究センター後援】
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-11402.html 
同大会は、2023年1月29日(日)にZoomにて開催を予定。大会のねらいとして次の2点を掲げている。(1)法的思考力や刑事(裁判員)裁判の意義の理解にとどまらず、広く人間や社会までを視野に入れた「国語的」模擬裁判を通じて、人間や社会を考える眼差しを深める。(2)「国語的・文学模擬裁判」という新しい教育手法を通じて新学習指導要領の理念でもある主体的・対話的で深い学びを実現する機会とする。

*2 遠山大輔(とおやま・だいすけ) 氏プロフィール(所属事務所HPより引用)
熊本県八代市出身です。博多で1年間浪人をして、19歳の時、あこがれの京都にやって来ました。そのまま京都弁護士会のメンバーとなり、人生の半分以上を京都で過ごしました。刑事弁護をやりたくて弁護士になりました。これまで多くの刑事事件を担当し、経験を積みました。なかでも裁判員裁判についてはスタート前から研究会に参加し、熱心に取り組んできました。これからも、「何を」ではなく、「いかに」弁護するかを追求し続け、最高レベルの弁護活動を提供していきます。
また、経験を最大限に活かしつつ、次世代の刑事弁護人を育てていきます。刑事弁護研究会を主宰し、弁護士会の研修やロースクールで講師をしています。警察官対象の講話も定期的に引き受け、よりよい刑事手続の実現を目指しています。
なお、刑事事件の手持ち件数は、常時全体の2割程度ですので、誤解されませんように。

著書
共著「入門法廷戦略-戦略的法廷プレゼンテーションの理論と技術」 (2009年 現代人文社)
遠山大輔「刑法判例に登場する事実の形成過程と刑法的処理」 『熊本法学』137巻(2016年)85頁