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2023.02.10

2022年度「社会共生実習」活動報告会を開催しました【社会共生実習】

 社会学部の全3学科横断科目「社会共生実習」では、1月13日に全9プロジェクトの活動報告を対面とオンラインでおこないました。
 当日は、各実習の連携先の方や教育連携校である平安高校生、社会学部以外の学内者もご参加くださり、受講生たちの発表に熱心に耳を傾けてくださいました。

 以下、各プロジェクトの報告内容を簡単にご紹介いたします。

①    地域エンパワねっと・大津中央
 本プロジェクトでは、滋賀県大津市中央学区をフィールドとして、地域課題の発見、その解決に向けての企画提案・実施、成果の共有を目的として活動している。
今年度は受講生が以下の2チームに分かれて活動している。
<写真展チーム>
 私たちは、安孫子邦夫さん(滋賀県大津市中央学区自治連合会・顧問)から、中央学区での課題を聴き取った中で、地域と関わりを持たずに家に引きこもりがちな高齢者が増加している点に着目し、高齢者の方々が地域に足を運び交流できる場の提供を目標として活動することとした。
 具体的には、数台の使い捨てカメラをリレーすることで交流の輪を広げる「中央カメラリレー」を開催した。その他には写真に込められた思いを語り合う「お茶会」と、それら思い出の場所を展示した空間でそれぞれの写真に思いを馳せながら地域住民同士が交流できる「レトロ写真展」の開催を予定している。
 企画を実施するうえで、イベント参加者を集めることや、本来の目的である地域と関わりを持たずに家に引きこもりがちな高齢者に参加してもらうことに難しさを感じた。また、広報活動では、同地域の商店街や住宅街に何度も足を運び、地域の方々とコミュニケーションを図ることに注力した。
 今回の企画を通して、地域住民の皆さまが、自身の住んでいる地域の良さを再発見するとともに地域住民同士の新たなつながりが生まれることを期待したい。
<ランタンチーム>
 私たちは、下清水千香子さん(滋賀県大津市中央学区子ども育成連絡協議会・会長)にお話を伺い、子どもが安心して遊べる場所が少ないことや、新型コロナウィルス感染症の影響により子どもたち主体のイベントが開催されていないことを知った。そこで、子どもたち同士が交流できて心に残るようなイベントの 開催を目標に活動することとした。
 具体的には、イベントに参加する子どもたち自身が牛乳パックを再利用したランタンを作って新年度に向けた願い事を書き、大津市立中央小学校の体育館でライトアップする「願い事ランタン」の交流イベントを予定している。
 今後は、1月中に参加希望者アンケートを配布・回収、体育館の利用についての最終確認、2月中にイベントリハーサル、2月24日にイベント本番が控えている。
 このイベントを子どもたち同士だけではなく、付き添いで足を運んでくださった親御さんやその他地域の方々も交流いただける機会としたい。


発表の様子


ポスターセッションの様子

②    コミュニティの情報発信!レク龍プロジェクト
 本プロジェクトの連携先「滋賀県レクリエーション協会」では、運営会議や講習会への参加、SNSを活用した情報発信、広報誌の編集・発行作業、ホームページの管理・運営、イベントの企画・実施などを経験させていただいた。
 また、同協会の現状の広報活動の課題点を探り、解決に向けての企画・提案をおこなっている。
 イベントの企画・実施では、8月25日に滋賀県大津市真野浜水泳場にて「浮き輪でGO!」という、ひとりが浮き輪に乗って、もうひとりがその浮き輪を引っ張ってタイムを競うレースを開催した。たくさんの方に参加いただけた一方で、思うように進行できなかった反省点もあり、事前準備の重要性を身に染みて感じた。
 7月~12月に開催されたレクリエーションインストラクター養成講習会は、ユニカールから火起こしまで、さまざまなレクリエーションを学ぶ機会となった。
 SNSの情報発信について、Instagram、Twitter、Facebookを合わせて「フォロワー300人」を目指している。
 オリジナルTシャツも作成し、学外で活動する際はこれを着て一目で本プロジェクトの受講生であることがわかるようにしている。
 本プロジェクトは、私たちが主体となって活動することが多く大変なこともあるが、その分達成感を味わうことが出来、メンバー間の関係を深めることも出来ている。学外の方とも交流を深める場がたくさんあるため、知らないことを学ぶにも最適なプロジェクトである。


発表の様子


発表の様子

③    大学は社会共生に何ができるのか―文化財から“マネー”を創出する―
 文化財は現状を維持したまま後世に伝える「保存」と、広く社会に認知してもらう「活用」の2つのバランスを保つことで価値を持つ。しかし、「活用」は「保存」を妨げない範囲でしかおこなえない。そこで、本プロジェクトでは、専門家を招いての講話やフィールドワークを通して「保存」と「活用」を両立、且つそこからマネーを創出する新しい方法を考えることを目標としている。
 今年度は、下記の3チームに分かれて活動し、それぞれが最終的に「疏水船と大津」というテーマに取り組んだ。
 京都の水は琵琶湖疏水を利用して滋賀県から送られており、昔の物流船を模して観光船として運航している疏水船は「活用」といえる。しかし、琵琶湖疏水は現役の浄水施設であるため地域住民の要望からくるさまざまな制限があり、「活用」しきれていないのが現状である。このことから、観光は地域住民の協力なくしてあり得ない。これを私たちは一番の課題点として挙げている。

<近江の祭りチーム~大津祭~>
 大津祭と地域住民の関わりから発見した課題に参画することを目標として活動した。大津祭当日には、①宵宮演奏体験の実施、②アンケート調査、③曳き手参加をおこない、地域住民のお祭りへの関わり方を学んだ。
<観音ガールチーム~湖北の観音文化~>
 湖北の実態を知り、観音文化の「保存」と「活用」を発信することを目標として活動した。観音ガールこと對馬佳菜子さん(合同会社nagoriの代表社員/仏像・地域文化プロデューサー/観音の里コーディネーター/成安造形大学付属近江学研究所・客員研究員)のご協力のもとフィールドワークをおこない、11月6日には観音像の「保存」をおこなう世話方の方々に向けたトークイベントを開催した。今後は他の地域住民の方々とも交流をおこなう予定である。
<近江八幡チーム~八幡掘まつり~>
 会議や準備の段階から八幡堀まつりに参画することでより深く地域住民と祭りの関係やマネーの生み出し方を学ぶことを目標として活動した。具体的には、八幡堀まつりの会議体である近江八幡観光物産委員会に出席し、祭りでの私たちの役割を決め、八幡堀まつりで使う竹やぐらを設置、フォトコンテストの企画・写真の選定、祭り当日のオプショナルツアーである夜遊びツアーの企画・実施、受講生によるマルシェでの演奏、八幡堀まつりアンケートの実施をおこなった。

 その他にも本プロジェクト全体では、嵯峨美術大学との交流会もおこなった。
 嵯峨美術大学は美術大学ということもあり、文化財や観光に対してアカデミックな視点を持つ私たちとは違った視点を持っておられ、京都の人が京都のまちに誇りを持っていることが観光を活性化させるための重要な要素であると仮定し、そのことを参考に、大津市役所都市魅力づくり推進課と連携して小学生を対象に自身のまちを知るための「歴史まちなか探検クイズラリー」という、デザインとSNSと観光を絡めた活動をおこなっておられた。
 また、愛媛大学との交流会もおこなった。
 愛媛大学は、文化財を「活用」するために活動している私たちとは違い、文化財を新しく発掘するという視点から活動されており、更には文化の継承についても探究されていた。
 本プロジェクトの今後の課題について、今年度は「活用」について探究したがマネーを創出するまでには至らなかったため、来年度はどれだけ「保存」を妨げることなく観光等で収益を上げることが出来るかに注力したい。


発表の様子


ポスターセッションの様子

④    農福連携で地域をつなぐ―「地域で誰もがいきいきと暮らせる共生社会に向けて」
 農福連携とは、障がいを持つ方に農業への参加を通じて社会への参加を促進する取り組みであり、農業面では農業者の高齢化による人手不足が解消される利点、福祉面では障がいを持つ方の働く場所が増えるという利点がある。本プロジェクトでは、そうした地域の多様な人々がつながり合い、いきいきと暮らせる共生社会の実現に向けて活動している。
 受講1年目の学生は、連携先である“おもや”(特定非営利活動法人縁活)の農作業や地域イベントに参画し、受入れ先の状況把握や関係者との信頼構築を図った。また、農福連携事業の概要、課題把握と解決に向けた提言策定を図るとともに、社会調査のスキルアップにも挑戦した。
 受講2年目の学生は、1年目の学生の学習支援をしつつ、前年度までの経験をふまえて農福連携事業における課題解決に向けた活動の提案・実践をおこなった。
 実際の活動としては、“おもや”が自然栽培した農産物を定期的に販売している「くさつファーマーズマーケット」にて、使用済みの米袋をトートバックに変身させるワークショップを企画・実施した。また、滋賀県湖南市石部では、サツマイモの苗植え、黒豆の播種・収穫・選別をおこなった。この黒豆は焙煎して黒豆茶としてこの報告の後、参加者に振る舞う準備をしている。その他には、本報告会に向けた“おもや”スタッフの方への聴き取り調査もおこなった。
 農福連携事業を経験したことで、抱いていた堅苦しいイメージが改善され、障がいを持つ方とその支援者の事業への思いや難しく感じるところ、未来についての考えなどを知ることが出来た。また、この活動を通して、どんな人でも自分の得意なことや楽しいと思うことを通じて地域社会とつながれると感じることが出来た。


ポスターセッションの様子


黒豆茶の振る舞い

⑤    お寺の可能性を引き出そう!―社会におけるお寺の役割を考える―
 本プロジェクトでは、お寺の新しい可能性を地域や関係者の方々と作り出すことを目的としている。
 前期では、お寺の知識を得るために、西本願寺、一念寺、浄念寺、覚明寺、西方寺、西正寺の5つの寺院を訪ね、現状や地域での出来事、ご住職の想いなどを伺った。そこで得た情報や経験をもとに、後期では、それぞれが活動したい寺院に企画を提案・実施した。

<西方寺チーム>
 西方寺祭にて、子ども対象のスタンプラリーを企画・実施した。この企画を通して、私たち自身も子どもたちと触れ合うことが出来、新しいつながり(ご縁)を作ることが出来た。また、実際に西方寺祭に参加して、お寺が世代を超えた人たちの交流の場となっていること、人をつなぐ場所であることを実感することが出来、お寺でイベントを開催することで地域住民がお寺に足を運ぶきっかけとなり、お寺が居心地のよい場所になっていると感じた。
<一念寺チーム>
 私たちは、若者とお寺の接点を作ることを目標として、企画ターゲットを若者に設定した。また、大学生ならではの企画をおこないたいと考え、お寺を舞台とした本学社会学部のオープンキャンパスの開催を検討した。
 企画遂行のため、広報用のチラシ作成、説明資料用のスライド作成をおこない、本学との教育連携校へ連絡し、実際に訪問して広報した。しかし、締切までに参加応募者がなく、開催中止という結果に至った。
 その後、本企画の振り返りをおこなった。反省点としては開催時期や広報の方法、内容が問題だったのではないかという意見が出た。また、学んだ点としては、手続きや交渉の難しさ、企画の組み立て方という意見が出た。
<覚明寺・西方寺チーム>
 私たちは、覚明寺の「みんなの笑顔食堂」に参加した保護者の方々、西方寺の「大根焚き供養」に参加した檀家の方々を対象にアンケートを実施した。その結果、お寺が開催するイベントの参加者は地域に古くから住んでいる方や移住してきた方などさまざまな人がいること、イベントに参加する前の期待値が低いため、まずは一度参加してもらうことが重要であること、お寺におけるイベントや行事は継続性と地域住民との交流場面の充実が重要であることが見えてきた。

 全体を通して、お寺は地域の人たちの拠り所となっており、現代社会の中で問題となっている地域コミュニティの希薄化を解決する糸口となり得るのではないかと感じた。


発表の様子


ポスターセッションの様子

⑥    いくつになっても、出かけられる!~高齢者を元気にする介護ツアー企画~
 本プロジェクトでは、高齢者を理解するための講義や高齢者へのインタビューを通じて高齢者が抱える課題や日常生活での困りごとなどの生活への不安を把握し、安心と楽しさを提供できる介護ツアーを企画し、実施することを目的としている。
 高齢者へのインタビューでは、例えば「あまり歩きたくない(歩けない)」、「公共交通機関を利用することに不安がある」、「バリアフリーが必須」、「ツアーは段差や坂道が少ない場所が良い」、「ツアーでは天ぷらなど普段食べないものを食べたい」、などといった外出における課題やツアーへの要望を知ることができた。それらを踏まえたうえで、3つのツアーを企画し、それぞれプレゼンテーション、意見交換を経て、実施するツアーをひとつに絞った。
 実施することとなったのは「まったり知恩院ツアー~東山の魅力を感じよう~」と題して、移動手段に介護タクシーを利用することで歩く距離を短縮し、時間に余裕を持ってゆったり観光できることがこのツアーのポイントである。ツアー中に急な休憩を取る必要が出てきたなどの不測の事態に対応できるスケジュール感で予定が組まれている。
 ツアー実施は3月16日を予定しており、対象は実習受け入れ先である川口内科医院通所デイケアに通っておられる方としている。
 車椅子を利用している人を参加対象にしていないことと、観光客の人数を予想することが難しいためツアー当日の様子を検討しづらいことが、今後の検討課題である。
 今後は、川口内科医院通所デイケアにて参加者募集のためのプレゼンテーションをおこなう。その後、参加者との個別面談をおこない、どのような支援が必要か具体的にしていく、更に、新型コロナウィルス感染症対策、キャンセル者が出た場合の対応、途中で歩くことが難しくなった場合の車椅子の確保等、準備を進めていく。


発表の様子


発表の様子

⑦    多文化共生のコミュニティ・デザイン~定住外国人にとって住みやすい日本になるには?~
 前期には事前学習として、まず在日外国人の現状や歴史的背景、海外比較から見える課題を学んだ。次に京都府京都市東九条にある連携先のNPO法人東九条地域活性化センターが運営するコミュニティカフェ「ほっこり」、NPO法人京都コリアン生活センター・エルファ、希望の家や京都市地域・多文化交流ネットワークサロンを訪れ、東九条地域や各施設での活動について学ぶことになった。夏期休暇期間には、大阪市生野区の鶴橋フィールドワーク、神戸市中央区の北野フィールドワークもおこない、多文化共生の実践についての見識を広めた。
 後期には、それぞれの関心や問題意識で集まったチームで連携先ごとに課題を設定し、企画を提案・実施した。
<ほっこりチーム>
 “ほっこり”は、社会的マイノリティ同士の助け合い・支え合いの歴史的背景から、誰もが自分らしく共に暮らせる居場所を目指して多文化共生、地域福祉などの取り組みを通じて地域の活性化を図るために、南岩本町の市営住宅空き店舗を借り入れて、コミュニティカフェ事業をスタートされた。
 “ほっこり”では、「ほっこりライブコンサート」の運営やYouTubeチャンネル「ほっこりラジオ」の配信など、多岐にわたる活動が行われている。その中で、私たちは、外国籍の親を持つ子どもの家庭学習が困難であることや学童保育料の高騰をきっかけとして、子どもたちの放課後の居場所づくりの一環として始まった「子どもクラブ」の活動に取り組んだ。また、定住外国人親子の支援や定住外国人の仕事の支援、更には海外の食を提供することで多文化交流の体験ができる「土曜日ランチ」の活動に参加した。
 活動を通して、関西における代表的な社会的不利地域のひとつである東九条の歴史と現状を学ぶことができた。在日コリアン、被差別部落民、障がい者、高齢者など、さまざまな背景を持つ人々との出会いは、自分の固定観念から解放される機会となり、多様な生き方に触れることで知見を深めることが出来た。
<エルファチーム>
 “エルファ”は、在日コリアンをはじめとする、多文化に背景をもつさまざまな方々への支援をおこなっておられ、高齢者支援事業、障がい者支援事業、多文化共生事業、子育て支援事業など幅広い取り組みをなされている。その中で私たちは高齢者支援事業の一環であるデイサービスの活動に参加させていただいた。
 デイサービスは在日コリアンや朝鮮ルーツの方を中心に多くの方々が利用されており、バイリンガルな職員の方々が手話なども活用して利用者の方のニーズに対応されている。
 “エルファ”での私たちの主な活動は、利用者の方との対話である。対話を重ねていくうちに利用者の方との距離が縮まりたくさんのお話を聴くことが出来た。お話を聴くうちに、料理へのこだわりのある方が多いことに気付き、特に、日本で販売されているキムチは口に合わないというご意見が多数あった。その声を受けて、私たちは利用者の方から本場のキムチづくりを習って実際に作ってみる機会を設けることにした。
講師役を引き受けてくださった呉さんは、これまではあまりお話が好きではない印象だったが、キムチづくり教室を通してたくさんのお話をしてくださった。また、この企画自体を楽しみに待ち望んでおられたそうで、ここ最近の呉さんの生活に張り合いがもたらされていたことも知った。
 “エルファ”の職員の方からも、今回のキムチづくり教室のように、今後も利用者の方と学生のそれぞれの強みを発揮する場を設けていきたいとの感想をいただき、改めて今回の企画を実施することが出来てよかったと感じた。
 活動を通して、会話を重ねるごとに利用者の方々の好きなものや得意な事など個性豊かなお話を聴くことが出来た。この中で、在日コリアンや朝鮮ルーツの人々の暮らし、歴史的な背景、文化や生まれの違いから生じる困難などについても学ぶこととなった。
<希望の家チーム>
 “希望の家”では、児童館や日本語・コリア語の語学教室、「にこにこや」という施設内のカフェ、クリスマス会や誕生日会などの行事やバザーなどを運営・実施されている。また、買援隊(かいえんたい)という移動販売の取り組みにも加わっておられる。
 東九条の地域では、過疎化や高齢化が進んでおり、コンビニやスーパーが限られており、高齢者の方々が買い物をすることが難しい状況にある。そこで買援隊というサービスが誕生した。毎週木曜日の9:40-10:10にダイエーの移動販売車が“希望の家”の駐車場に来て食料品や日用品を販売している。
 私たちは、本プロジェクトの活動として、主に買援隊のお手伝いや、「にこにこや」での聴き取り調査などをおこなった。活動する中で、買援隊実行委員の方から、「安定して高齢者の方に来てもらいたい」、「高齢者だけではなく、子育て世帯の方にも来てもらいたい」、「買援隊を続けるためにも売り上げをあげたい」というお話を聴き、私たちは買援隊に携わっている方々と相談し、買援隊の認知度を向上させるため、のぼり旗を作成・設置することにした。のぼり旗贈呈の日には、買援隊に携わる皆さんに大変喜んでいただいた。
 現場の方々とのコミュニケーションを通して、その方々が抱えている歴史的な背景や何が問題になっているのかを知ることが出来た。また、資料を見るだけでは得られない情報を現場に訪れることで得ることが出来た。


発表の様子


発表の様子

⑧    障がいをもつ子どもたちの放課後支援
 本プロジェクトは、「どんな行動にも理由がある」というフリーオペラントの考えを通じて、障がいをもつ方との共生社会について考えるプログラムである。
 連携先である、「放課後等デイサービスゆにこ」では、障がいをもつ小学校1年生から高校3年生の発達・学習支援をおこない、放課後や夏休み、冬休みの居場所作りや、児童の成長を温かく見守る役割を担っている。
 現場実習の前には、“ゆにこ”の管理責任者から、障がいについて、支援について、職員間でのルールや一日の流れ、実習での過ごし方等、“ゆにこ”での活動や施設についてのオリエンテーションを受けた。
 また、“ゆにこ”利用児童の保護者の方からも講話をいただき、お子さんの障がいがわかったときの心情や、支援を受けることについての想い、周りの方との関わり、お子さんに対しての想いを教えていただいた。普段、子どもたちと関わるだけではわからない保護者の方の想い、子どもを育てることの大変さ、障がいを持つ子どもを育てているからこそわかる「生きていることの素晴らしさ」を学ぶことが出来る、大変よい機会であった。
 “ゆにこ”での一日の流れについて、平日の活動は、“ゆにこ”スタッフとの打ち合わせ、小学校へのお迎え、はじまりの会、二種類のおやつ選び、あそび時間、帰りの会、自宅までお見送り、掃除、スタッフ全員での振り返りという形で進む。土曜日の活動は、平日の流れに加えて、クッキングや工作など、長い時間をかけて出来るあそびなどを取り入れる。
 活動を通して、子どもたちひとりひとりの成長を考えながらひとつのコミュニティで活動していくことの難しさを学んだ。自分自身の観察力のなさ、社会的な視野が狭いことを実感した。また、障がいを持つ子どもたちが「皆同じ」ではなく「個性の塊」なのだということも知り、障がいを持つ人と関わることは自分自身の考え方が変わるきっかけにもなると感じた。
 現場での実習期間は約2カ月という短い期間だったが、子どもたちが目標を達成する瞬間や、新しく何かができるようになった場面に立ち会うことが出来、短期間でも利用児童の成長を感じることが出来た。また、声の掛け方ひとつで相手の気持ちを切り替えることが出来ることも体感した。
 当初は「大変そう」という気持ちもあったが、家族、学校、施設での連携が取れており、知識のあるスタッフがいる環境は子どもたちにとっても私たちにとっても信頼できる場所であった。個々で頑張るというよりは、スタッフ全員で気づいたことや案をシェアして子どもたちの成長や安心感を築き上げる空間であった。
 共生社会を創るにあたって、障がいに対する考え方や偏見が問題点として挙げられる。そのため、まずは障がいの有無で人を判断するのではなく、実際に関わってもらいたいと思った。偏見だけで関わらないという選択肢を選んでしまうのは勿体ないことであり、関わってみると「こんなこともできるのか!」と新たな気づきと出会うことが出来る。実際、今まで障がいを持つ子どもたちと関わったことがなかったため、当初はかなり緊張していたが、障がいを持つ子どもさんが同年代の子どもたちと“ゆにこ”スタッフに誕生日を祝ってもらってとても嬉しそうにしていたことや、話しかけるとニコッと微笑んでくれたことにとても衝撃を受けた。偏見に囚われて障がい者という枠組みで全てを考えるのではなく、その人の“個性”を見てもらいたいと思う。


発表の様子


発表の様子

⑨    自治体をPRしてみる!
 本プロジェクトの狙いは、映像を使って自治体をPRすることで、PRの本質を知り、撮影や編集などの映像制作スキルを身につけることである。
 受講1年目の学生は大阪府門真市、受講2年目の学生は滋賀県高島市が受け入れ先となり、PR活動をおこなった。高島市は日本の棚田百選に選ばれた棚田集落のある自治体で、昨年10月の全国棚田サミットの会場に選出されたことをきっかけに、PR動画を制作することとなった。
 PRするためには、「見たくなるものを作る」ことが最も重要で、「初めて知った!」、「なぜそのようなことになっているのか?」といった皆の興味を引くような動画を作ることを意識した。
 年間スケジュールは、4月にガイダンス・撮影研修、5月に編集研修、6月に門真市現場研修・取材ネタブレーンストーミング、7~10月に取材ネタ探し・撮影、10~1月に編集作業、1月に作品完成・門真市試写会という形で進められた。その中でも11月におこなわれたドローン体験講習会は印象に残った。

最も大変だったことについて…
私(2年目受講生/早藤涼花さん)は、実習と就活を並行して進めることが大変であった。
私(1年目受講生/春木大河さん)は、自治体をPRするためのネタ決め作業が大変であった。自治体職員の方々からの要望を得て動画を制作するのだが、本プロジェクトの担当教員に一から練った企画をプレゼンテーションするものの、ことごとく面白くないと却下されて3~4か月ネタが決まらなかった。
最も驚いたことについて…
私(2年目受講生/早藤涼花さん)は、取材対象者の方が意外とガードが固く、こんなことがしたいと提案しても、「私には無理です」と断られてしまうことが多かった。
私(1年目受講生/春木大河さん)は、最も時間のかかったことが編集作業であったということ。当初はすぐ作ることが出来ると思っていたが、撮影を含めると14~15時間程度かかった。
面白かったこと、今後役に立ちそうなことについて…
私(2年目受講生/早藤涼花さん)は、たくさんの方とお話出来たことが面白かった。家族以外の年上の方と話す機会があまりなかったため、祖母世代の方々とお話し、可愛がってくださったことが心に残った。
私(1年目受講生/春木大河さん)は、編集作業で効果音をつけて遊びをプラスしたり、公的な団体と関わることが出来ることも面白いポイントだと思う。当初は動画を制作して提出するだけだと考えていたが、本プロジェクトでは、まず初めに門真市の市長にご挨拶に伺った。なかなか経験できることではないため、これが一番面白い体験であった。
今後役立ちそうなことについては、企画するコンテンツがどうしたら面白いと思ってもらえるのか、それを熟考して学べる点だと思う。
作品制作の狙いと見てほしいポイントは…
私(2年目受講生/早藤涼花さん)が制作した動画は「龍大生貸します!」というタイトルである。終盤にドローンの映像が入っておりとてもきれいなので是非注目してほしい。
私(1年目受講生/春木大河さん)が制作した動画は「門真市あるあるアバター漫才!」というタイトルで、あらゆる人に分かりやすくウケを狙った内容となっているので気軽に見ていただきたい。一人二役に挑戦しているので、上手く演技出来ているかなどといった視点でも見ていただければと思う。

門真市は【門真市公式YouTubeチャンネル】に随時掲載予定であり、高島市は【高島市公式YouTubeチャンネル】に15作品が掲載されている。


発表の様子


制作動画公開の様子

 以上、各プロジェクトの報告内容をご紹介いたしました。2022年度「社会共生実習」活動報告会は【こちら】からご視聴いただけます。
 まだ活動途中のプロジェクトの今後の動向は、随時掲載いたしますのでお楽しみに。

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。