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2023.03.17

公開研究会「フットパス再論-歩き交わる地域観光の創造」レポート【里山学研究センター】

 里山学研究センターは、2023年2月20日(月)に公開研究会「フットパス再論-歩き交わる地域観光の創造」を開催しました。

【日時】2023年2月20日(月)13時00分~16時45分
【場所】龍谷大学深草キャンパス和顔館4階会議室3(対面)
【第1報告】「歩き交わる地域観光の創造-フットパスの展開を中心に」
       前川啓治 氏(筑波大学・名誉教授)
【第2報告】「フットパスとアクセス・ランド-イギリスにおけるカントリーサイドへのパブリック・アクセス制度の展開」
      鈴木龍也(龍谷大学法学部・教授 里山学研究センター・研究員)
【第3報告】「「歩くこと」と「コミュニティづくり」-英国のフットパスとWalkers are Welcome活動-」
      塩路有子 氏(阪南大学国際観光学部・教授)
【第4報告】「つむぐ絆で中山間地域を元気に-フットパスが創る観光交流空間-」
      久保由加里 氏(大阪国際大学国際教養学部・教授)
【第5報告】「日本におけるフットパスの広がり-新たな観光を担う人材育成-」
      廣川祐司 氏(北九州市立大学基盤教育センター・准教授)
【質疑応答】(司会 鈴木龍也(龍谷大学法学部・教授 里山学研究センター・研究員))


 本公開研究会を開催するにあたって、鈴木龍也(龍谷大学法学部・教授 里山学研究センター・研究員)が、(本研究センターとの関係も含む)これまでのフットパス研究の経緯を説明しました。
 本公開研究会の報告は、長年にわたってフットパス研究をしている5名の研究者によって行われました。

 第1報告の前川氏は、「歩き交わる地域観光の創造-フットパスの展開を中心に」を発表しました。ここでは、▼フットパスの根幹である「歩くこと」とは何か(理論面および実践面)▼「歩くこと」とフットパスによる観光地域づくり(日本の独自性としてガイドツアー的なことを恒常的にやっているなど)との関係性、▼ローカル・コモンズとしての里道(さとみち)の内容、▼コモンズ(生成的ユニバーサル・コモンズ)とフットパスとの関わり(「歩くこと」で生成されるコモンズ)などが説明されました。


前川啓治 名誉教授(筑波大学)

第2報告の鈴木氏は、「フットパスとアクセス・ランド-イギリスにおけるカントリーサイドへのパブリック・アクセス制度の展開」を発表しました。ここでは、イギリス(イングランド)におけるフットパスなどの権利通行道路を中心に、▼日英のフットパスの差異、▼フットパスとコモン・ローとの関係、▼一般公衆の通行権の内容、▼通行権道路の認定と訴訟、▼アクセス・ランド制度やオープン・カントリーの内容、▼パブリック・アクセスの法的論理などが取り上げられました。 


鈴木龍也 教授(里山学研究センター・研究員)

 第3報告の塩路氏は、「「歩くこと」と「コミュニティづくり」-英国のフットパスとWalkers are Welcome活動-」を発表しました。ここでは、イギリスにおけるパブリック・フットパスの実例、とりわけ、「歩く人を歓迎する活動(Walkers are Welcome : WaW)」を中心にその実態(▼WaWが開始された経緯やその目的、▼WaWと地域貢献(例えば、コミュニティの形成(地域内外との繋がりの形成)・活性化)、▼WaWタウンの社会構造(例えば、農家や地主との関係))などが紹介されました。


塩路有子 教授(阪南大学)

 第4報告の久保氏は、「つむぐ絆で中山間地域を元気に-フットパスが創る観光交流空間-」を発表されました。ここでは、日本の中山間地域にある鳥取県鹿野町での新しいコミュニティの地域づくりの取り組みを中心に、▼大学-行政-NPO法人-地元(地域住民)が繋がりを形成してきた方法、▼フットパスによる観光交流空間づくりの仕方、▼住民を巻き込む仕掛け作りの内容などを示されました。


久保由加里 教授(大阪国際大学)

 第5報告の廣川氏は、「日本におけるフットパスの広がり-新たな観光を担う人材育成-」を発表されました。ここでは、イギリス発祥のフットパスが日本の各地で増えていることとの関係で、▼なぜ、フットパスが日本で増えているのか、▼イギリスのフットパスの違いは何か、▼日本の若者がフットパスに関心を持つのはなぜかという観点を実例も交えて報告(例えば、▼日本におけるフットパスの現状、▼フットパスづくりの人材育成、▼フットパスの教育的効果といった内容の報告を)されました。


廣川祐司 准教授(北九州市立大学)

 質疑応答では、参加者から例えば、◆(前川氏が提唱した)「里道(さとみち)」が里道(りどう)との相違点として管理主体以外に何かあれば教えていただきたい(前川報告)、◆フットパスとアクセス・ランドとの区別は(双方に違いはあるにせよ、)何処までした方が良いのか、或いは(双方の)共通性に関心を持った方が良いのか(鈴木報告)、◆WaWは如何なる団体なのか(塩路報告)、◆住民主体といったときの「住民」とは何か、また、なぜ、「住民」が動くことができるのか(塩路報告)、◆(フットパスを作る際において、)アクセスを受け入れることで農家や土地所有者にメリットがあるような仕組みが制度としてあるのか、また、制度がない場合はどういったメリットがあるのか(塩路報告)、◆学生の活動の継続性、継承性をどのように考えたら良いのか(久保報告)、◆有名なフットパスの選択と集中が起きるのではないか(廣川報告)、◆フットパス部の詳細について(廣川報告)など、総論から各論に至るまで様々な質問が提示され、報告者と参加者との間で、白熱した議論が交わされました。


研究会の様子