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2023.04.24

最高裁判事團藤重光氏が遺したノートによる新事実 プロジェクト代表者らによる記者レクチャーを実施【矯正・保護総合センター/法学部】

東京大学法学部教授、最高裁判所判事、東宮職参与などの要職を歴任され、戦前期から今世紀にかけて、学界のみならず刑事立法、裁判実務に多大なる影響を与えた團藤重光博士の生前のご意思に基づいて、10万点を数える「團藤文庫」の全てが2012年に龍谷大学に寄贈され、現在は矯正・保護総合センター(以下「センター」)が所管しています。


センターでは、設立当初から「團藤文庫研究プロジェクト(以下「團藤プロジェクト」)」を立ち上げ、團藤文庫を用いて様々な調査研究活動をおこなっております。その一環としてNHKと共同研究を進める過程で、公害で初めて国の責任が問われた「大阪国際空港公害訴訟」の最高裁での審議に係る團藤氏によるノートが発見され、これに関する記者レクチャー及び撮影会が2023年4月19日(水)に深草キャンパス至心館1階・地下1階大会議室にて行われました。



「大阪国際空港公害訴訟」は1975年、二審大阪高裁で原告住民が勝訴し、夜間飛行の差し止めと損害賠償が認められましたが、1981年、最高裁は飛行差し止めを求めた住民の訴えを退ける判決を言い渡します。團藤氏のノートによって明らかになったのは、担当する第一小法廷は「飛行差し止め容認」の結論を固め、1978年5月に結審しましたが、同年7月に国は大法廷廻付を求める上申書を提出、その翌日に岡原昌男長官の部屋へ相談に行った岸上康夫裁判長に対し、法務省側の意を受けた村上朝一元長官から大法廷廻付を要望する電話があった、ということです。團藤氏がノートに「この種の介入は怪しからぬことだ」などと憤りを込めた強い言葉で記していることもあり、同訴訟のターニングポイントとなる事実として確度は高いと推認されます。

 

上記内容について福島至センター研究フェロー(本学名誉教授)は、元長官とは言え、司法の枠組みをこえたところからの圧力と見るべきで、三権分立の大原則に対する重大な脅威であると指摘しました。



当日は、新聞社やテレビ局など数多くのメディアが取材に訪れ、福島研究フェロー、團藤プロジェクト代表の畠山亮教授(本学法学部、センター兼任研究員)、太田宗志センターリサーチ・アシスタントと質疑応答をおこなった後、ノートの撮影をしていただき、広く報道していただきました。

 

5月22日(月)から6月4日(日)には、本学深草キャンパス至心館2階パドマを会場として、「生誕110周年記念特別展 團藤重光の世界-法学者・最高裁判事・宮内庁参与」を開催致します。

 

センターとしては、学内者だけでなく一般の方々にも広く公開することで「残した資料を広く社会の人々に利用してもらいたい」という團藤氏の意思を実現していきたいと思います。