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2023.07.04

保護者のお話から障がいを個性として捉えることを学ぶ【社会共生実習】

 社会学部の「社会共生実習(障がいをもつ子どもたちの放課後支援)」(担当教員:現代福祉学科 教授 土田美世子)では、現場実習を通じて、障がい児支援や共生社会のありかたについて学んでいます。

 6/30(金)には、実習受け入れ先である“放課後等デイサービスゆにこ“に通っている子どもさんの保護者である園田正義さん・園田雅美さんご夫妻にご講話いただきました。お話いただいた内容を少し、ご紹介いたします。


園田ご夫妻

(雅美さん)保護者から見た“ゆにこ”の役割についてですが、“ゆにこ”では学校や家庭では十分に教えられないことを丁寧に指導・養育していただいており、例えばトイレでのトイレットペーパーの量の使い方や処理の仕方などといった細かな行動についても指導してくださいます。
 些細なことでも次男(“ゆにこ”に通う園田ご夫妻のお子さん)の想いを丁寧に時間をかけて汲み取ってくださり、お友達やスタッフの方との関係を築いて積み上げてもらっています。
 私たちに対しても、次男への伝え方や関わり方を都度ご指導いただいています。また、年2回の懇談もあり、状況に応じた支援計画を立ててくださいます。次男の今の状況をわかりやすく説明・報告してくださるので養育の参考にしています。
 その他、家庭での困りごとや相談にも親切に対応いただいており、心強く思っています。次男のことをよく理解していただいているので安心して預けることができる場所です。
 
(雅美さん)次男から見た“ゆにこ”についてですが、月・木の週2回通所しており、お友達やスタッフの方に会うことができることをとても楽しみにしています。自宅とは別にホッと安心できる第2の居場所となっているように思います。
 “ゆにこ”では、お友達やスタッフの方といろいろな体験ができることが楽しいようです。長期休暇には課外活動が充実しており、お買い物学習や施設見学、電車の乗り方や切符の買い方、クッキングなど、さまざまな体験ができることを本当に楽しみにしています。
 何よりも、「出来た」という体験・達成感が本人にとって一番うれしいことではないかと思っています。


園田雅美さん


園田正義さん

(正義さん)次男についてですが、何でもやりたがる積極的な性格で、昔は親として、障がい者だからとブレーキをかけてしまっていた場面がありました。今考えると、それは次男の発達を妨げる行為だったのではないかと思います。
 和太鼓の習い事をはじめたのですが、障害をもつ他の生徒さんも含めて、「意外と出来るんだ!」という感想を持ちました。また、クッキングの体験学習の際も、お鍋を洗ったり、野菜を切ったり、お皿を配ったり、怪我した子がいれば大丈夫?と声をかけたり‥「なんだ、普通の子じゃないか」、「“障がい者”ではなく、ひとりの人間として少し個性のある子なのだ」と思い至り、その後、次男がやりたいということは、カラオケ、ダンス、ヒノキの皮むき体験と、なんでも挑戦させました。
 やってみたいという気持ちを100%受け入れて、出来なかった時にはどうすれば出来るか一緒に考えて、出来る限りやる気をそがないように対応しようと考えるようになりました。そのように考えるようになってから、次男とのコミュニケーションも活発になり、次男もやりたいことがどんどん増えてきたように思います。
 今は、親として少し手を差し伸べて、軌道に乗ったら離れるという距離感で、いろんなことにチャレンジさせまくっています。そうすることで次男は生き生きしますし常に笑顔です。この調子で成長してうまく社会とも交わることが出来ればひとりの人間として自立した人生が送れるのではないかと思っています。

 続いて、質疑応答の時間も設けられました。その様子も少し紹介いたします。

(学生)息子さんがチャレンジして失敗してしまったときの声掛けや立ち直らせるためのアドバイスではどのようなことに気をつけておられますか。
(正義さん)絶対言わないようにしている言葉は「ほらみろ」です。怒ったり突き放すのではなく、どこが悪かったのか、悩んだことは何だったのか、本人の意見を聴き、それらを肯定しつつ、私からもアドバイスや意見をひとつ伝える。そのくらいの会話の割合で伝えると、私からのアドバイスもすんなり取り入れて再チャレンジしてくれます。また、成功したら大げさに褒めることにしています。
(雅美さん)以前、夜遅くまで起きていて、翌朝、いくら声を掛けても起きなかったので一日学校を休ませたことがありました。その失敗を経験した後、次に同じ状況になったときに眠たいながらも頑張って起きて学校に行くことが出来ました。そこから、私自身、次につながる失敗というものもあるのだと学びました。失敗を想像することは難しいようですが、体験・経験を重ねることで物事を理解してくれることがわかりました。


質疑応答の様子


質疑応答の様子

(学生)“ゆにこ”では、大切なお子さんを預かるということで、常に目を離さないように、死角を作らないようにといった見守りを徹底されていますが、ご自宅ではどのように見守りされていますか?
(雅美さん)小さい頃は外に出たがる子どもだったので、見張る必要もあったのですが、成長するとともに危ないことややってはいけないことがわかってきて、ずっと見張るということは無くなりました。今では少しの時間であればお留守番もしてくれます。


質疑応答の様子


質疑応答の様子

(学生)私自身、この実習で“ゆにこ”に行くまでは障がいをもつ子どもさんと関わったことがなく、どんな様子なのかと緊張していましたが、いざ関わらせてもらうと、本当に可愛い子どもさんたちで、今まで「障がい」というフィルターをかけて見てしまっていたのだと思いました。園田さんが仰るとおり、ひとりの人として、個性のある子として、それぞれ出来ることもたくさんあって、周りの環境でその子が変わることもあるのだということを改めて教わりました。ありがとうございました。
(雅美さん)私も次男が生まれるまで障がい者の方と関わったことがなく、ダウン症という言葉も知りませんでした。次男を出産したときに先生から説明されて、勝手な想像から、夫や義母に言えないとずっと泣いていました。精密検査が行われてダウン症だと判定が出たときに「背が高いとか低いとか、太っているとか細いとか、そういう人と同じ感覚で個性として見て育ててくださいね」と先生に言われて、「あぁ、それでいいのか」と、そこで少し気持ちが落ち着いたことを覚えています。育てていくうちにいろんな人と関わることが出来て、成長とともに今改めて「個性なんだ」と感じることが出来ています。今もこうして学生の皆さんに関わらせていただいていることも素敵なことだなと感謝しています。
(正義さん)“ゆにこ”のサマースクールでバーベキュー大会があり、学生さんが支援で来てくれており、次男は若い子のパワーをもらってとても楽しそうでした。社会の仕組み上、次男は皆さんと同じような大学の場には入れませんが、学生の皆さんと次男が交わる機会があれば出来得る限り体験させてあげたいと思っています。そうすることで学生さんたちにはダウン症に対する発見や気づきを得ていただけるし、次男は社会とのコミュニケーション能力が向上するとともに、普段話せないお兄さんやお姉さんとたくさん話せて楽しかった、またこんなことをしたいといった想像力を膨らませて次のステップに進めるといったお互い良い関係性が築けるように思うからです。


質疑応答の様子


質疑応答の様子

 最後に、担当教員から「学生に望むことは?」という問いがあり、次のようにお答えくださいました。

(雅美さん)こうやって興味を持って、知ってもらえているだけで嬉しいです。私は、次男が障がいをもって生まれてこなかったら多分今も関わっていなかったと思います。次男が障がいをもっていることで苦労やしんどい思いもしてきましたが、それと同じくらい幸せをもらい、たくさんの人と出会うことが出来て、今は関わることが出来て良かったと思っています。
(正義さん)皆さん気づきをもってこのプロジェクトに参加されており、今日の皆さんからの質問や感想からも真剣に考えておられることが伺い知れたので、その気持ちを絶やさずに進んでいただければ十分だと思います。人の話を聴いて知識を得ることも良いと思うし、自ら障がい者の関わる会に参加して体感されることも良いと思うし、いろいろな方法で自分の持っている想いのまま、行動を起こされて良いと思います。またどこかでご縁があれば、その時はよろしくお願いします。

 受講生たちは今後、まとめの作業に入っていきます。本学のオープンキャンパスでは、実習で得た学びや発見を発表する機会も予定されているので、どのような発表がなされるのか、楽しみにしたいと思います。

社会学部「社会共生実習」について、詳しくはこちらの【専用ページ】をご覧ください。