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2023.07.25

国内外来種の純淡水魚・オヤニラミを、滋賀県宇曽川水系と三重県で相次ぎ初確認【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】

理工学研究科の院生と研究員らが標本に基づいて記録した初の報告を、論文として発表

龍谷大学生物多様性科学研究センターの伊藤 玄客員研究員(先端理工学部 環境生態工学課程・リサーチアシスタント)と、大学院理工学研究科 環境ソリューション工学専攻(研究当時)の太下 蓮さん、藤田 宗也さんは、滋賀県宇曽川水系と三重県北部の河川で採集した魚類の形態的特徴を観察したところ、国内外来種の純淡水魚・オヤニラミと特定しました。両水域(三重県では県下全域)でオヤニラミが確認されたのは、今回が初です

本研究成果は、全国的な平野部の湿地環境について広く掲載し、かつ、外来種問題について取り上げることも多い「伊豆沼・内沼研究報告」2023年17巻に投稿・掲載されました。詳細は、以下のPress Releaseをご覧ください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-13106.html

【発表論文について】
論文①(和文)
標 題:滋賀県宇曽川水系における国内外来種オヤニラミ(スズキ目ケツギョ科)の初確認
著者名:太下 蓮 1・藤田 宗也 1・伊藤 玄 2
所 属:1龍谷大学大学院理工学研究科 環境ソリューション工学専攻, 2龍谷大学 生物多様性科学研究センター
調査水域:滋賀県宇曽川水系(幹線流路延長22km流域面積69.9 km2の一級河川)
調査時期:2021年2月21日〜10月15日(計7日間)
採集・確認数:計39個体 ※本研究で作成した標本の一部については、滋賀県立琵琶湖博物館に次の番号で登録・保管されている (LBM1210058663, 1210058664,1210059578–1210059589)。

論文②(和文)
標 題:三重県における国内外来種オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)の初記録
著者名:太下 蓮 1・伊藤 玄 2
所 属:1龍谷大学大学院理工学研究科 環境ソリューション工学専攻, 2龍谷大学 生物多様性科学研究センター
調査水域:三重県北部の河川および同河川に流入する水路
調査時期:2022年10月8日、10月31日〜11月2日(計4日間)
採集・確認数:計17個体

雑誌名:「伊豆沼・内沼研究報告」2023年17巻(論文①p.39- p.46/論文②p.29-p.37)
U R L:論文① https://doi.org/10.20745/izu.17.0_39
    論文② https://doi.org/10.20745/izu.17.0_29
※2023年7月11日(火)Web掲載/所属は調査・執筆時点


オヤニラミ写真:龍谷大学 伊藤玄客員研究員提供

オヤニラミ写真:龍谷大学 伊藤玄客員研究員提供

【オヤニラミについて】
オヤニラミは、スズキ目ケツギョ科に属する純淡水魚で、学名は「Coreoperca kawamebari」。国内の自然分布域の多くでは絶滅危惧種となっている一方で、近年は意図的と思われる放流等により、国内外来種として日本各地で分布を拡大する純淡水魚です。動物食性や“なわばり”性などの特徴から在来生態系に悪影響を及ぼすと考えられ、対策が必要な魚類です。

2023年7月25日に行われた報道記者向けのオンライン・レクチャーでは、伊藤研究員が今回のオヤニラミの2地域での初記録に関して、生物多様性の危機の一つとして外来種による脅威、とりわけ国内の他の地域から移入された国内外来種であるオヤニラミによる在来生態系への悪影響について、先行研究や各地での記録状況を参照しながら解説しました。

伊藤研究員は、今回の2地域での初確認の背景として、「オヤニラミは希少性が高く、淡水魚には珍しい特殊な見た目から観賞魚としても人気がある。ネットオークションでの取引件数・取引額が上位であることなどから、意図的な放流により分布域が拡大した可能性がある」と述べ、安易な放流に強く警鐘を鳴らしました。


伊藤研究員によるレクチャー資料より抜粋(宇曽川のオヤニラミ)

伊藤研究員によるレクチャー資料より抜粋(宇曽川のオヤニラミ)


伊藤研究員によるオンライン・レクチャーの様子

伊藤研究員によるオンライン・レクチャーの様子

同レクチャーに出席した主著者の太下さんは、今回の2水域での調査でオヤニラミを初確認・採集しました。太下さんは当時をふりかえり、「オヤニラミとの出会いは思いもかけないことで驚いた。自身が好きな生物の一つでもあるので、密放流によって分布域が拡散しているのは遺憾にたえない。また、今回の調査研究を通して標本として記録を残す重要性を強く感じた」と述べました。


滋賀県東部を流れる宇曽川で2021年2月にオヤニラミを初採集

滋賀県東部を流れる宇曽川で2021年2月にオヤニラミを初採集


主著者の太下蓮さんによるコメントの様子

主著者の太下蓮さんによるコメントの様子

また、共著者の藤田宗也さんは同レクチャーへの出席は叶いませんでしたが、「今回の研究を通じて外来魚の拡散を抑える一助となることを期待したい」とコメントを寄せました。


今回の理工学研究科の院生と研究員らが標本に基づいて記録した初の報告は、「安易な放流は厳に慎まなければならい」という認識を高める上で、重要な論文です。