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2023.07.13

井出 廉子氏(元中曽根康弘元首相秘書)による講演会を開催【法学部】

 本学法学部では、7月7日に「マスコミ論Ⅰ」受講生らを対象に、中曽根康弘元首相の秘書を務めた井出廉子さんを招いて講演会を開いた。井出さんは、数々の政局の舞台となった砂防会館の事務所に勤務し、1982~87年の首相在任中を含め、2019年に101歳で逝去するまで、中曽根氏を支え続けた経験を回顧。スナップ写真も交えて身近に接した中曽根氏の横顔、晩年まで外交に傾注した政治姿勢など、戦後政治史の逸話の数々を披露し、受講生に「政治に関心を持つことが大切」と訴えた。
 「マスコミ論Ⅰ」では、事前の4回の授業で内田孝・非常勤講師が、中曽根氏の首相就任時や逝去を伝える新聞各紙を紹介。メディアによる政治報道の実際を学んで中曽根氏についてのレポートを提出し、井出さんにもチェックを依頼した。
 
 井出さんは、メディアや研究者からの取材要請に対して的確に対応して中曽根氏と取材者双方からの信頼が厚く、服部龍二『中曽根康弘』(中公新書)、国鉄改革をたどった牧久『昭和解体』(講談社)など、中曽根氏に直接取材した主な単行本の後書きには、必ず献辞が登場することで知られる。この日は、政界風見鶏と評された中曽根氏について、具体例を挙げて、「政治家として野党の立場から出発した政治家。まず相手の話を聞き、協力できる点を探すのが特徴。本を大量に読み、相手に届く言葉を探していた。一方、人を信じすぎ、脇の甘いところもあった」と、身内の立場から政治家としての本質を提示した。

 続いて、コメンテーターの中島琢磨・九州大学准教授が登場。外交史が専門で、2019年度まで本学法学部で教鞭を取った。中島准教授は、自身らの研究者グループで聞き取り調査した『中曽根康弘が語る戦後日本外交』(新潮社)も踏まえ、2つの事例に言及した。首相退任後の1988年、旧ソ連を訪問してゴルバチョフ書記長と北方領土返還などを巡って激しくやりとりした会談、1990年に日本人の人質解放を求めてのイラク・フセイン大統領との交渉だ。井出さんに当時の中曽根氏の状況を確認した中島准教授は、「国際的球拾い」と自称し、実を取るために自ら相手国に乗り込んだ外交術の原則を「対立する相手とも交渉して打開策を探るのが政治」と読み解いた。
 受講生からは、中曽根氏の素顔や勉強法、人物評価の判断基準や関西学研都市との関わりなど、さまざまな質問が寄せられた。これに対し、井出さんは週末などに集中して勉強する姿や「ボスは、カントら哲学書を好み、首相を退いてから真剣に留学を検討していた」などの秘話をユーモアも交えて語った。