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2023.06.30

実習フィールドの滋賀県大津市中央学区を知る【社会共生実習】

 社会学部の「社会共生実習(地域エンパワねっと・大津中央)」(担当教員:社会学科 教授 脇田健一)では、大津市中央学区とのコラボを通じて地域活性化を実地に学びます。

 6/23(金)には、安孫子邦夫さん(大津市中央学区自治連合会・顧問)から大津市中央地区の現状や課題を教えていただきました。教えていただいた内容について、以下のとおり少しご紹介いたします。


安孫子邦夫さん

「自治会」という言葉について…
 中央学区においては、組織を示すものというよりは地名であると捉えるほうがわかりやすいと思います。戦前に呼ばれていた「町(ちょう)」の地名がそのまま現代にも「自治会」という形で残っています。自治会名で、「上(かみ)」「中(なか)」「下(しも)」とありますが、京都までの近さを表しています。中央学区で活動する中で、そうした構造を知っておくと便利です。

自治会の数について…
 中央学区内には52の自治会があります。加入世帯数でいうと約2,000世帯です。その中で、江戸時代からほぼそのままの区割りで残っているところが37、その他はマンションにお住まいの転入者世帯です。それらが合わさって中央学区自治連合会を組織しています。

地域団体について…
 中央学区の地域団体は課題別・機能別に17あります。代表的な団体としては、赤ちゃんから高齢者までの地域福祉を振興する「社会福祉協議会」、運動会の開催などスポーツを通じてまちづくりやコミュニケーションを深める「体育振興会」、自助・共助をバックアップするための組織である「自主防災会」、特に高齢者への特殊詐欺や児童に対して安心・安全のまちづくりに力点をおいている「自主防犯推進協議会」、子ども対象のイベントなどを開催して子ども同士や子どもと地域のつながりを深める活動をおこなっている「子ども会育成連絡協議会(キッズクラブ)」などがあります。
 これらの団体の運営はすべてボランティアでまかなわれており、夜に会議をおこなったり、リタイアした高齢者の方がいくつも役を兼任したりと、皆さん地域のために自主的に活動に取り組んでくださっています。

人口の特色について…
 日本全国でみると、少子高齢化が問題となっている昨今ですが、中央学区はこれに当てはまりません。大津市のHPによると、この10年間で中央学区の子どもは40%、人口は20%以上増えています。マンションの転入者のほとんどは若い夫婦と幼い子どもという組み合わせで、高齢者数は増えてはいるものの人口増に伴ったもので高齢化といえるものではありません。これらから、中央学区の特色としては「多子多高齢者」といえます。
 また、現在建設中・計画中のマンションが3~4棟ほどあるので、向こう5年ほどは人口増加傾向にあるといわれています。

旧住民の任務について…
 新しいマンションが建つと、マンション単位で自治会を作ってもらえるように働きかけに行くのですが、「自治会ってなんですか?安孫子さんがおっしゃったような自治会というものを今まで見たことがありません」と言われることがあります。
 自治会とは、どのような組織でどのような機能があってどんなメリットがあるのかという質問をされたときに、自治会はあくまでも任意の組織なので、自発的に作ってもらえるように導くためには、自治会とは何かということを改めて旧住民である我々が再定義することが任務であると考えています。

子どもが地域で遊ばないことについて…
 人口統計では子どもは増えているはずですが、町で子どもをみかけないという問題があります。推測するに、子どもも習い事や塾と、忙しくしているのではないかと思います。そうすると、前述のキッズクラブの活動も危うくなってきます。昔は下校時間から帰宅時間までの間が遊びの時間だったのですが、現代の子どもたちのその時間は習い事や塾、中学校になると部活にとられてしまってその時間に地域に帰ってこないのです。
 地域・学校・家庭の三位一体で子どもを健全育成しようという理想を掲げながらもそういう姿にほど遠い現状があります。

高齢者の引きこもりについて…
 今から50年ほど前は、家の前に出て将棋を出して夕涼みしながら近所の人とおしゃべりしている風景がありました。現代ではそうした光景は見られず、ドアに鍵がかかっていて中で生きているのか死んでいるのかもわかりません。実際、私が住んでいる界隈でも孤独死された方がおられます。
 孤独死される方は、普段から近所づきあいをされていません。そういった事態を防ぐためにも、「テレビを消して町へ出よう」と呼び掛けています。

新住民の地域イベント運営への参加について…
 子育て世代が増えている一方で、キッズクラブの活動などといった子ども対象のイベント運営への参加率は低迷しています。また、自治会に入っている世帯から徴収した年会費の中から一定の額を子ども対象のイベント運営費に充てていますが、自治会に加入せずとも同じプログラムに参加することができるようになっているため、未加入のまま且つ運営側の手伝いもしてくれない方が多いことも課題だと捉えています。
 自分の子どもが地域イベントで楽しんでいる姿を見て、自分たちも何か手伝わせてほしいと言ってもらいたいところが本音です。


メモをとる受講生


メモをとる受講生

 引き続き、質疑応答の時間が設けられました。その内容も少しご紹介します。

(受講生)日曜日に中央学区のまち歩きをしたときに、高齢者の方は多少おられたものの、子どもの数がとにかく少なかったです。もっと子どもたちや高齢者の方々に地域に出てもらうにはどうすればよいか考え、子どもと高齢者との世代間交流の場を作りたいと思いました。そのために、子どもたちと高齢者それぞれにお話を伺いたいと思っているのですが、子どもたちはキッズクラブに相談するとして、高齢者はどこに問い合わせればよいでしょうか。
(安孫子さん)中央学区には「老人クラブ」はないのですが、地域組織のほとんどが「老人クラブ」といっても過言ではなく、70歳で若手と呼ばれるような組織ばかりです。どの組織でも、入り込んで話を聴いてもらえば参考になると思います。
 また、世代間交流といえる活動として、ユニライフ大津中央というマンションでは、年に1回、「ふるさと再発見」というイベントをされています。近所の老舗を訪ねて店主からお話を聴いたり、三井寺を訪れて長吏(ちょうり)のお話を聴いたりと、マンション側から中央学区およびその周辺にアプローチしてくれている動きもあります。
 この活動の発端は本プロジェクトの過去の受講生たちが考案してくれた老舗をまわるツアーでした。これは結果的に新旧住民の交流にもつながっています。

(受講生)私は子どもが外に出ないことと高齢者の引きこもりが問題だと思いますが、安孫子さんが一番問題だと思っていることは何ですか?
(安孫子さん)私も同感です。子どもは放っておけば外に出るものです。通わせ、習わせ、勉強させて、家庭を中心に閉じ込めているように思えてなりません。
高齢者の問題は、普段活発に活動していない人、フレイル(年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、健康と要介護の間の衰弱な状態)になっている人に来てもらうにはどうすればよいか、永遠の課題です。ぜひ、いいアイデアを一緒に考えていただきたいと思います。

 最後に、安孫子さんから次のような激励のお言葉をいただきました。
 「皆さんから、難しい課題に敢えて挑戦する心構えであることが伺えて大変うれしく思います。実際、各地域課題は深刻な状況にあると思うので、ぜひ一緒に活動させてください。」


質疑応答の様子


質疑応答の様子

 受講生たちは自身の関心・興味に沿って、活動テーマごとにチームを形成しています。その中で、子どもに関する課題に取り組むチームはさっそく6/25にキッズクラブへお邪魔していろいろと相談させていただきました。

 本プロジェクトのOB・OGも過去に果敢に挑んできた諸問題について、今年の受講生たちはどのようなアプローチをするのか、今後の活動に注目したいと思います。

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。