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2023.05.13

環境DNAから植物上にいる多種多様な虫を検出する方法を開発【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】

先端理工学部・三木健教授らの研究グループが、植物上に残された多種多様な虫たちのDNAを植物から一気に収集する方法を開発

本学先端理工学部 環境生態工学課程・三木健教授、近畿大学農学部 農業生産科学科・米谷衣代講師、京都大学白眉センター特定准教授(論文執筆当時、現:香港科技大学教授)潮雅之氏による研究グループは、虫のフンやだ液などに含まれるDNA(環境DNA)を用いて、植物上にいる多種多様な虫を検出する方法を開発しました。本研究成果は、自然科学分野の学術誌“Scientific Reports”に発表しました。【>>プレスリリース】

【発表論文】※ 2023年5月12日(金)Web掲載
掲載誌:Scientific Reports
論文名:Non-destructive collection and metabarcoding of arthropod environmental DNA remained on a terrestrial plant
(陸生植物に残存する節足動物環境DNAの非破壊的収集とメタバーコーディング)

著 者:米谷衣代1、2、潮雅之3、4、5、三木健2、6
所 属:1 近畿大学農学部、2 龍谷大学生物多様性科学研究センター、3 京都大学白眉センター、4 京都大学生態学研究センター、5 香港科技大学海洋学科、6 龍谷大学先端理工学部環境生態工学課程
論文掲載:https://doi.org/10.1038/s41598-023-32862-4
DOI:10.1038/s41598-023-32862-4

「環境DNA分析」とは、生物を直接サンプリングせずに、水や土などの環境媒体に含まれているDNAの情報(生き物が糞や粘液として放出したもの)を基に、そこに生息する種の分布や多様性、量を推定する分析手法です。三木教授が副センター長を務める本学・生物多様性科学研究センターでは、これまで河川・池・海などの生態調査を、生物を捕獲せずに「水から」行い、数々の研究成果を挙げてきました。

今回の研究では、陸上の植物を傷つけることなく、環境DNAを収集する方法を開発するにあたり、虫たちが植物上で食事や排泄をする際に排出されるDNAに注目。人工的にかけた水や雨が植物の表面を洗いながら葉や茎を伝って地面に落ちてくるのを集め、そこから環境DNAを取り出すことで、植物上にどのような虫がいたかを明らかにしました。



研究チームは、この新たに開発した検出方法(特許取得)を動画で公開しています。
https://sites.google.com/view/ecology-method-portal/experiments/eDNA-on-plant

植物を傷つけることなく、植物上に残留した環境DNAを収集するという画期的な手法を開発した本研究成果は、今後、生物多様性の調査や害虫管理への応用が期待されます。

以下、今回の研究の着眼点や今後の展望について、三木教授のコメントを紹介します。


三木健教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程・生物多様性科学研究センター)

三木健教授(本学先端理工学部 環境生態工学課程・生物多様性科学研究センター)

「今回の論文では農作物上の環境DNAを対象としていますが、すでに今回発表した方法と同様の視点から、樹木上の環境DNAへの応用が進みだしています(上の動画サイトですでに公開しています)。この技術を現在普及しつつある『水から』の環境DNA検出技術と組み合わせることで、河川・池・海だけでなく、農地や山林までカバーするような、より網羅的な生物多様性評価手法に成長する可能性も見えてきました。」